新NISA開始後に株式・投信残高が73パーセント増えたのはなぜか 投資額と値上がりを混同してはいけない理由編

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新NISAが始まってから、日本の家計が保有する株式と投資信託の残高が大きく増えています。

2026年6月末の株式と投資信託の残高は678兆9608億円でした。

新NISA導入前の2023年12月末と比べると、73パーセント増えています。

これだけを見ると、新NISAによって家計が大量のお金を株式や投資信託へ投入した結果、残高が73パーセント増えたように感じるかもしれません。

しかし、そう単純ではありません。

金融資産の残高には、新しく投資したお金だけでなく、株価上昇や円安による評価額の増加も含まれているからです。

新NISAの効果を見るときには、投資額と値上がりを分けて考える必要があります。

新NISAは2024年に始まった

新NISAは2024年1月に始まりました。

制度が恒久化され、非課税保有期間も無期限になったことで、長期的な資産形成に利用しやすくなりました。

つみたて投資枠と成長投資枠を合わせて、年間最大360万円まで投資できます。

生涯に利用できる非課税保有限度額は1800万円です。

この制度によって、これまで投資をしていなかった人が投資信託の積み立てを始めたり、従来から投資していた人がNISAを利用して投資額を増やしたりする動きが広がりました。

家計から株式や投資信託へ資金が流れる重要な仕組みになっています。

73パーセント増は投資額ではない

ここで最も重要なのが、73パーセントという数字の意味です。

これは家計が新NISA開始後に投資した金額が73パーセント増えたという意味ではありません。

株式と投資信託の残高が73パーセント増えたということです。

例えば100万円の投資信託を持っていた人がいるとします。

新しく50万円を投資し、その後の値上がりによって200万円になったとします。

残高は100万円から200万円へ100パーセント増えています。

しかし新しく投資した金額は50万円です。

残りの増加には値上がりが含まれています。

金融資産の残高と投資した金額は同じではありません。

株高が残高を大きく押し上げた

2023年末から2026年6月末までの間には、株式市場が大きく上昇しました。

2026年6月下旬には日経平均株価が7万円を突破しています。

すでに株式を保有していた家計は、新しく株式を購入しなくても株高によって資産価値が増えます。

投資信託についても同様です。

国内株式や海外株式を組み入れた投資信託では、保有している株式の価格が上昇すると基準価額も上昇します。

この値上がりが、株式と投資信託の残高を大きく押し上げています。

円安による増加も含まれている

海外資産では為替も重要です。

例えば1万ドルの海外資産を持っているとします。

1ドル140円なら円換算額は140万円です。

1ドル160円なら160万円です。

海外資産そのものが値上がりしていなくても、円安になれば円換算した資産残高は増えます。

新NISAでは海外株式や世界株式へ投資する投資信託も利用されています。

そのため、家計が保有する投資信託の残高を見る場合には、海外株価だけでなく為替変動による影響も含まれていることに注意する必要があります。

新NISAによる実際の資金流入もある

だからといって、新NISAによる投資シフトが見かけだけというわけではありません。

実際のお金も株式や投資信託へ流れています。

2026年4月から6月期には、株式と投資信託への純流入が3.7兆円となりました。

投資信託だけでは3.9兆円の資金流入です。

さらに、2026年6月にはETFを除く公募株式投信の設定額が6兆3958億円となり、過去最高を記録しました。

設定額から解約や償還を差し引いた純資金流入額も2兆5931億円でした。

つまり、株高や円安によって残高が膨らんでいるだけではなく、実際に新しい資金も投資へ向かっています。

新NISAの効果を見るならフローが重要になる

新NISAによって家計の投資行動がどれだけ変わったのかを考える場合には、残高だけでなくフローを見る必要があります。

残高は、その時点で家計が持っている金融資産の価値です。

フローは、一定期間に実際にどれだけのお金が投資へ入ったり、投資から出たりしたのかを示します。

株価が急上昇すれば、フローが小さくても残高は大きく増えることがあります。

反対に、家計が積極的に投資していても、株価が大幅に下落すれば残高が減ることがあります。

制度による投資行動の変化を見るのであれば、実際の資金の流れを確認することが重要です。

積立投資は毎月資金が流れる仕組みをつくる

新NISAの大きな特徴の1つが、積立投資との相性のよさです。

例えば毎月5万円を投資信託へ積み立てるとします。

1年間では60万円です。

株価が上昇しても下落しても、積立設定を続ければ毎月一定額が投資へ回ります。

こうした家計が増えると、投資信託には継続的に新しい資金が入るようになります。

株価が上昇したから投資するという一時的な行動ではなく、給与や預金の一部が定期的に投資へ向かう構造が生まれます。

新NISAが家計金融資産に与える影響を考えるうえでは、この継続性が重要です。

73パーセント増をすべてNISAの成果にしてはいけない

2023年12月末から2026年6月末までに株式と投資信託の残高が73パーセント増えたことは、大きな変化です。

新NISAが始まった時期と重なるため、両者を直接結びつけたくなります。

しかし、同じ時期に株価や為替も大きく動いています。

そのため、73パーセントという残高増加をそのまま新NISAの政策効果とすることはできません。

新NISAによる新規投資はいくらだったのか。

株高による評価額増加はいくらだったのか。

円安による増加はいくらだったのか。

これらを分けて考える必要があります。

株価が下がったときに本当の変化が見えやすくなる

今後、家計の投資行動を見るうえで興味深いのは株価が下落したときです。

株高が続いている間は、残高も増えやすくなります。

しかし株価が下落すれば、投資信託の評価額も減少します。

そのときでも新NISAを通じた積立投資が続き、純資金流入が維持されるのであれば、家計の投資行動が長期的に変わったことを確認しやすくなります。

反対に、株価下落とともに資金流出へ転じるのであれば、投資行動には市場環境の影響が大きかったことになります。

残高だけでは分からない変化を、資金の流れから確認することができます。

結論

新NISA導入前の2023年12月末から2026年6月末までに、家計が保有する株式と投資信託の残高は73パーセント増えました。

しかし、この73パーセントをそのまま新NISAによって家計が新しく投資した金額と考えることはできません。

金融資産残高には、新NISAなどを通じた実際の資金流入だけでなく、株価上昇による評価益や円安による円換算額の増加も含まれています。

一方で、2026年4月から6月期には株式と投資信託へ3.7兆円の純流入があり、投資信託だけでも3.9兆円が流入しています。

つまり、評価額が増えているだけではなく、家計のお金そのものも投資へ動いています。

新NISAの影響を考えるときに大切なのは、残高が何パーセント増えたかだけを見ることではありません。

実際の資金流入と市場価格による値上がりを分けて見ることで、家計の投資行動がどこまで変わったのかをより正確に理解することができます。

参考

日本経済新聞 2026年9月18日 朝刊 家計、株式・投信へシフト

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