投資信託にどれだけのお金が集まっているのかを調べると、設定額という言葉が出てきます。
資産運用業協会によると、ETFを除く公募株式投信の設定額は2026年6月に6兆3958億円となり、過去最高を記録しました。
6兆円を超える巨額のお金が投資信託へ入ったことになります。
しかし、この数字をそのまま投資信託に6兆3958億円のお金が新しく残ったと考えてはいけません。
投資信託では、新しく購入する人がいる一方で、売却する人もいるからです。
投資信託への本当の資金の流れを見るためには、設定額だけではなく、解約額、償還額、純資金流入額を合わせて理解する必要があります。
設定額とは何か
投資信託では、投資家から新しくお金が入ると、その資金をもとに投資信託の受益権が設定されます。
この新しく入ってきた資金の金額が設定額です。
例えば、ある投資信託に1カ月間で100億円の購入資金が入ったとします。
単純化すると設定額は100億円です。
投資信託を購入する人が増えれば設定額も大きくなります。
そのため、設定額を見ると、投資家がどれだけ積極的に投資信託を購入しているのかを知る手掛かりになります。
6兆3958億円は何を意味するのか
2026年6月のETFを除く公募株式投信の設定額は6兆3958億円でした。
過去最高です。
1カ月間にこれだけ大きな購入資金が投資信託へ入ったことになります。
新NISAの普及によって投資信託を毎月積み立てる人が増えたことなどが、継続的な資金流入につながっています。
ただし、6兆3958億円という数字は資金の入口だけを見た数字です。
同じ月に投資信託を売却して、お金を引き出した人もいます。
したがって、設定額だけで投資信託全体のお金がどれだけ増えたのかを判断することはできません。
解約額とは何か
投資家が保有している投資信託を途中で換金することを解約といいます。
例えば100万円分の投資信託を持っている人が、そのうち30万円分を換金すれば、投資信託から資金が外へ出ていきます。
多くの投資家が利益確定や生活資金の確保などを目的に投資信託を売却すれば、解約額は大きくなります。
設定額が大きくても、解約額も同じように大きければ、投資信託に残る資金はそれほど増えません。
そこで設定額と解約額の両方を見る必要があります。
償還とは何か
投資信託から資金が出ていく理由は解約だけではありません。
償還もあります。
投資信託には、あらかじめ運用期間が決められている商品があります。
その運用期間が終了すると、投資信託の資産を精算して投資家へお金を返します。
これが償還です。
また、一定の条件に該当した場合などに予定より早く運用を終了する繰上償還が行われることもあります。
償還が行われれば、投資信託から資金が外へ出るため、資金流出として考える必要があります。
純資金流入額とは何か
投資信託への実質的な資金の流れを見るために重要なのが純資金流入額です。
基本的な考え方は、設定によって入ってきた資金から、解約や償還によって出ていった資金を差し引くことです。
例えば設定額が100億円だったとします。
一方で、解約と償還によって70億円が出ていったとします。
この場合、差し引き30億円の純資金流入です。
投資信託全体へ新しくどれだけの資金が残ったのかを見る場合には、この数字が重要になります。
6兆3958億円すべてが残ったわけではない
2026年6月の設定額は6兆3958億円でした。
一方、設定額から解約や償還を差し引いた純資金流入額は2兆5931億円でした。
つまり、6兆円を超える資金が入ってきた一方で、解約や償還によって相当額のお金が出ていったことになります。
それでも2兆5931億円の純流入が残りました。
これは非常に大きな規模です。
過去最大だった2026年1月の2.7兆円にも迫りました。
投資信託への資金流入が強いことは、設定額だけでなく純資金流入額からも確認できます。
設定額が増える理由は積立だけではない
設定額が増えている背景として、新NISAによる積立投資は重要です。
ただし、投資信託への購入資金がすべて積立投資というわけではありません。
まとまった資金を一括投資する人もいます。
株式を売却した資金を投資信託へ移す人もいます。
預金や保険などから資金を移す場合もあります。
家計のお金がさまざまな金融商品を移動した結果として、投資信託の設定額が増えることがあります。
そのため設定額を見るときには、どこから資金が来ているのかも考える必要があります。
設定額と残高も違う
設定額と投資信託の残高も別の数字です。
設定額は一定期間に入ってきた資金です。
残高はある時点で投資家が保有している投資信託の価値です。
例えば100万円の投資信託を新しく購入した後、株価上昇によって120万円になれば、設定された資金は100万円でも残高は120万円になります。
反対に100万円を投資して80万円まで値下がりすれば、設定された資金は100万円でも残高は80万円です。
設定額はお金の流れを示し、残高はその時点の資産価値を示します。
投資信託の数字は3段階で見る
投資信託への資金の動きを理解するときには、3つの数字を分けて見ると分かりやすくなります。
最初が設定額です。
どれだけ新しい購入資金が入ったのかを示します。
次が純資金流入額です。
設定額から解約や償還による流出を差し引き、実際にどれだけ資金が増えたのかを見ます。
最後が残高です。
純資金流入に加えて、株価や為替などの価格変動を反映した現在の資産価値です。
この3つは似ているようで、それぞれ意味が違います。
設定額が多くても人気商品とは限らない場合がある
設定額だけを見て投資信託の人気を判断するときにも注意が必要です。
設定額が非常に大きくても、同時に大量の解約が発生している可能性があります。
例えば設定額が1000億円でも解約などが900億円あれば、純流入は100億円です。
一方、設定額が500億円でも解約などが100億円なら、純流入は400億円になります。
入口の金額だけを見ると前者の方が大きいですが、実際に増えた資金は後者の方が大きくなります。
投資家のお金がどこへ向かっているのかを見る場合には、純資金流入額まで確認することが大切です。
結論
投資信託の設定額とは、投資家の購入などによって新しく投資信託へ入ってきた資金を示す数字です。
2026年6月にはETFを除く公募株式投信の設定額が6兆3958億円となり、過去最高を記録しました。
しかし、この6兆3958億円がそのまま投資信託に残ったわけではありません。
同じ期間に解約や償還によって出ていったお金があります。
それを差し引いた純資金流入額は2兆5931億円でした。
投資信託の資金動向を見るときには、設定額だけを見るのではなく、解約額、償還額、純資金流入額、さらに現在の残高まで分けて考えることが重要です。
設定額は入口のお金です。
純資金流入額は出入りを差し引いたお金です。
残高は価格変動まで反映した現在の資産価値です。
この違いを理解すると、投資信託にお金が集まっているというニュースの数字を、より正確に読み取れるようになります。
参考
日本経済新聞 2026年9月18日 朝刊 家計、株式・投信へシフト