住宅ローンを返済しながら資産運用をしていると、1つの疑問が出てきます。
余裕資金があるなら、住宅ローンを繰り上げ返済した方がよいのでしょうか。
それとも、住宅ローンはそのままにして投資へ回した方がよいのでしょうか。
特に2階建て住宅ローンでは、元金の一部を最終返済日まで据え置き、毎月の返済額を抑えることができます。
その分をNISAなどによる資産形成へ回すという考え方もあります。
このとき住宅ローン金利と投資の運用利回りを比較したくなります。
しかし、金利と運用利回りの数字だけで判断すると、重要な違いを見落とす可能性があります。
住宅ローンを返すと何が得られるのか
住宅ローンを繰り上げ返済すると、その分の元金が減ります。
元金が減れば、その後に支払う予定だった利息も減ります。
例えば100万円を繰り上げ返済すれば、その100万円に対して将来発生するはずだった利息を支払わなくて済みます。
これは投資とは性格が異なります。
住宅ローンを返済することによる利息軽減効果は、基本的には契約している住宅ローン金利によって決まります。
株価が上がるか下がるかには左右されません。
つまり繰り上げ返済には、将来の確定した支出を減らすという意味があります。
投資には期待収益率がある
一方、投資では将来どれだけ資産が増えるかは確定していません。
株式や投資信託には、長期的な運用成果を考えるうえで期待収益率という考え方があります。
例えば住宅ローン金利が年2%で、投資から年4%程度の収益を期待するとします。
数字だけを比較すれば、2%で借りた資金を実質的に残しながら4%で運用した方が有利に見えます。
しかし、年4%は預金金利のように約束された数字ではありません。
ある年には大きく上昇することがあります。
反対に大きく下落することもあります。
長期間運用した結果として想定を下回る可能性もあります。
2%と4%は同じ種類の数字ではない
ここが最も重要です。
住宅ローンの2%と投資の期待収益率4%を並べても、単純に2%の差が利益になるわけではありません。
住宅ローン金利は借入条件に基づいて負担するコストです。
投資の4%は将来期待する収益です。
確定したコストと不確定なリターンを比較しています。
例えば投資資産が順調に増えれば、住宅ローンを急いで返済しなかった判断が結果的に有利になる可能性があります。
しかし市場が低迷すれば、住宅ローン残高は残っているのに金融資産が思ったほど増えていない状態になる可能性があります。
NISAなら税金を考えやすくなる
投資と住宅ローンを比較するときには税金も重要です。
通常、株式や投資信託の利益には税金がかかります。
そのため表面上の運用利回りと、税引き後に手元へ残る収益は同じではありません。
一方、NISAでは制度上の範囲内で対象となる投資から得られる売却益や配当などが非課税になります。
そのためNISAを利用すれば、課税口座で投資する場合より運用益を資産形成に残しやすくなります。
ただし、非課税だから投資リスクがなくなるわけではありません。
NISAは税制優遇制度であり、運用利回りや元本を保証する制度ではありません。
住宅ローン控除も考える
住宅ローンについても税制を無視することはできません。
一定の要件を満たせば、住宅ローン控除を利用できる場合があります。
住宅ローン残高を繰り上げ返済によって減らせば、その後の住宅ローン控除額に影響する場合があります。
したがって、単純に金利だけを見て繰り上げ返済を判断するのではなく、税制上の効果も含めて考える必要があります。
住宅ローン金利、住宅ローン控除、投資に対する税金、NISAの非課税効果などを合わせて考えることで、家計全体の姿が見えてきます。
手元資金を失うことにも注意する
繰り上げ返済には大きな特徴があります。
一度住宅ローンの返済に使ったお金は、通常は簡単に手元へ戻すことができません。
例えば500万円の預金を持っている人が、その500万円をすべて繰り上げ返済に使ったとします。
住宅ローン残高は減ります。
しかし手元の現金も減ります。
その直後に収入が減ったり、大きな支出が発生したりすれば、資金繰りに困る可能性があります。
住宅ローンを減らすことだけでなく、手元流動性を確保することも家計の安全性には重要です。
投資資産ならいつでも使えるとは限らない
では、繰り上げ返済せず投資しておけば安心なのでしょうか。
必ずしもそうではありません。
株式や投資信託は売却して現金化できますが、その時の価格は分かりません。
500万円投資していても、必要になった時点で400万円に値下がりしている可能性があります。
したがって生活防衛資金まで投資へ回してしまうのは注意が必要です。
住宅ローンを返すお金。
投資するお金。
近い将来に必要となるお金。
それぞれを分けて考える必要があります。
2階建て住宅ローンでは比較がさらに重要になる
2階建て住宅ローンでは、元金の50%を最終返済日まで据え置く商品があります。
例えば1億円借りれば、5000万円が最後まで残る形になります。
毎月返済額を抑えて投資へ回すなら、住宅ローンという大きな負債を残しながら金融資産を増やす戦略になります。
資産だけを見れば投資によって残高が増えているかもしれません。
しかし負債も同時に残っています。
そのため金融資産から住宅ローン残高を差し引いた純資産で考える視点も重要です。
得か損かは結果が出るまで分からない部分がある
住宅ローンを繰り上げ返済する場合には、将来支払う利息を減らす効果を比較的計算しやすくなります。
一方、投資へ回した場合の最終的な利益は将来の市場環境によって変わります。
したがって、どちらが得になるかを現在の時点で完全に確定することはできません。
重要なのは、最も高い収益を狙うことだけではありません。
収入が減った場合でも住宅ローンを返済できるか。
投資資産が下落しても生活できるか。
最終返済日に必要な資金を準備できるか。
こうした家計全体の耐久力を考える必要があります。
結論
住宅ローンを返すべきか、投資した方がよいのかは、住宅ローン金利と投資の期待収益率だけでは決められません。
住宅ローンを返済すれば、将来支払う利息を確実に減らすことができます。
一方、投資にはより高い収益を得られる可能性がありますが、その収益は保証されていません。
さらに住宅ローン控除やNISAなどの税制、手元資金、生活防衛資金、将来の収入なども関係します。
特に2階建て住宅ローンでは、大きな元金を将来まで残しながら資産運用を行うことになります。
金利2%と期待収益率4%なら投資した方が2%得だというほど単純ではありません。
確定している負債と、価格が変動する資産を同時に持つことになります。
住宅ローンと投資を比較するときに重要なのは、どちらの数字が大きいかだけではありません。
家計全体の資産と負債、税金、手元資金、そして将来の返済能力を一緒に考えることが重要です。
参考
日本経済新聞 2026年9月17日 朝刊 タワマン購入へ「2階建て」ローン、月々の負担減に落とし穴