パスワードを何度も間違えるとなぜ端末をロックするのか 身近な対策から考えるサイバー防御編

経営

サイバーセキュリティー対策というと、高度なシステムや専門的な技術を想像しがちです。

しかし、2027年3月ごろから始まる予定のSCS評価制度で重要になるのは、日常業務の中にある基本的な対策です。

記事では、認定取得に向けた模擬試験の質問として、パスワードの入力ミスを繰り返すと端末をロックする機能があるかという例が紹介されています。

なぜ、何度かパスワードを間違えただけで端末を使えなくする必要があるのでしょうか。

そこには、利便性と安全性をどう両立させるかというサイバー対策の基本的な考え方があります。

パスワードは本人確認の鍵になる

会社のパソコンやシステムでは、利用者が本人であることを確認するためにパスワードが広く使われています。

正しいパスワードを知っている人だけがログインできる仕組みです。

しかし、パスワードには弱点があります。

攻撃者が正しい文字列を知ってしまえば、本人になりすましてログインできる可能性があるからです。

そこで重要になるのが、パスワードそのものを守ることに加えて、不正なログインを試し続けられないようにすることです。

攻撃者は何度もパスワードを試す

パスワードを知らない攻撃者でも、さまざまな文字列を繰り返し入力すれば、偶然正しいパスワードに当たる可能性があります。

人間が1件ずつ入力する必要はありません。

コンピューターを利用すれば、多数の候補を機械的に試すことができます。

こうした方法の代表例が総当たり攻撃です。

よく使われる単語や数字の組み合わせを順番に試す方法もあります。

ログインを何度でも無制限に試せる仕組みであれば、攻撃者に大量の試行機会を与えてしまいます。

アカウントロックで試行回数を制限する

そこで使われるのがアカウントや端末をロックする仕組みです。

一定回数以上パスワードを間違えた場合、それ以上ログインできない状態にします。

たとえば攻撃者が何千回、何万回とパスワードを試そうとしても、途中でロックされれば攻撃を続けにくくなります。

単純な仕組みに見えますが、不正ログインへの基本的な防御になります。

重要なのは、攻撃者に無制限の挑戦機会を与えないことです。

厳しくすればよいとは限らない

一方、セキュリティーを厳しくすればするほどよいわけではありません。

記事では、模擬試験を受けた企業の担当者が、高齢の職人が何度もパスワードを間違えると困るという趣旨の悩みを語っています。

これは多くの企業に共通する問題です。

ロックされる条件を厳しくしすぎると、正規の利用者まで仕事ができなくなる可能性があります。

解除のたびに管理担当者が対応すれば、IT部門の負担も増えます。

セキュリティー対策では、安全性だけでなく業務への影響も考える必要があります。

利便性と安全性のバランスを考える

企業が考えるべきなのは、ロックするかしないかという2択ではありません。

何回間違えたらロックするのか。

どのくらいの時間ロックするのか。

本人確認後にどのような方法で解除するのか。

管理者への連絡方法をどうするのか。

こうした運用まで含めて設計することが重要です。

社員の年齢やITへの習熟度、仕事の内容によっても適切な方法は変わります。

セキュリティー対策を実際の職場に合わせて運用できる仕組みにする必要があります。

パスワードだけに頼らない方法もある

本人確認をパスワードだけに依存しない方法もあります。

たとえば、パスワードに加えて別の方法で本人確認する仕組みです。

パスワードが攻撃者に知られても、もう1つの確認を突破できなければ不正ログインを防ぎやすくなります。

重要なシステムほど、複数の防御策を組み合わせることが重要です。

パスワードを強くする。

ログインの試行回数を制限する。

必要に応じて複数の方法で本人確認する。

1つの対策だけに頼らず、複数の壁を設ける考え方です。

社員教育も欠かせない

システム側の対策だけでは十分ではありません。

社員自身がパスワードを適切に扱うことも重要です。

覚えやすいからといって単純な文字列を使う。

複数のサービスで同じパスワードを使い回す。

パスワードを書いた紙をパソコンの近くに置く。

こうした行動があれば、システムを強化しても安全性が低下する可能性があります。

社員に理由まで説明し、なぜ対策が必要なのかを理解してもらうことが重要です。

SCS評価制度は日常業務を見直す機会になる

SCS評価制度では、管理体制やサイバー攻撃への防御など、さまざまな項目が確認されます。

その中には、パスワード管理のように日常業務と密接に関係するものがあります。

中小企業にとって重要なのは、高額なセキュリティー製品を購入することだけではありません。

現在使っているパソコンやシステムの設定を確認する。

社員のアカウントを適切に管理する。

退職者のアカウントを放置しない。

不審なログインがないか確認する。

こうした基本的な部分を積み重ねることが、会社全体の防御力につながります。

結論

パスワードの入力ミスを繰り返したときに端末やアカウントをロックするのは、不正なログインを何度も試されることを防ぐためです。

攻撃者に無制限の試行機会を与えなければ、パスワードを機械的に探し当てる攻撃への防御につながります。

一方で、ロックを厳しくしすぎれば、正規の社員まで業務ができなくなる可能性があります。

そのため、サイバー対策では安全性と利便性の両方を考えることが重要です。

SCS評価制度への対応は、特別なサイバー技術を導入することだけを意味するものではありません。

パスワードやアカウント管理といった身近な仕組みを1つずつ見直すことも、星3個へ向けた重要な一歩になります。

参考

日本経済新聞 2026年9月17日 朝刊 サイバー対策、試される中小

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