Swift Digital Ledgerとは何か 異なる銀行のトークン化預金をつなぐ仕組み編

FP
緑 赤 セミナー ブログアイキャッチ - 1

トークン化預金を使えば、銀行預金をブロックチェーンなどのデジタル基盤上で動かせるようになります。

しかし、1つ大きな問題があります。

A銀行がトークン化預金を発行し、B銀行も別のトークン化預金を発行したとしても、それぞれの仕組みがつながっていなければ銀行をまたいだ送金には使いにくいという問題です。

そこでSwiftが開発しているのがSwift Digital Ledgerです。

異なる銀行のトークン化預金を接続し、銀行をまたいだ国際送金を24時間365日、ほぼ即時に実行できる仕組みを目指しています。

分散型台帳とは何か

Swift Digital Ledgerを理解するためには、まず分散型台帳について知っておく必要があります。

台帳とは、誰がどれだけのお金や資産を持っているのか、どのような取引が行われたのかを記録するものです。

銀行にも巨大な電子的な台帳があります。

通常は、それぞれの銀行が自分のシステムの中で預金残高や取引を管理しています。

分散型台帳では、一定のルールのもとで複数の参加者が取引情報を共有します。

ブロックチェーンは、その代表的な技術の1つです。

複数の金融機関が同じ取引情報を共有しながら処理できれば、銀行ごとに別々の台帳を照合する手続きを減らせる可能性があります。

銀行ごとにトークン化預金が存在する

トークン化預金は、すべての銀行が共通の1種類のトークンを発行する仕組みとは限りません。

基本的には、それぞれの銀行が自らの預金をトークン化します。

例えば、A銀行が発行した1万円分のトークン化預金は、A銀行に対する1万円の預金債権を表します。

B銀行が発行した1万円分のトークン化預金は、B銀行に対する預金債権です。

同じ1万円でも、発行している銀行が違います。

ここがステーブルコインなどとは異なるトークン化預金の重要な特徴です。

自行内だけなら比較的簡単

銀行が自分の顧客同士でトークン化預金を移転するだけなら、仕組みは比較的分かりやすくなります。

例えば、A銀行の口座を持つ企業から、同じA銀行に口座を持つ別の企業へトークン化預金を移すケースです。

A銀行が自ら発行した預金を自らの仕組みの中で管理できます。

実際に海外の大手銀行では、トークン化預金を利用して自行の本支店間などの資金移動を即時化するサービスが始まっています。

しかし、国際送金ではこれだけでは足りません。

送金先が別の銀行であることが多いからです。

銀行をまたぐと難しくなる

A銀行からB銀行へ送金する場合を考えてみます。

A銀行のトークン化預金を、そのままB銀行の預金として扱うことはできません。

A銀行の預金とB銀行の預金は、それぞれ異なる銀行に対する債権だからです。

そのため、A銀行のトークン化預金を減らし、それに対応してB銀行側で預金を増やすなどの処理が必要になります。

さらに銀行同士では、最終的にどちらがどれだけ資金を受け取り、支払うのかを決済しなければなりません。

この銀行間の壁をどう越えるかが、トークン化預金を本格的に普及させるうえで大きな課題になります。

Swift Digital Ledgerの役割

Swift Digital Ledgerは、この異なる銀行間をつなぐ共通基盤として開発されています。

これまでSwiftは、世界中の銀行が送金情報などをやり取りする通信インフラとして機能してきました。

新しい仕組みでは、そこからさらに一歩進みます。

各銀行が持つトークン化預金を共通のデジタル基盤上で接続し、銀行をまたいで価値を移転できるようにしようとしています。

銀行がそれぞれ独自にトークン化を進めるだけでは、デジタル金融の世界に新しい壁ができてしまいます。

Swiftは、その壁をつなぐ役割を担おうとしているわけです。

世界17行で試験運用

Swiftは世界の大手金融機関とSwift Digital Ledgerの試験運用を進めています。

参加するのは、米シティグループやウェルズ・ファーゴ、バンク・オブ・ニューヨーク・メロン、スイスのUBS、フランスのBNPパリバなど世界17行です。

日本からは三菱UFJ銀行が参加しています。

すでに銀行間で実際の取引を想定した実証も行われています。

英国のHSBCとスタンダードチャータードがSwiftの基盤を利用した取引を実施したほか、シティもUAEやシンガポールの銀行との送金に成功しています。

銀行内だけではなく、異なる銀行を接続する段階へ進んでいることがポイントです。

24時間365日送金できる可能性

現在の国際送金では、銀行の営業時間や各国の決済システムの稼働時間などが影響します。

土曜日や日曜日、祝日を挟むと処理が遅れることもあります。

Swift Digital Ledgerによってトークン化預金を銀行間で移転できれば、夜間や休日を含む24時間365日の価値移転が可能になると期待されています。

例えば、日本企業が日曜日に海外企業へ代金を支払う必要が生じた場合でも、営業日になるまで待たずに送金できる可能性があります。

企業活動そのものが24時間世界中で動いている以上、お金の移動も同じように24時間化する意味は大きいといえます。

最終決済は既存システムを利用する

Swift Digital Ledgerには重要な特徴があります。

銀行間の最終的な決済まで、すべてをブロックチェーン上に移す仕組みではないという点です。

トークン化預金の移転には新しいデジタル基盤を利用しますが、銀行間の最終決済には既存の銀行システムを利用します。

つまり、現在の金融インフラをすべて捨てて新しいシステムへ置き換えるのではありません。

既存の銀行システムを生かしながら、その上にトークン化預金をつなぐ新しい仕組みを組み合わせます。

これは新しい技術を現実の金融システムへ導入するうえで重要な考え方です。

相互運用性が普及の鍵になる

デジタルマネーの世界では、相互運用性という考え方が非常に重要になります。

相互運用性とは、異なるシステム同士が接続し、データや価値をやり取りできることです。

A銀行のトークン化預金はA銀行だけ、B銀行のトークン化預金はB銀行だけで利用できるのであれば、利用者にとって大きな利便性は生まれません。

世界中の銀行のトークン化預金を安全に接続できて初めて、現在の銀行送金に代わる巨大な金融インフラになる可能性が出てきます。

世界1万1000以上の金融機関が参加するSwiftがこの分野に取り組む意味は、まさにここにあります。

結論

Swift Digital Ledgerとは、異なる銀行が発行するトークン化預金を接続するためにSwiftが開発しているデジタル基盤です。

トークン化預金は銀行ごとに発行されるため、個々の銀行が独自に仕組みをつくるだけでは国際送金全体を変えることはできません。

必要なのは、A銀行のトークン化預金とB銀行のトークン化預金を安全につなぐ仕組みです。

Swift Digital Ledgerは、その共通基盤になることを目指しています。

実用化されれば、銀行をまたぐ国際送金でも24時間365日の即時送金が可能になり、送金時間や待機資金を大幅に減らせる可能性があります。

トークン化預金の本当の価値は、銀行がトークンを発行することだけではありません。

世界中の銀行が発行するトークン化預金をつなげられるかどうか。

金融のデジタル化では、この相互接続の仕組みが大きな鍵を握ることになりそうです。

参考

日本経済新聞 2026年9月15日 朝刊 トークン化預金、国際送金即時に

タイトルとURLをコピーしました