海外へお金を送るとき、私たちは銀行に送金を依頼します。
すると銀行は、海外の銀行へお金を届けるための手続きを進めます。
このとき世界の銀行同士をつなぐ重要な役割を果たしているのがSwiftです。
Swiftには世界1万1000以上の金融機関が参加しており、約50年にわたって国際金融を支えてきました。
ただし、Swiftがお金そのものを世界中へ運んでいるわけではありません。
ここを理解すると、なぜ国際送金には時間と手数料がかかるのか、そしてトークン化預金によって何を変えようとしているのかが見えてきます。
Swiftとは何か
Swiftは国際銀行間通信協会と呼ばれる国際的な組織です。
世界各国の銀行などが、安全に金融取引の情報をやり取りするための通信インフラを提供しています。
例えば、日本の銀行から海外の銀行へ送金するときには、誰が、どの銀行の、どの口座へ、いくら送るのかといった情報を正確に伝える必要があります。
世界中の銀行がそれぞれ異なる形式で情報を送っていたのでは、国際送金を効率的に処理できません。
そこで共通のルールを使って銀行同士が金融情報を交換できるようにしたのがSwiftです。
Swiftはお金そのものを送っているわけではない
Swiftを理解するうえで非常に重要なのが、通信と決済を分けて考えることです。
Swiftの中心的な役割は、銀行間で送金などに必要なメッセージを伝えることです。
銀行から銀行へ現金そのものを運んでいるわけではありません。
例えば、日本の銀行から米国の銀行へ100万円相当を送る場合を考えてみます。
送金に必要な情報はSwiftなどを通じて銀行間でやり取りされます。
一方、実際のお金の受け渡しについては、銀行同士が持つ口座関係や各国の決済システムなどを利用して処理します。
この2つが組み合わさることで国際送金が成立します。
なぜ複数の銀行を経由するのか
すべての銀行が世界中の銀行と直接取引関係を持っているわけではありません。
日本のある銀行が海外の送金先銀行と直接資金をやり取りできない場合、途中に別の銀行が入ることがあります。
こうした国際送金で重要になるのが、銀行同士が相互に口座を持つコルレス関係です。
送金する銀行と受取銀行に直接の関係がなければ、双方と取引関係を持つ中継銀行を経由して資金を動かします。
場合によっては複数の銀行を経由します。
世界中の銀行をつなぐ巨大なネットワークがあるからこそ、私たちは取引関係のない海外銀行の口座にも送金できます。
その一方で、この仕組みが国際送金を複雑にする原因にもなっています。
国際送金に時間がかかる理由
銀行を経由するたびに、さまざまな処理が必要になります。
送金情報の確認だけでなく、マネーロンダリング対策や経済制裁への対応なども必要です。
さらに、それぞれの銀行や国の決済システムには営業時間があります。
日本では営業日でも送金先の国が祝日ということがあります。
時差もあります。
こうした要因が重なると、送金してから相手の口座へ着金するまで数日かかる場合があります。
インターネット上では情報が瞬時に届いても、お金の決済は複数の金融機関のシステムを順番に通過するため、同じ速度では進まないことがあるのです。
なぜ手数料が高くなるのか
複数の銀行を経由することは、手数料にも影響します。
送金元の銀行だけでなく、中継銀行や受取銀行などで費用が発生することがあります。
さらに円をドルなどに交換する場合には、外国為替に関するコストも発生します。
その結果、少額の国際送金では送金額に対する手数料の割合が非常に高くなることがあります。
特に個人や中小企業にとっては、国際送金のコストが大きな負担になる場合があります。
この問題に目をつけて成長してきたのが、新しい送金サービスを提供するフィンテック企業です。
Swiftにも変化が求められている
Swiftは長年にわたって世界の国際金融を支えてきました。
しかし、スマートフォンでさまざまなサービスを瞬時に利用できる現在、海外送金だけ数日かかるという仕組みは利用者にとって分かりにくくなっています。
送金手数料についても、途中でいくら差し引かれるのか分かりにくいケースがあります。
こうした中で、銀行以外の事業者による安価で速い国際送金サービスが拡大してきました。
Swiftにとっても、従来の仕組みを維持するだけでは十分ではなくなっています。
トークン化預金をつなぐ新しい役割
そこでSwiftが取り組み始めているのが、ブロックチェーンとトークン化預金です。
各銀行が預金をトークン化しても、そのトークンが自行のシステムの中でしか利用できなければ、国際送金全体を変えることはできません。
A銀行のトークン化預金をB銀行へ送り、さらに海外のC銀行へ移せるような相互接続が必要です。
SwiftはSwift Digital Ledgerという基盤を開発し、異なる銀行のトークン化預金を接続する試験を進めています。
これまで銀行間のメッセージをつないできたSwiftが、デジタル化された預金を銀行間で移転するための共通基盤にもなろうとしているわけです。
24時間365日の国際送金へ
トークン化預金を銀行間で直接移転できるようになれば、現在の国際送金の仕組みを大幅に効率化できる可能性があります。
銀行の営業時間に左右されず、夜間や週末、祝日でも資金を移転できる可能性があります。
企業にとっては、海外への支払いに備えて何日も前から資金を準備する必要が減ります。
個人にとっても、海外にいる家族への送金などが速く安くなる可能性があります。
Swiftが目指しているのは、単にブロックチェーンという新しい技術を導入することではありません。
約50年前につくられた国際送金の仕組みを、24時間365日動くデジタル経済に対応させることだと考えると分かりやすいでしょう。
結論
Swiftは世界1万1000以上の金融機関をつなぎ、国際送金などに必要な情報を安全にやり取りするための巨大な通信インフラです。
ただし、Swiftそのものがお金を直接移動させているわけではありません。
実際の資金決済では銀行同士の口座関係や各国の決済システムが利用されるため、複数の銀行を経由すると送金に時間や手数料がかかります。
この長年の課題を解決するため、Swiftはトークン化預金とブロックチェーンを利用した新しい仕組みの試験を進めています。
世界の銀行を情報でつないできたSwiftが、これからはデジタル化された預金をつなぐ役割まで担うことになるのか。
トークン化預金の普及を考えるうえで、Swiftの変化は重要なポイントになりそうです。
参考
日本経済新聞 2026年9月15日 朝刊 トークン化預金、国際送金即時に