日本の少子化を考えるとき、未婚化が大きな原因として指摘されます。
確かに、結婚する人が減れば出生数も減ります。日本では結婚と出生の結びつきが強いため、未婚化が出生数に与える影響は大きいと考えられます。
しかし、2025年の出生動向基本調査からは、もう一つ重要な変化が見えてきました。
夫婦が予定している子どもの数が平均1.95人となり、集計開始以来初めて2人を下回ったことです。
少子化は結婚する前だけではありません。
すでに結婚した夫婦の中でも進んでいます。
予定子ども数とは何か
予定子ども数とは、夫婦が最終的に何人の子どもを持つ予定なのかを示す数字です。
現在いる子どもの数だけを意味するものではありません。
たとえば現在子どもが1人いる夫婦が、将来もう1人欲しいと考えていれば、予定する子どもの数は2人になります。
そのため、予定子ども数を見ることで、夫婦が将来どの程度の家族規模を考えているのかを知ることができます。
2025年の調査では、この平均が1.95人となりました。
2人を下回ったという事実は、夫婦の家族計画そのものが小さくなっていることを示しています。
2人を割ったことには大きな意味がある
平均1.95人と2人との差は、わずか0.05人です。
数字だけを見ると小さな違いに感じるかもしれません。
しかし、社会全体で考えると意味は小さくありません。
すべての夫婦が2人の子どもを予定しているのであれば、平均は2人になります。
1人しか予定しない夫婦や子どもを予定しない夫婦が増えれば、平均は2人を下回ります。
実際、予定する子どもの数が2人以上の夫婦の割合も72.9パーセントとなり、調査開始以降で最低となりました。
2人以上の子どもを持つという家族像が、以前ほど一般的ではなくなっていることがうかがえます。
理想は2.18人なのに予定は1.95人
さらに重要なのが、理想と予定の違いです。
2025年の調査では、夫婦が理想とする子どもの数は平均2.18人でした。
一方、予定する子どもの数は1.95人です。
理想の方が0.23人多くなっています。
この差は、もう少し子どもが欲しいと考えていても、現実にはその人数を持つ予定にはしていない夫婦がいることを示しています。
少子化を考えるときには、この理想と予定の差がなぜ生まれるのかを見ることが重要です。
最大の理由は子育てと教育のお金
理想の人数の子どもを持たない理由で最も多かったのは、子育てや教育にお金がかかりすぎることでした。
52.9パーセントが挙げています。
子どもが1人増えれば、食費や衣服だけではなく、保育や教育にかかる費用も増えます。
大学まで進学することを想定すれば、負担は長期間続きます。
さらに子どもの人数が増えることで、より広い住宅が必要になる場合もあります。
教育費だけでなく住宅費まで増える可能性があります。
夫婦が理想では2人以上を考えていても、長期的な家計を計算した結果、予定する人数を減らすことは十分に考えられます。
お金だけが理由ではない
理想の人数を持たない理由は経済面だけではありません。
高年齢で生むのはいやだからという回答は35.0パーセントでした。
さらに、これ以上育児の心理的、肉体的負担に耐えられないという回答も27.8パーセントありました。
ここから分かるのは、子どもの人数を決める要因が複数あることです。
結婚や第1子の出産が遅くなれば、第2子以降を考えられる期間が短くなります。
共働きで仕事を続けながら育児をしていれば、時間的、身体的な負担も大きくなります。
お金、年齢、時間という複数の制約が重なり、予定する子どもの数を減らしている可能性があります。
若い夫婦でも2人を下回っている
特に注目したいのが、結婚期間の短い夫婦です。
結婚期間が0年から4年の夫婦では、理想と予定の子どもの数がともに2人を下回っています。
これは重要な変化です。
長く結婚生活を続ける中で、結果として子どもの人数が理想より少なくなったというだけではありません。
結婚して間もない段階から、小さな家族規模を考える夫婦が増えていることになります。
これから子育てを始める若い夫婦の意識そのものが変化している可能性があります。
実際に持つ子どもの数も過去最低
予定だけではなく、実際の結果にも変化が表れています。
結婚期間が15年から19年の夫婦が最終的に持つ子どもの数は1.86人となり、過去最低を更新しました。
つまり、予定する人数が減っているだけではありません。
実際に夫婦が持つ子どもの数についても減少傾向がみられます。
未婚化によって出生数が減り、さらに結婚した夫婦が持つ子どもの人数も減る。
日本の少子化は、この二つが同時に進んでいると考える必要があります。
未婚化だけを解決しても十分ではない
仮に結婚する若者が増えたとしても、それだけで出生数が以前の水準に戻るとは限りません。
結婚した夫婦が予定する子どもの数自体が減っているからです。
これは少子化対策を考えるうえで重要です。
結婚支援だけを充実させればよいわけではありません。
第1子を持ちやすくする支援だけでも十分ではありません。
第2子、第3子を希望する家庭が、その希望を実現できる環境を整える必要があります。
少子化対策は、結婚前から子育てが終わるまで連続した政策として考える必要があります。
家族計画を長期的に支える必要がある
夫婦が子どもの人数を考えるときには、目の前の出産費用だけを見ているわけではありません。
住宅費があります。
教育費があります。
仕事を続けられるかという問題があります。
育児に使える時間も必要です。
自分たちの老後資金も準備しなければなりません。
20年、30年先まで考えて、何人なら育てられるのかを判断します。
だからこそ、一時的な給付だけでは家族計画を変えることが難しい場合があります。
将来の負担を予測できる社会であることが重要です。
結論
2025年の出生動向基本調査では、夫婦が予定する子どもの数が平均1.95人となり、集計開始以来初めて2人を下回りました。
一方、理想とする子どもの数は2.18人です。
理想と予定の間には0.23人の差があります。
その背景には、子育てや教育にかかる費用、年齢、育児の心理的、肉体的負担などがあります。
さらに、結婚期間が0年から4年の若い夫婦では、理想と予定の子どもの数がともに2人を下回っています。
日本の少子化は、結婚する人が減っているだけではありません。
結婚した夫婦が考える家族の人数そのものも小さくなっています。
未婚化対策と子育て支援を別々に考えるのではなく、結婚から第1子、第2子、その後の教育まで切れ目なく支えること。
予定子ども数が2人を割ったという数字は、日本の少子化対策が新しい段階に入っていることを示しているのだと思います。
参考
日本経済新聞 2026年9月12日 朝刊 一生結婚しない2割超
日本経済新聞 2026年9月12日 朝刊 生活不安で結婚ためらう 家庭築く準備、支援薄く