子どもは何人欲しいですかと聞かれたときに答える人数と、実際に何人の子どもを持つ予定ですかと聞かれたときに答える人数は、必ずしも同じではありません。
2025年の出生動向基本調査では、夫婦が理想とする子どもの数は平均2.18人でした。
一方、予定している子どもの数は平均1.95人です。
理想では2人を超えているのに、現実的な予定では2人を下回っています。
この0.23人の差を見ると、日本の少子化には単純な子ども離れだけでは説明できない問題があることが分かります。
理想子ども数とは何か
理想子ども数とは、夫婦にとって理想的だと考える子どもの人数です。
現実の所得や住宅、年齢などの制約を完全に切り離せるわけではありませんが、どの程度の家族規模を望んでいるのかを見るための数字です。
たとえば、理想としては子どもが2人欲しいと考えている夫婦がいるとします。
この段階では、実際に2人を持つ予定なのかどうかは別の問題です。
理想子ども数を見ることで、夫婦が望む家族像を知ることができます。
予定子ども数とは何か
予定子ども数は、現在いる子どもに今後持つ予定の子どもを加えて、最終的に何人の子どもを持つ予定なのかを表す数字です。
こちらは理想より現実に近い数字です。
収入はいくらあるのか。
住宅の広さは十分なのか。
夫婦とも仕事を続けられるのか。
年齢的にもう1人の出産を考えられるのか。
実際の生活条件を踏まえて判断するためです。
そのため、一般に理想子ども数より予定子ども数の方が少なくなることがあります。
2.18人と1.95人の差
2025年の調査では、理想子ども数が2.18人、予定子ども数が1.95人でした。
差は0.23人です。
一組の夫婦について0.23人の子どもがいるわけではありません。
社会全体を平均した結果です。
理想では3人でも予定は2人という夫婦もいれば、理想では2人でも予定は1人という夫婦もいます。
こうした積み重ねによって平均に差が生まれます。
この差は、欲しい人数と現実に持てると考える人数の間に隔たりがあることを示しています。
最大の理由は経済的な負担
なぜ理想と予定に差が生まれるのでしょうか。
2025年の調査では、理想の人数の子どもを持たない理由として、子育てや教育にお金がかかりすぎるという回答が52.9パーセントで最も多くなりました。
子どもが増えれば日々の生活費が増えます。
教育費も増えます。
家族が増えることで、より広い住宅が必要になる場合もあります。
現在の所得だけではなく、大学進学など十数年先の支出まで考えれば、もう1人欲しいという理想をそのまま予定にできない家庭が出てきます。
年齢という制約もある
2番目に多かった理由は、高年齢で生むのはいやだからという回答で35.0パーセントでした。
理想では2人や3人の子どもを希望していても、結婚や第1子の出産時期が遅くなれば、その人数を実現するための時間が短くなります。
第1子の育児が落ち着いてから第2子を考えようとしている間にも年齢は上がります。
つまり、晩婚化や晩産化は出生の時期を遅らせるだけではありません。
最終的に持てる子どもの人数にも影響する可能性があります。
育児負担も予定人数を変える
これ以上育児の心理的、肉体的負担に耐えられないという回答も27.8パーセントありました。
子どもが生まれる前に想像していた育児と、実際の育児は違うことがあります。
夜泣きへの対応があります。
保育園への送迎があります。
子どもが病気になれば仕事を休む必要があります。
食事、入浴、寝かしつけなども毎日続きます。
第1子を実際に育てることで、もう1人育てた場合の負担を具体的に想像できるようになります。
その結果、理想では2人でも予定は1人という判断になることがあります。
理想そのものも低下している
ここで注意したいのは、理想と予定の差だけではありません。
理想子ども数そのものも減っています。
2021年の調査では夫婦の理想子ども数は平均2.25人でしたが、2025年には2.18人となりました。
つまり、理想は変わらないのに現実だけが厳しくなっているわけではありません。
望む家族規模そのものも小さくなっています。
若い世代が現在の経済環境や働き方を前提として人生設計を考える中で、最初から少ない人数を理想とするようになっている可能性もあります。
若い夫婦では理想も2人を下回る
特に重要なのが、結婚期間0年から4年の夫婦です。
この層では理想と予定の子ども数がともに2人を下回りました。
これまでの少子化を、理想では2人欲しいが現実には持てない問題と考えるだけでは不十分になっています。
結婚したばかりの若い夫婦の段階で、理想とする人数そのものが2人を下回っているからです。
少子化対策では、希望を実現する支援と同時に、なぜ希望する人数自体が減っているのかを考える必要があります。
理想と予定の差は政策のヒントになる
理想子ども数と予定子ども数の差は、少子化対策を考えるうえで重要な手掛かりになります。
本当はもう1人欲しいのに、教育費が心配で諦める。
住宅が狭いため諦める。
仕事との両立が難しいため諦める。
こうしたケースであれば、政策によって制約を小さくする余地があります。
教育費、住宅、保育、働き方などを改善することで、予定子ども数を理想に近づけられる可能性があります。
少子化対策の一つの役割は、子どもの人数を政策によって決めることではなく、夫婦が希望する人数を実現する際の障害を減らすことだと考えられます。
結論
理想子ども数は夫婦が理想と考える子どもの人数であり、予定子ども数は現実の生活条件を踏まえて最終的に持つ予定の人数です。
2025年の出生動向基本調査では、理想子ども数は平均2.18人、予定子ども数は1.95人でした。
その差は0.23人です。
背景には、子育てや教育費、年齢、育児の心理的、肉体的負担などがあります。
しかし、現在は理想と予定の差だけを見るのでは十分ではありません。
理想子ども数そのものも低下しているからです。
少子化対策には二つの視点が必要になります。
子どもを望む夫婦が経済的、時間的な理由によって諦めなくてもよい環境をつくること。そして、若い世代がなぜ以前より小さな家族を理想とするようになっているのかを考えることです。
理想と予定という二つの数字を分けて見ることで、日本の少子化がどこで起きているのかが、よりはっきり見えてくるのだと思います。
参考
日本経済新聞 2026年9月12日 朝刊 一生結婚しない2割超
日本経済新聞 2026年9月12日 朝刊 生活不安で結婚ためらう 家庭築く準備、支援薄く