少子化というと、結婚しない人が増えていることや、第1子を持たない夫婦が増えていることに目が向きがちです。
しかし、もう一つ重要な問題があります。
第1子を持った夫婦が、第2子を持つことをためらう2人目の壁です。
2025年の出生動向基本調査では、夫婦が予定している子どもの数は平均1.95人となり、集計開始以来初めて2人を下回りました。
予定する子どもの数が2人以上の夫婦の割合も72.9パーセントと、調査開始以降で最低となりました。
少子化は結婚前だけでなく、すでに子どもを持つ家庭の中でも進んでいます。
2人目の壁とは何か
2人目の壁とは、第1子を持つことはできても、様々な事情から第2子を持つことをためらったり、諦めたりする状況を表す言葉です。
第1子を育てて初めて分かることがあります。
子育てにはどの程度のお金がかかるのか。
どの程度の時間が必要なのか。
仕事と育児を両立することがどれほど大変なのか。
子どもが生まれる前には想像だったものが、第1子の誕生後には現実になります。
その経験を踏まえて第2子を考えるため、判断が慎重になることがあります。
予定する子どもの数が2人を下回った
2025年の調査で、夫婦が理想とする子どもの数は平均2.18人でした。
一方、予定する子どもの数は1.95人です。
理想では2人を超えているのに、実際の予定では2人を下回っています。
この差は重要です。
すべての夫婦が理想通りの人数を持とうとしているわけではありません。
本当はもう1人欲しいと思っていても、家計や年齢、仕事、育児負担などを考えて予定する人数を減らしている家庭があることを示しています。
第1子を育てると費用が具体的に見える
第1子が生まれる前には、子育て費用を具体的に想像することは難しいものです。
実際に育て始めると、日々の生活費だけでなく、様々な支出が発生することが分かります。
さらに将来を考えれば、保育、学校、塾や習い事、大学進学などの費用があります。
2025年の調査では、理想の人数の子どもを持たない理由として、子育てや教育にお金がかかりすぎるという回答が52.9パーセントで最も多くなりました。
第1子にどれだけのお金が必要なのかが分かれば、第2子を持った場合の家計も想像しやすくなります。
その結果、もう1人分の費用を負担できるのかという問題が現実味を帯びてきます。
住宅も2人目の壁になる
第1子の誕生時には現在の住宅で生活できても、第2子が生まれると手狭になることがあります。
そうなれば、広い賃貸住宅への引っ越しや住宅購入を考える必要があります。
子どもが1人増えることで増えるのは、食費や教育費だけではありません。
住宅費そのものが一段上がる可能性があります。
都市部では住宅価格や家賃が上昇しています。
広い住宅を求めて郊外へ移れば、今度は通勤時間が長くなる場合があります。
第2子を持つという判断が住宅と働き方の問題にまで広がるのです。
お金だけではなく時間が足りない
2人目の壁には、経済的な問題だけではなく時間の問題があります。
子どもが1人でも、朝の準備、保育園への送迎、食事、入浴、寝かしつけなど多くの時間が必要です。
子どもが病気になれば、仕事を休んだり早退したりする必要もあります。
そこへ第2子が加われば、育児負担はさらに大きくなります。
共働きで世帯所得を維持できたとしても、育児に使える時間が足りなければ第2子を持つことは難しくなります。
少子化を所得だけの問題として考えられない理由です。
家事育児が一方に偏れば負担はさらに重くなる
特に問題になるのが、夫婦間の家事や育児の分担です。
男性が長時間働き、女性に家事や育児が集中すれば、第1子だけでも大きな負担になります。
第2子を持てば、その負担はさらに増えます。
女性が仕事を続ける場合には、自分のキャリアへの影響も考えなければなりません。
出産や育児による休業や短時間勤務が何度も続けば、昇進や所得に影響するのではないかという不安を持つこともあります。
第2子の問題は家庭内の負担だけではなく、働き方や企業の人事制度にも関係します。
年齢も2人目の壁になる
2025年の調査では、理想の人数の子どもを持たない理由として、高年齢で生むのはいやだからという回答が35.0パーセントでした。
結婚や第1子の出産年齢が上がれば、第2子を考える時期も遅くなります。
第1子の育児が少し落ち着いてから第2子を考えようとしているうちに、年齢への不安が大きくなることがあります。
晩婚化と晩産化は、第1子だけではなく第2子以降の出生にも影響します。
結婚年齢が上がるほど、希望する人数の子どもを持つために使える時間が短くなるという問題があります。
第1子支援だけでは十分ではない
少子化対策では、出産時の支援や保育サービスなどが重要です。
しかし、第1子を持つことができれば問題が解決するわけではありません。
第2子、第3子を希望する家庭が、その希望を実現できる環境も必要です。
教育費を長期的に見通せること。
家族の人数に合った住宅を確保できること。
夫婦とも仕事を続けられること。
家事や育児を夫婦で分担できる働き方であること。
こうした条件がそろわなければ、第1子を持った後に子どもの人数を抑える家庭が増える可能性があります。
2人目の壁は少子化の構造変化を示している
日本の少子化には複数の段階があります。
結婚する人が減る。
結婚しても第1子を持たない。
第1子を持っても第2子を持たない。
さらに第3子を持つ家庭が減る。
それぞれ原因が同じとは限りません。
結婚前には所得や住居が大きな問題でも、第1子誕生後には育児の大変さや仕事との両立がより重要になることがあります。
少子化対策も、それぞれの段階に応じて考える必要があります。
結論
2025年の出生動向基本調査では、夫婦が予定する子どもの数が平均1.95人となり、初めて2人を下回りました。
予定する子どもの数が2人以上の夫婦の割合も72.9パーセントと過去最低となっています。
第1子を持てても、第2子を持つことには新たな壁があります。
教育費、住宅費、育児時間、仕事との両立、夫婦の家事育児分担、そして年齢です。
重要なのは、夫婦が理想とする子どもの数は平均2.18人であり、予定する1.95人との間に差が残っていることです。
少子化対策では、子どもを産むか産まないかという最初の選択だけを見るのでは十分ではありません。
本当はもう1人欲しいという家庭が、経済的負担や時間不足を理由に諦めなくてもよい環境をつくること。
2人目の壁を低くすることも、日本の少子化を考えるうえで重要な課題なのだと思います。
参考
日本経済新聞 2026年9月12日 朝刊 一生結婚しない2割超
日本経済新聞 2026年9月12日 朝刊 生活不安で結婚ためらう 家庭築く準備、支援薄く