高齢者や障害者、低所得者などのなかには、賃貸住宅を借りたくても大家から入居を敬遠される人がいます。
大家側にも事情があります。家賃を滞納しないか、一人暮らしの高齢者に異変が起きたとき誰が対応するのか、亡くなったことに長期間気づかなかったらどうするのかといった不安があるからです。
そこで2025年10月に始まったのが「居住サポート住宅」の認定制度です。
住宅を提供するだけではなく、入居後の安否確認や生活支援まで組み合わせることで、住宅を借りにくい人と貸すことに不安を持つ大家の双方を支える仕組みです。
居住サポート住宅とは何か
居住サポート住宅は、高齢者や障害者など住宅の確保に配慮が必要な人に対して、居住支援を提供する賃貸住宅です。
ポイントは、単に高齢者などの入居を受け入れる住宅というだけではないことです。
住宅と支援を組み合わせています。
高齢者が部屋を借りることができても、その後に一人で安心して暮らせなければ問題は解決しません。
反対に大家から見ても、入居させた後のすべての問題に自分だけで対応しなければならないのであれば、高齢者などへの賃貸に慎重になるでしょう。
そこで大家と居住支援法人などが連携し、入居後の生活を支える仕組みをつくります。
住宅政策と福祉政策をつなぐ制度と考えると分かりやすいでしょう。
2025年10月に制度が始まった
居住サポート住宅の認定制度は、改正住宅セーフティネット法に基づいて2025年10月に始まりました。
背景にあるのは、単身世帯の増加です。
特に一人暮らしの高齢者は今後さらに増えると予想されています。
2020年には65歳以上の一人暮らしが約672万人でしたが、2040年には1000万人を超えると推計されています。
これまで高齢者の生活を支えてきた家族が、同じ家に住んでいるとは限らなくなります。
その一方で、大家が孤独死などを心配して高齢者への賃貸に慎重になれば、住む場所を確保できない高齢者が増える可能性があります。
住宅は生活の土台です。
住む場所が確保できなければ、医療や介護、生活支援といった他のサービスも安定して利用することが難しくなります。
そのため住宅を確保する段階から、生活支援を組み込む必要性が高まっています。
1日1回以上の安否確認
居住サポート住宅で重要になるのが安否確認です。
入居者について、1日1回以上の安否確認を行うことが求められます。
一人暮らしの高齢者にとって大きなリスクの一つは、室内で体調を崩したときに誰にも気づいてもらえないことです。
亡くなった場合にも、発見まで長期間かかれば孤独死を巡る問題が大きくなります。
毎日何らかの形で安否を確認できれば、異変を早期に発見できる可能性が高まります。
ただし、すべての入居者の自宅を毎日人が訪問する必要があるとは限りません。
ここで活用できるのがICTです。
ICTなら毎日の見守りを支えられる
例えば電球の点灯や消灯を確認する仕組みがあります。
毎日利用する場所の電球が長時間使われていなければ、生活に何らかの異変が起きている可能性があります。
人感センサーで室内の動きを確認したり、ドアの開閉状況や家電製品の使用状況を確認したりする方法もあります。
こうした仕組みなら、高齢者が毎日特別な操作をする必要はありません。
普通に生活すること自体が安否確認になります。
また、カメラで室内を常時撮影する方法に比べれば、プライバシーへの抵抗感も小さくできます。
単身高齢者が増えていくなか、すべての人を人手だけで毎日確認することには限界があります。
日常的な確認はICTで行い、異変があった場合には人が対応するという役割分担が重要になります。
大家だけに責任を負わせない
居住サポート住宅のもう一つの重要な点は、大家だけに高齢者の生活支援を任せないことです。
通常の賃貸住宅では、大家や管理会社は住宅を管理します。
しかし入居者の生活全般を支援する専門家ではありません。
一人暮らしの高齢者に異変があった場合、誰へ連絡すればよいのか分からないこともあります。
そこで居住支援法人などが関わります。
住宅を貸す人と生活を支援する人の役割を分け、それぞれが連携します。
大家にとっては、何か起きたときに相談できる相手がいることになります。
これは高齢者への賃貸に対する不安を減らすうえで重要です。
居住支援法人が入居者を支える
居住支援法人は、住宅を確保することが難しい人を支援する法人です。
物件探しや入居手続きだけでなく、入居後の見守りや生活相談などに関わる場合があります。
高齢者にとって重要なのは、住宅を借りる瞬間だけ支援してもらうのではなく、その後の生活まで支援につながることです。
例えば体調が悪化した場合には医療や福祉につなぐ必要があるかもしれません。
生活上の問題が起きた場合には、適切な支援機関との連携が必要になることもあります。
住宅を貸して終わりではなく、住み続けられるところまで支えるという考え方です。
高齢者と大家の双方にメリットがある
居住サポート住宅は、高齢者だけを守る制度ではありません。
大家側にもメリットがあります。
高齢者に部屋を貸すときに大きな不安となる孤独死についても、日常的な安否確認があれば発見が長期間遅れるリスクを減らせます。
生活上の問題についても、居住支援法人などと連携できます。
つまり高齢者を受け入れることで生じるリスクを、大家一人で抱え込まなくてよくなるわけです。
高齢者に「貸してください」と求めるだけでは、住宅問題はなかなか解決しません。
貸す側にも安心できる仕組みを用意することが必要です。
住宅と福祉を別々に考えられなくなる
従来、住宅政策と福祉政策は別々のものとして考えられがちでした。
住宅政策は住む場所を確保するもの、福祉政策は生活を支援するものという考え方です。
しかし単身高齢者が増えると、この二つを切り離すことが難しくなります。
部屋だけ提供しても、一人暮らしを続けることが難しい人がいます。
逆に福祉サービスが充実していても、安心して住める住宅がなければ生活は安定しません。
そこで住まいを起点に見守りや生活支援を組み合わせる発想が重要になります。
居住サポート住宅は、住宅と福祉を一体で考える方向への転換を象徴する制度ともいえます。
結論
居住サポート住宅とは、高齢者や障害者など住宅を確保することが難しい人に対して、住まいと居住支援を組み合わせて提供する仕組みです。
2025年10月に認定制度が始まり、1日1回以上の安否確認などを通じて入居後の生活まで支えることが大きな特徴です。
重要なのは、高齢者だけを支援する制度として考えないことです。
大家にとっても、見守りや居住支援を組み合わせることで、高齢者へ住宅を貸すことに伴う不安を減らすことができます。
単身高齢者が増える社会では、家族が近くにいることを前提にした住宅の仕組みだけでは対応できません。
住宅を確保し、ICTなどで日常を見守り、異変があれば人が支援する。
これからの高齢社会では、単に「住める住宅」を増やすだけではなく、「安心して住み続けられる住宅」を増やすことが重要になっていくでしょう。
参考
日本経済新聞 2026年9月10日 朝刊 単身高齢者見守るICT 手ごろな機器でサービス続々
日本経済新聞 2026年9月10日 朝刊 高齢者見守りサービスとは