外貨預金とオルカンは何が違うのか 同じ海外資産でもリスクの中身が違う理由編

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円だけで資産を持つことへの不安から、海外資産へお金を移す人が増えています。

その代表的な選択肢として、外貨預金と海外株式へ投資する投資信託があります。

なかでも個人投資家に広く利用されているのが、全世界の株式へ分散投資する投資信託です。

代表的な商品であるeMAXIS Slim 全世界株式、いわゆるオルカンは、日本を含む世界各国の株式へ幅広く投資します。

外貨預金もオルカンも、円だけに資産を集中させないという意味では似ているように見えます。

しかし、リスクの中身は大きく異なります。

外貨預金は主として外国通貨を保有する商品です。

一方、オルカンは世界中の企業の株式へ投資する商品です。

そのため外貨預金では主に為替相場が重要になりますが、オルカンでは株価と為替相場の両方が資産価値に影響します。

海外資産という言葉だけで同じものとして考えないことが重要です。

外貨預金は通貨を保有する商品

外貨預金は、円を米ドルやユーロなどの外国通貨へ交換して銀行へ預ける商品です。

例えば150万円を1ドル150円で米ドルへ交換すれば、為替手数料などを考えなければ1万ドルになります。

この1万ドルを米ドル預金として保有します。

外貨預金から得られる収益の一つが預金利息です。

そして円で資産価値を見る場合には、為替相場も大きく影響します。

1ドル150円から160円へ円安になれば、1万ドルの円換算額は150万円から160万円へ増えます。

反対に1ドル140円まで円高になれば140万円になります。

外貨預金では、

預金金利

為替変動

が主な収益や損失の要因になります。

外貨を持っているからといって、企業の成長そのものへ投資しているわけではありません。

オルカンは世界の企業へ投資する商品

オルカンは通貨そのものを預金として保有する商品ではありません。

日本を含む世界各国の株式へ幅広く投資する投資信託です。

投資家から集めた資金によって世界各国の企業の株式などを保有します。

つまりオルカンを購入するということは、間接的に世界中の企業の株主になることを意味します。

企業が成長し、利益が増え、株式市場で企業価値が高く評価されれば株価上昇が期待できます。

反対に企業業績が悪化したり、世界的な株価下落が起きたりすれば、投資信託の基準価額も下落する可能性があります。

ここが外貨預金との根本的な違いです。

外貨預金は通貨を保有します。

オルカンは世界の企業を保有します。

同じ海外資産でも、何にお金を投じているのかが違うのです。

オルカンの中身は米国株が大きな割合を占める

全世界株式という名前から、世界中の国へ同じ割合で投資していると思う人もいるかもしれません。

しかし実際にはそうではありません。

オルカンが連動を目指す指数では、各国の株式市場の規模などを反映して投資割合が決まります。

世界の株式市場では米国企業の時価総額が非常に大きいため、米国株が全体の大きな割合を占めます。

そのため全世界株式へ投資していても、米国株式市場の動向から大きな影響を受けます。

ただし米国株だけではありません。

日本や欧州、新興国など世界各国の企業にも投資します。

一つの国や一つの企業だけへ投資する場合と比べれば、地域や企業を幅広く分散できることが特徴です。

外貨預金には株価変動がない

外貨預金とオルカンの大きな違いの一つが株価変動です。

例えば1万ドルを外貨預金として持っている場合、利息などを考えなければドルベースでは1万ドルです。

米国株式市場が20%下落したからといって、それだけを理由に1万ドルの預金元本が8000ドルになるわけではありません。

一方、オルカンは株式へ投資しています。

世界の株式市場が大きく下落すれば、投資信託の基準価額も大きく下落する可能性があります。

金融危機や景気後退などによって世界的な株安になれば、短期間で資産価値が大きく減少することも考えられます。

したがって価格変動という意味では、外貨預金と株式投資信託はまったく同じ商品ではありません。

預金と株式という違いを理解する必要があります。

オルカンには為替変動も影響する

一方、オルカンには外貨預金と共通するリスクもあります。

為替変動です。

海外の株式へ投資する場合、米国株ならドル、欧州株ならユーロなど、それぞれの通貨で資産価値が形成されています。

日本の投資家が円で投資信託の基準価額を見る場合、それらの海外資産を円へ換算する必要があります。

そのため海外株式の価格が変わらなくても、円安になれば円換算した資産価値を押し上げる方向に働くことがあります。

反対に円高になれば、円換算した資産価値を押し下げる方向に働きます。

つまりオルカンでは、

株価変動

為替変動

という二つの大きな要因が基準価額に影響します。

外貨預金より値動きの要因が多いのです。

株価上昇と円高が同時に起きたらどうなるのか

オルカンの値動きを考えるときに難しいのが、株価と為替が別々に動くことです。

例えば米国株が10%上昇したとします。

株価だけを見れば資産価値は増える方向です。

しかし同じ時期に大幅な円高が進めば、ドル建て資産を円へ換算した価値は減少する方向に働きます。

株高によるプラスを円高によるマイナスが一部打ち消す可能性があります。

反対に株価が下落しても、急激な円安になれば円換算した下落率が小さくなる場合があります。

もちろん実際のオルカンは米国だけではなく複数の国へ投資しているため、さらに多くの市場や通貨の動きが関係します。

このように海外株式投資では、

企業価値の変化

通貨価値の変化

を分けて考える必要があります。

外貨預金は円安になれば必ず増えるのか

外貨預金については、円安になれば円換算額が増えるという関係が比較的分かりやすいものです。

例えば1万ドルを保有していれば、

1ドル150円なら150万円

1ドル160円なら160万円

となります。

ドルの金額が同じなら、円安になるほど円換算額は増えます。

オルカンではこれほど単純ではありません。

円安になっても、世界の株価がそれ以上に下落すれば基準価額が下がる可能性があります。

逆に円高になっても、世界の株価が大きく上昇すれば基準価額が上昇する可能性があります。

外貨預金は主として為替相場を見る商品ですが、オルカンでは為替だけで損益を説明できません。

長期の資産形成では何が違うのか

外貨預金とオルカンでは、長期保有した場合に期待する収益の源泉も違います。

外貨預金では主に預金利息を受け取ります。

さらに円安になれば円換算した資産価値が増える可能性があります。

しかし通貨そのものが企業のように利益を生み出して成長するわけではありません。

一方、株式投資では企業が事業を行い、利益を生み、その利益を再投資することで企業価値が成長する可能性があります。

長期的な株式投資では、この企業の利益成長が重要な収益源になります。

そのため長期の資産形成という観点では、

外貨を保有すること

世界の企業へ投資すること

を分けて考える必要があります。

円安への備えとして外貨を持つことと、長期的な企業成長から収益を得ることは同じ目的ではありません。

オルカンなら通貨分散もできるのか

オルカンは世界各国の株式へ投資するため、結果として複数の通貨に関係する資産を保有することになります。

米国企業ならドル、欧州企業ならユーロなど、世界の様々な通貨と関係します。

その意味では、円だけの資産を保有する場合と比べて通貨面でも分散されます。

ただし通貨の比率を自分で自由に決める商品ではありません。

ドルを何%、ユーロを何%というように、自分で通貨配分を決めて保有する外貨預金とは考え方が違います。

また世界の株式市場で米国株の割合が大きければ、米ドルに関係する資産の影響も大きくなります。

全世界という名前だけで通貨リスクが完全に均等に分散されていると考えるのは適切ではありません。

外貨預金とオルカンは競争相手ではない

外貨預金とオルカンを比べると、

どちらを買えばよいのか

という二者択一で考えたくなるかもしれません。

しかし両者はそもそも役割が違います。

外貨預金は外貨を保有する手段です。

オルカンは世界の株式へ投資する手段です。

例えば将来ドルで使う予定の資金であれば、ドル預金として保有する意味があります。

一方、10年や20年という長期間で世界経済や企業の成長から収益を得たいのであれば、株式投資信託という考え方があります。

資産全体では、

円預金

外貨預金

国内外の株式

債券

などを目的に応じて組み合わせることもできます。

重要なのは一つの商品ですべての目的を満たそうとしないことです。

円から資産を分散する意味も違う

今回、外貨預金が急増している背景には、円の先安観から家計や企業が資産を外貨へ分散する動きがあります。

同時に個人投資家はNISAなどを通じて海外株式へも多額の資金を投じています。

どちらも結果として円以外の資産を増やす動きですが、その意味は異なります。

外貨預金への分散は、

どの通貨でお金を持つのか

という通貨分散の性格が強くなります。

オルカンへの投資は、

世界のどの企業へ資本を投じるのか

という株式投資の性格が中心です。

同じ海外資産への資金移動でも、目的とリスクを分けて考える必要があります。

結論

外貨預金とオルカンは、どちらも円だけに資産を集中させない方法として利用できます。

しかし中身は大きく異なります。

外貨預金は米ドルやユーロなど外国通貨を銀行へ預ける商品です。

主な収益は預金利息であり、円換算した資産価値には為替相場が大きく影響します。

一方、オルカンは日本を含む世界各国の企業の株式へ投資する投資信託です。

そのため株価変動と為替変動の両方から影響を受けます。

さらに長期的な収益の源泉にも違いがあります。

外貨預金では預金金利や為替変動が重要ですが、株式投資では企業が利益を生み、成長していくことが重要な収益源になります。

外貨預金とオルカンの違いは、単に安全性や利回りを比較するだけでは見えてきません。

外貨を持ちたいのか、それとも世界の企業へ投資したいのか。

円から海外へ資産を分散する場合でも、その目的を明確にすることが重要です。

同じ海外資産という言葉の中に、通貨を保有することと企業を保有することという大きく異なる二つの投資が存在しているのです。

参考

日本経済新聞 2026年8月21日 朝刊 外貨預金の伸び最大 家計・企業、円から資産分散

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