オンライン診療では、医師と患者が同じ診察室にいません。
そこで対面診療以上に重要になるのが、画面の向こうにいる人が本当に受診する本人なのかを確認することです。
医師が別人を患者本人だと思って診察してしまえば、過去の病歴や薬の情報を取り違える可能性があります。健康保険を別人が利用するなりすましにもつながりかねません。
さらにオンライン診療では、患者だけでなく診察する医師が本人であることを確認することも重要です。
オンライン診療の本人確認は、単なる受付手続きではありません。
診察する人、診察される人、健康保険の資格、医療情報を正しく結び付けるための医療安全の土台なのです。
なぜ本人確認が必要なのか
医療では、誰を診察しているのかを正確に把握する必要があります。
患者ごとに、
年齢
既往歴
アレルギー
現在服用している薬
過去の検査結果
治療歴
などが違うからです。
患者を取り違えれば、本来とは違う医療情報を基に診断や処方をしてしまう危険があります。
対面診療では患者が医療機関を訪れ、受付や診察室で本人確認を行えます。
オンライン診療では患者が遠隔地にいるため、デジタル環境に対応した本人確認が必要になります。
オンラインでは患者と医師が離れている
オンライン診療では、スマートフォンやパソコンなどを通じて診察します。
便利な反面、対面なら自然に確認できる情報が少なくなる場合があります。
例えば長年通っている診療所なら、医師や看護師が患者の顔を知っていることがあります。
初診のオンライン診療では、医師が患者と一度も直接会ったことがないケースがあります。
画面に映っている人物が、予約した患者本人なのかを適切に確認しなければなりません。
特にオンライン診療の初診が可能になったことで、本人確認の重要性はさらに高まっています。
なりすましを防ぐ必要がある
本人確認が必要な理由の一つが、なりすましの防止です。
例えば別人の健康保険資格を利用して医療を受けようとするケースが考えられます。
医療では診察だけでなく、薬が処方される場合があります。
別人になりすまして診察を受ければ、その人の医療記録に誤った情報が残る可能性もあります。
その後、本来の本人が医療機関を受診したときに、誤った診療情報が医師の判断に影響することも考えられます。
本人確認は医療費の不正利用を防ぐだけではありません。
患者の医療記録を正しく管理するためにも必要です。
保険資格の確認とは何か
本人確認とともに必要になるのが保険資格の確認です。
健康保険を使って診療を受けるためには、その患者がどの公的医療保険に加入しているのかなどを確認する必要があります。
従来は健康保険証などを医療機関の窓口で提示する方法が一般的でした。
医療のデジタル化に伴い、マイナ保険証を利用したオンライン資格確認が医療機関や薬局で利用されています。
本人を確認することと、その人が利用できる保険資格を確認することは関連していますが、意味は同じではありません。
本人確認は、
あなたは誰ですか
を確認するものです。
保険資格確認は、
その人がどのような保険資格を持っているのか
を確認するものです。
両方を正しく行う必要があります。
マイナ保険証との関係
マイナ保険証とは、健康保険証として利用登録したマイナンバーカードを利用して保険診療を受ける仕組みです。
医療機関や薬局ではオンライン資格確認の仕組みを通じて、患者の保険資格を確認できます。
オンライン診療でも、患者が医療機関の窓口に直接立ち寄らないため、本人と保険資格を適切に確認できる仕組みが重要になります。
医療DXが進むことで、
本人
保険資格
診療情報
処方情報
をデジタル上で適切につなぐことの重要性が高まっています。
オンライン診療は単なるビデオ通話ではありません。
診療の前後を含めた医療情報の管理が必要です。
初診では本人確認が特に重要になる
以前のオンライン診療は、対面診療を受けたことがある患者の再診を中心に利用されていました。
医師がすでに患者を知っていれば、本人確認もしやすくなります。
その後、新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに初診からのオンライン診療が広がり、2022年度には恒久的な仕組みとなりました。
初診では、医師と患者が初めて会います。
しかもオンラインなら一度も同じ場所で会わないまま診察が始まる可能性があります。
だからこそ、
患者本人なのか
どのような医療情報を持つ患者なのか
健康保険の資格はどうなっているのか
などを適切に確認する必要があります。
医師側の本人確認も重要になる
オンライン診療では患者だけを確認すればよいわけではありません。
患者から見れば、画面の向こうにいる人物が本当に医師なのかという問題があります。
対面診療なら病院や診療所という場所そのものが一定の安心材料になります。
オンラインでは医師が別の場所から診察する場合があります。
そのためオンライン診療では、患者が医師の身分などを確認できることも重要です。
オンライン化によって患者だけに本人確認を求めるのではなく、医療を提供する側についても透明性を確保する必要があります。
来院型オンライン診療では確認方法が変わる
オンライン診療には、自宅から受診する方法だけでなく、患者が病院やオンライン診療受診施設などへ行って診察を受ける方法があります。
来院型の場合には、患者のそばに看護師や施設のスタッフなどがいる場合があります。
例えば岩国市医療センター医師会病院では、患者が救急外来を訪れ、看護師が立ち会って離れた場所の医師によるオンライン診療を受けます。
このような形では、患者が完全に一人でオンライン診療を受ける場合とは環境が異なります。
一方で、診察する医師は遠隔地にいます。
患者、看護師、医師、医療記録を正しく結び付ける運用が必要になります。
子どもの場合は保護者との関係も重要になる
小児オンライン診療では、本人確認にもう一つの要素が加わります。
保護者です。
幼い子どもは、自分一人でオンライン診療の申し込みや医療上の説明をすることができません。
保護者が申し込み、診察に付き添うことになります。
そのため、
診察を受ける子どもは誰なのか
付き添っている人は誰なのか
どのような関係なのか
を適切に確認する必要があります。
特にオンラインでは、予約した人、診察を受ける人、決済を行う人などが必ずしも同一とは限りません。
小児医療ではこうした関係を整理することも重要になります。
本人確認は処方にもつながる
オンライン診療では、診察後に薬が処方されることがあります。
そのため本人確認の問題は診察だけで終わりません。
医師が処方する。
処方情報が薬局へつながる。
薬剤師が服薬指導をする。
患者が薬を受け取る。
という一連の流れがあります。
最初の患者確認が間違っていれば、その後の処方や調剤にも影響する可能性があります。
電子処方箋やオンライン服薬指導が普及するほど、診察から薬の受け取りまで同じ患者の情報を正確につなぐ必要があります。
医療DXでは本人を軸に情報がつながる
医療のデジタル化では、さまざまな仕組みが連携していきます。
オンライン資格確認があります。
電子処方箋があります。
オンライン診療があります。
オンライン服薬指導があります。
それぞれが別々に動くだけでは十分ではありません。
重要なのは、同じ患者の情報として正確につながることです。
本人確認が適切に行われて初めて、
この人の保険資格
この人の診療情報
この人の処方情報
この人の薬の情報
として扱うことができます。
本人確認は医療DX全体を支える入口といえます。
利便性と安全性の両立が必要になる
本人確認を厳格にすればするほど安全になるようにも思えます。
しかし、手続きが複雑になりすぎればオンライン診療の利便性が低下します。
高齢者など、デジタル機器の操作に慣れていない患者が利用しにくくなる可能性もあります。
オンライン診療のメリットは、医療機関への移動が難しい人でも医師につながりやすくなることです。
本人確認のために複雑な操作を何度も要求すれば、そのメリットが失われることがあります。
安全性を確保しながら、患者が利用しやすい本人確認の仕組みをつくることが重要になります。
結論
オンライン診療の本人確認とは、画面の向こうにいる患者が本当に受診する本人なのかを適切に確認する仕組みです。
オンラインでは医師と患者が同じ場所にいないため、対面診療とは異なる方法で本人を確認する必要があります。
本人確認を誤れば、別人の病歴や薬の情報を基に診療してしまったり、医療記録を取り違えたりする可能性があります。
健康保険のなりすまし利用を防ぐという意味でも重要です。
さらに本人確認と保険資格確認は同じものではありません。
患者本人を確認したうえで、その人がどのような保険資格を持っているのかを確認する必要があります。
マイナ保険証やオンライン資格確認など医療DXが進むことで、本人、保険資格、診療情報、処方情報をデジタル上で正しく結び付ける重要性は一段と高まっています。
また、オンライン診療では患者だけでなく、患者から医師を確認できることも重要です。
小児オンライン診療なら、子ども本人と付き添う保護者との関係も考える必要があります。
オンライン診療は、単に医師と患者をビデオ通話でつなぐ仕組みではありません。
画面の向こうにいる人が誰なのかを確認し、その人の正しい医療情報と保険資格を結び付け、安全に診察や処方へつなげる必要があります。
医療が場所からデジタルネットワークへ広がるほど、本人確認はオンライン医療を安全に成り立たせるための重要な土台になるのです。
参考
日本経済新聞 2026年8月22日 朝刊 進化するオンライン診療 看護師立ち会い、検査や処置
日本経済新聞 2026年8月22日 朝刊 駅で受診可能に