日本で暮らす外国人にとって、国民年金保険料の納付は社会保障だけの問題ではなくなろうとしています。
2027年6月から、在留資格の審査に国民年金保険料の納付状況が加味される予定だからです。
これまで国民年金への加入や保険料納付と、外国人の在留資格は別々の制度として意識されることが多くありました。
しかし、今後は出入国在留管理庁がマイナンバーによる情報連携を通じて年金保険料の納付状況を把握し、在留審査に活用する方向です。
外国人本人にとって重要なのは、単に保険料を払っているかどうかだけではありません。
収入が少なく保険料を払えない場合には、免除や納付猶予などの正式な手続きをしているかどうかも重要になります。
外国人にも国民年金の加入義務がある
日本国内に住所を持つ20歳以上60歳未満の人は、原則として国籍にかかわらず国民年金の対象になります。
外国人だから加入しなくてもよいという制度ではありません。
ただし、会社などで厚生年金に加入している外国人は、自分で国民年金保険料を納める必要はありません。
厚生年金の加入者は国民年金の第2号被保険者となり、厚生年金保険料を通じて基礎年金部分もカバーされるためです。
問題になりやすいのは、厚生年金に加入しておらず、自分で国民年金保険料を納める必要がある外国人です。
留学生や一定の働き方をしている外国人などが該当することがあります。
外国人の国民年金納付率は低い
外国人の国民年金については、日本人を含めた全体と比べて納付率が低いことが課題になっています。
2023年度の外国人の最終納付率は55.0%でした。
2022年度の49.7%からは改善しましたが、日本人を含めた全体の85.6%とは大きな差があります。
背景には、日本の年金制度そのものを十分に知らないこと、言語の壁があること、短期間で帰国する外国人にとって年金を受け取るメリットを実感しにくいことなどがあります。
こうした状況を受け、外国人の社会保険料納付を在留管理とも結び付けていく動きが進んでいます。
2027年6月から在留審査に納付状況を加味する
大きな転換となるのが、2027年6月から予定されている仕組みです。
外国人の在留資格を審査する際、国民年金保険料の納付状況も加味されることになります。
出入国在留管理庁がマイナンバーを利用した情報連携によって納付状況を把握する方向です。
これによって、外国人本人が年金保険料を適切に納付しているかどうかを、在留審査の際に行政側が確認しやすくなります。
国民年金の納付記録が、年金制度の内部だけにとどまらず、在留管理にも関係する情報になるということです。
在留資格と社会保険料の関係が強まる
外国人が日本で生活するためには、在留資格に応じた活動を行い、在留期間の更新など必要な手続きを行います。
その際、日本で生活するうえで守るべき法令を適切に守っているかという点も重要になります。
社会保険制度への適切な加入や保険料の納付も、その一つとして位置付けられていくことになります。
外国人材を受け入れるのであれば、日本人と同様に社会保障制度へ参加してもらうという考え方です。
特に長期間日本で生活する外国人にとって、社会保険料の納付状況を適切に管理する重要性は一段と高まります。
マイナンバーによる情報連携が進む
今回の仕組みで重要なのがマイナンバーです。
これまで行政機関ごとに管理されていた情報について、マイナンバーを利用した情報連携が進められています。
年金保険料については日本年金機構が納付記録を管理しています。
一方、外国人の在留資格については出入国在留管理庁が審査します。
情報連携によって、出入国在留管理庁が必要な納付状況を把握できるようになれば、外国人本人に証明書類を提出してもらうことだけに頼らず、行政側で確認できる範囲が広がります。
外国人の社会保険加入を実効性のあるものにするうえで、行政機関同士の情報連携が重要になっています。
未納と免除は同じではない
外国人本人が特に注意したいのが、未納と免除を混同しないことです。
国民年金保険料を納めていないという結果だけを見ると同じように見えますが、制度上の意味はまったく異なります。
所得が少ないなど一定の要件を満たす場合には、申請によって国民年金保険料の全部または一部について免除を受けられる場合があります。
正式に免除が承認されれば、単に保険料を放置している未納とは異なります。
払うことが難しいのであれば、何もしないのではなく、利用できる制度があるかを確認することが重要です。
納付猶予という制度もある
国民年金には保険料免除だけではなく、納付猶予という制度もあります。
一定の年齢や所得などの要件を満たす人について、申請によって保険料の納付を猶予する仕組みです。
納付猶予が承認された期間は、何の手続きもしない未納期間とは異なり、老齢基礎年金の受給資格期間などを考えるうえで意味を持ちます。
外国人についても、要件を満たせばこうした制度を利用できます。
日本の年金制度を知らないために、利用できる制度があるにもかかわらず未納になってしまうことを防ぐ必要があります。
外国人留学生には学生納付特例がある
外国人留学生の場合には、学生納付特例も重要です。
日本国内に住む20歳以上の外国人留学生も原則として国民年金の対象になります。
しかし、学生で所得が一定以下であれば、申請によって在学中の保険料納付を猶予してもらえる場合があります。
学生納付特例の承認を受けていることと、何も手続きをせず保険料を払っていないことは異なります。
留学生については、年金保険料を払えない場合に納付書を放置するのではなく、学生納付特例を利用できるか確認することが重要になります。
未納を放置するリスクが大きくなる
これまでも国民年金保険料を未納のままにすることには問題がありました。
将来の老齢年金だけでなく、障害年金や遺族年金の保険料納付要件に影響する可能性があるためです。
今後は外国人について、在留審査との関係も加わります。
したがって、納付書が届いているにもかかわらず、制度が分からないからそのまま放置するという対応は、これまで以上に避ける必要があります。
納付するのか、免除を申請するのか、納付猶予や学生納付特例を利用するのか、自分の状況に応じた正式な手続きを取ることが重要です。
外国人本人が確認しておきたいこと
外国人本人は、まず自分がどの年金制度に加入しているかを確認する必要があります。
勤務先を通じて厚生年金に加入しているのか、自分で国民年金保険料を納める第1号被保険者なのかによって手続きが違います。
国民年金の対象であれば、保険料が適切に納付されているかを確認します。
経済的な事情で納付できない場合には、免除や納付猶予、学生であれば学生納付特例などを利用できないか確認することになります。
転居した場合には住所に関する手続きを適切に行い、日本年金機構などからの通知を受け取れる状態にしておくことも重要です。
会社側にも適切な社会保険手続きが求められる
在留資格と社会保険料の関係が強まれば、外国人を雇用する会社にとっても無関係ではありません。
外国人従業員が厚生年金の加入要件を満たしているにもかかわらず、会社が適切な資格取得手続きをしていなければ問題になります。
外国人だから社会保険に加入させなくてもよいということはありません。
原則として日本人と同じ基準で適用を判断する必要があります。
外国人本人だけでなく、雇用する企業側にも社会保険制度を正しく理解し、適切に手続きを行うことが求められます。
納付強化と制度説明をセットで考える必要がある
在留資格の審査に年金保険料の納付状況を加味すれば、外国人の納付率を高める効果が期待できます。
一方で、制度を知らないことや言語の壁によって未納になっている人もいます。
そのため、審査を厳格化するだけでは十分ではありません。
国民年金への加入義務だけでなく、保険料免除、納付猶予、学生納付特例、脱退一時金、社会保障協定などについても多言語で分かりやすく説明する必要があります。
納めるべき人には納めてもらい、納めることが難しい人には正式な制度を利用してもらう仕組みが重要です。
結論
外国人の国民年金保険料の納付は、今後、在留資格とも一段と深く関係するようになります。
2027年6月からは、在留資格の審査に国民年金保険料の納付状況も加味され、出入国在留管理庁がマイナンバーによる情報連携を通じて把握する予定です。
外国人本人にとって重要なのは、単に保険料を支払っているかどうかだけではありません。
経済的な事情などで納付が難しい場合には、保険料免除や納付猶予、学生納付特例など、利用できる制度について正式な手続きを行うことが重要です。
未納と、制度に基づいて承認された免除や猶予は同じではありません。
外国人材の受け入れが拡大するなか、在留資格だけを管理し、社会保障制度への参加は本人任せにするという仕組みから、在留管理と社会保障を情報連携によって結び付ける方向へ制度は変わりつつあります。
外国人にとって国民年金は、将来の年金を受け取るためだけの制度ではなく、日本で安定して生活し働き続けるためにも理解しておくべき制度になっていくのです。
参考
日本経済新聞 2026年8月18日朝刊 国民年金の納付、外国人低調55%