相続が始まったら最初に何をするのか 死亡直後の手続きと預金口座凍結の仕組み編

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家族が亡くなると、悲しむ間もなく、さまざまな手続きが始まります。

死亡届、火葬、公的医療保険、介護保険、年金、葬儀費用の支払いなどです。そして、その一方で始まるのが「相続」です。

相続というと、遺産分割や相続税を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし実際には、それより前に対応しなければならない手続きがあります。

特に知っておきたいのが、金融機関が死亡の事実を知ると、故人名義の預金口座が原則として凍結されることです。

死亡直後に何が起こるのかをあらかじめ知っておくことは、残された家族の負担を減らすためにも重要です。

相続は死亡した瞬間から始まる

相続は、亡くなった人の財産を家族が分けると決めた時点から始まるわけではありません。

法律上は、人が死亡したことによって相続が開始します。

つまり、遺産分割協議をしていなくても、相続税の申告をしていなくても、死亡した時点ですでに相続は始まっています。

故人が持っていた預貯金、不動産、有価証券などの財産だけでなく、借入金などの債務も相続の対象になり得ます。

そのため、死亡直後の手続きと並行して、どのような財産や債務が残されているのかを確認していく必要があります。

最初に必要になる死亡診断書と死亡届

死亡後のさまざまな手続きの出発点になるのが、死亡診断書と死亡届です。

一般的な死亡診断書の用紙は、死亡届と一体になっています。

医師が死亡日時や死因などを記載する部分が死亡診断書で、遺族などが必要事項を記入する部分が死亡届です。

死亡届は、原則として死亡の事実を知った日から7日以内に市区町村へ提出します。

実務では葬儀会社が提出を代行することも多く、その際に火葬許可の手続きも行われます。

死亡診断書は、その後の手続きで必要になることがあります。提出する前にコピーを複数用意しておくと、その後の事務を進めやすくなります。

火葬から埋葬までにも書類が必要になる

死亡届を提出した後は、火葬のための手続きが必要です。

市区町村から交付された火葬許可証を火葬場へ提出し、火葬後は埋葬などに必要となる書類を受け取ります。

その書類を墓地や納骨堂などに提出することで、埋葬や納骨を進めることになります。

死亡届を提出すればすべての手続きが終了するわけではなく、死亡、火葬、埋葬という流れに沿って、それぞれ必要な手続きがあります。

医療保険や介護保険の手続きも確認する

故人が加入していた公的医療保険についても、死亡に伴う手続きが必要になります。

例えば後期高齢者医療制度に加入していた場合には、自治体で必要な手続きを確認します。

また、被保険者が死亡した場合には、葬祭を行った人に葬祭費が支給される制度があります。

自治体によって手続きや必要書類などが異なる場合があるため、葬儀費用の領収書などは捨てずに保管しておくことが大切です。

介護保険についても、被保険者証などの返却を含めた手続きが必要になることがあります。

死亡後は提出期限のある手続きが集中するため、何をいつまでに行うのかを整理しておく必要があります。

年金は死亡届だけでなく未支給年金にも注意する

故人が公的年金を受給していた場合には、年金についても確認が必要です。

年金受給者が死亡すると年金を受ける権利はなくなりますが、日本年金機構にマイナンバーが収録されている場合には、原則として年金受給権者死亡届の提出は不要です。

一方で重要なのが未支給年金です。

年金は後払いで支給されるため、亡くなった時点で、まだ本人に支給されていない年金が残っていることがあります。

一定の遺族は、この未支給年金を請求できる場合があります。

単に年金を止める手続きだけではなく、受け取れる年金が残っていないかを確認することも重要です。

金融機関が死亡を知ると預金口座は凍結される

死亡直後の資金管理で特に問題になりやすいのが、銀行などの預金口座です。

金融機関が預金者の死亡を把握すると、故人名義の口座は原則として凍結されます。

これは金融機関が預金を没収するという意味ではありません。

死亡によって相続が開始すると、その預金は相続財産となります。

金融機関としては、誰が正当な相続人なのか、誰がいくら取得するのかが確認できない段階で、一部の相続人だけに自由に預金を引き出させることができません。

そのため、一定の相続手続きが終了するまで取引を制限するわけです。

死亡した瞬間に自動的に凍結されるわけではない

誤解されやすいのですが、人が亡くなった瞬間に全国の銀行へ死亡情報が自動的に送られ、すべての口座が一斉に凍結されるわけではありません。

基本的には金融機関が預金者の死亡を把握した段階で、口座の取引が制限されます。

そのため、死亡後もしばらくATMなどが利用できる場合があります。

しかし、「まだ使えるから引き出してよい」と考えるのは危険です。

死亡した時点で預金は相続財産になっています。

相続人の一人が勝手に多額の預金を引き出して自分のために使用すれば、後の遺産分割でトラブルになる可能性があります。

相続放棄を検討している場合などには、故人の財産を処分した行為が問題になることもあります。

死亡後の預金は、単なる家族のお金ではなく「相続財産」として扱う意識が必要です。

凍結された預金を遺産分割まで一切使えないわけではない

もっとも、預金口座が凍結されたからといって、遺産分割が終わるまで故人の預金を一切動かせないとは限りません。

相続預金には、遺産分割前の払戻し制度があります。

一定の範囲であれば、他の相続人の同意を得なくても、相続人が金融機関から預金の払戻しを受けられる仕組みです。

死亡直後には葬儀費用や当面の生活費などが必要になるため、遺産分割が終了するまで一円も引き出せないと遺族が困ってしまいます。

こうした問題に対応するための制度です。

ただし、払戻し可能額には法律上の計算方法や上限があります。

必要になった場合には、取引金融機関に必要書類や手続きを確認することが大切です。

死亡直後に必要なお金は生前に準備しておく

相続対策というと、相続税を減らすことばかりに目が向きがちです。

しかし実際の相続では、「死亡直後のお金を誰がどうやって支払うのか」という問題も重要です。

葬儀費用だけではありません。

病院への支払い、公共料金、住居費、家族の当面の生活費など、死亡直後にもさまざまなお金が必要になります。

家計の資金を夫婦のどちらか一方の銀行口座だけに集中させている場合、その人が先に亡くなると、残された配偶者が当面の生活資金に困る可能性があります。

それぞれの名義で一定の生活資金を保有しておくなど、死亡直後の資金繰りまで考えて準備しておくことが大切です。

相続対策は税金だけではない

相続対策には大きく分けて、財産をどう分けるかという問題、相続税をどうするかという問題、そして死亡後の資金をどう確保するかという問題があります。

相続税対策が十分でも、家族が死亡直後の葬儀費用を支払えなければ困ります。

逆に、預金を十分残していても、どこにどの財産があるのか家族が知らなければ手続きは進みません。

預金口座、不動産、証券口座、生命保険、借入金などについて、家族が存在を把握できる状態にしておくことも重要な相続対策です。

相続は亡くなってから考える問題ではありません。

死亡後に家族がどのような手続きをし、どのようなお金が必要になるのかを想像して、生前から準備しておくことが重要なのです。

結論

家族が亡くなると、死亡届や火葬、公的医療保険、介護保険、年金など、短期間に多くの手続きが発生します。

同時に相続も開始し、故人の預金や不動産などは相続財産として扱われることになります。

特に注意したいのが預金口座です。

金融機関が死亡を把握すると故人名義の預金口座は原則として凍結されますが、死亡後にATMが利用できる状態だからといって、安易に引き出してよいわけではありません。

一方、遺産分割前の預金払戻し制度など、死亡後の資金需要に対応する仕組みもあります。

大切なのは、亡くなってから家族が慌てて対応するのではなく、死亡直後に必要になる手続きとお金を生前から想定しておくことです。

相続対策とは、財産を残すことだけではありません。

残された家族が困らずに相続手続きを始められる状態をつくっておくことも、大切な相続対策なのです。

参考

日本経済新聞 2026年8月15日 朝刊 <マネーの知識ここから>相続の基礎(1) 故人の財産、死亡後に「凍結」

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