AIネイティブコンサルとは何か 少人数で大手コンサルに対抗する会社が生まれる理由編

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生成AIの普及によって、コンサルティング会社の競争力を決める条件が変わろうとしています。

これまでは、多くの優秀なコンサルタントを採用し、大規模なプロジェクトに大量の人員を投入できることが大手コンサルティング会社の強みでした。

市場調査、データ分析、競合調査、議事録作成、提案資料作成などには大量の人手が必要だったからです。

しかし生成AIがこうした作業を短時間で処理できるようになると、必ずしも大量のコンサルタントを抱える必要はなくなります。

そこで登場する可能性があるのが、最初からAIを前提として組織や業務を設計するAIネイティブコンサルです。

少人数の専門家が多数のAIを使いこなし、従来なら大人数で行っていた仕事を処理する。

AIは、コンサルティング業界に新しい会社の形を生み出す可能性があります。

AIネイティブとは何か

AIネイティブとは、既存の業務に後からAIを付け加えるのではなく、最初からAIを利用することを前提として事業を設計する考え方です。

従来型のコンサル会社の場合、まず人間中心の業務プロセスがあります。

市場調査を人間が行う。

データを人間が整理する。

資料を人間が作る。

その一部をAIによって効率化します。

これに対してAIネイティブ企業では発想が逆になります。

まずAIにできる仕事をAIへ任せます。

そのうえで、人間が担当すべき仕事だけを切り出します。

つまり、人間の仕事をAIで効率化するのではなく、人間とAIの役割分担そのものを最初から設計するのです。

従来のコンサル会社は人を増やして成長してきた

コンサルティングは典型的な労働集約型ビジネスでした。

売上を増やすためには、基本的にコンサルタントを増やす必要があります。

100人の会社が200人分の仕事を受注しても、実際に働く人がいなければ案件を処理できません。

そのため大手コンサル会社は、新卒採用や中途採用を積極的に行ってきました。

採用する。

教育する。

プロジェクトへ配置する。

経験を積ませる。

昇進させる。

さらに採用する。

この循環によって会社を拡大してきました。

人材そのものが生産能力だったため、社員数の増加と売上の増加が密接に結び付いていたのです。

AIによって人員と売上の関係が変わる

生成AIは、この関係を変える可能性があります。

例えば市場調査を考えてみましょう。

従来なら複数のコンサルタントが資料を読み、情報を整理し、競合企業を比較していました。

AIを利用すれば、大量の文章を短時間で整理できます。

企業情報を一定の基準で比較することもできます。

分析結果のたたき台を作ることもできます。

さらに提案資料の構成案まで作成できます。

その結果、従来5人必要だった仕事を2人で処理できるようになるかもしれません。

AIの能力がさらに高まれば、1人でも可能になる仕事が増えるでしょう。

社員数を増やさなくても処理できる案件数を増やせるようになります。

一人のコンサルタントがAIチームを持つ

AIネイティブコンサルでは、一人のコンサルタントが複数のAIを使い分ける働き方も考えられます。

あるAIには市場調査をさせます。

別のAIには財務データを分析させます。

さらに別のAIには競合企業を比較させます。

別のAIには提案資料の構成を作らせます。

人間のコンサルタントは、それぞれの結果を確認しながらプロジェクト全体を管理します。

これまでならマネージャーが複数の若手コンサルタントへ仕事を割り振っていた場面です。

AI時代には、一人のコンサルタントが複数のAIエージェントを管理するようになる可能性があります。

人間一人の下にデジタルのチームが存在するような働き方です。

少人数でも大規模案件を扱える

AIネイティブコンサルの大きな特徴は、会社の規模と処理能力を切り離せる可能性があることです。

従来、大規模な市場調査や企業分析には大量の人員が必要でした。

そのため社員数の多い大手コンサル会社が有利でした。

しかしAIが情報処理の大部分を担当すれば、少人数の会社でも大きな案件を処理できる可能性があります。

例えば10人の専門家がAIを使うことで、従来数十人で行っていた仕事を担当できるかもしれません。

こうなれば、社員数がそのまま会社の競争力とはいえなくなります。

重要になるのは、AIをどれだけ効率的に使えるかです。

固定費の小ささが競争力になる

少人数で運営できることには、もう一つ大きなメリットがあります。

固定費を抑えられることです。

大手コンサル会社は多数の社員を抱えています。

社員の給与だけではありません。

採用費。

教育費。

オフィス費用。

管理部門の費用。

情報システム費用。

さまざまな固定費が発生します。

AIネイティブ企業が少人数で同じ仕事を処理できれば、こうした固定費を大幅に抑えられる可能性があります。

その分、価格を下げることもできますし、利益率を高めることもできます。

大手コンサル会社がこれまで対応しにくかった中堅中小企業向けの市場へ参入することも考えられます。

専門特化型コンサルとの相性がよい

AIネイティブ型は、特定分野に強い専門家との相性が特によいでしょう。

例えば製造業に詳しい専門家。

M&Aに詳しい専門家。

人事制度に詳しい専門家。

財務に詳しい専門家。

特定の業界やテーマについて深い経験を持つ少人数のチームです。

こうした専門家がAIによって情報処理能力を拡大できれば、大量の若手を抱える必要がありません。

専門家自身の経験や知識をAIに組み込み、調査や分析を高速化することもできます。

大手コンサル会社と同じ規模を目指すのではなく、特定分野で非常に高い専門性と生産性を持つ会社を作ることが可能になります。

会社の知識をAIに蓄積できる

AIネイティブコンサルでは、過去の案件から得た知識をどのように蓄積するかも重要になります。

従来のコンサルティング会社では、知識の多くが個々のコンサルタントの頭の中にありました。

経験豊富な社員が退職すれば、その知識の一部も会社から失われます。

生成AIを利用すれば、一定の範囲で知識を組織の資産として再利用できる可能性があります。

過去の提案資料。

プロジェクトで得た知見。

業界特有の論点。

分析方法。

顧客とのやり取りから得た経験。

こうした情報を適切に管理し、社内AIが利用できるようにします。

すると新しい案件でも、過去の経験を素早く参照できるようになります。

会社の知識が人間だけではなくAIにも蓄積されていくわけです。

大手コンサルの強みがなくなるわけではない

ただし、AIネイティブ企業が登場すれば大手コンサル会社が不要になるわけではありません。

大手には依然として強い競争力があります。

世界各国の拠点。

多数の専門家。

大企業との長期的な取引関係。

ブランド。

巨大プロジェクトを管理する能力。

経営層とのネットワーク。

特に世界規模の企業再編や大規模なシステム改革では、多くの人や組織を動かす能力が必要です。

こうした仕事は、単純な情報処理能力だけでは対応できません。

AIによって小規模企業の競争力が高まっても、大手の持つ信頼や実行力まで簡単に代替されるわけではありません。

むしろ大手もAIネイティブ化する

さらに重要なのは、大手コンサル会社自身もAIを積極的に利用していることです。

生成AIを利用した社内プラットフォームを構築し、過去の知識やコンサルタントのノウハウを活用する取り組みが進んでいます。

つまり競争は、

AIを使う小規模企業対AIを使わない大企業

ではありません。

AIを前提として徹底的に業務を作り直す企業同士の競争になります。

大手企業が豊富なデータや人材、資金とAIを組み合わせれば、非常に強力です。

新興企業側には、既存の組織や料金体系に縛られず、最初からAI中心の仕組みを作れるという強みがあります。

料金体系も変えやすい

AIネイティブコンサルは、料金体系についても従来型とは異なる仕組みを作りやすいでしょう。

人月型ではなく、プロジェクト単位の固定料金。

成果に応じた報酬。

月額制のアドバイザリー。

AIツールの利用料。

専門家による確認料金。

こうした料金体系を組み合わせることができます。

AIによって1件当たりの処理コストが下がれば、従来は採算が合わなかった小規模な相談にも対応できます。

コンサルティングが一部の大企業だけのサービスではなく、中堅中小企業にも広がる可能性があります。

人間は最終判断に集中する

AIネイティブコンサルで重要なのは、人間をなくすことではありません。

人間が担当する仕事を絞り込むことです。

何が本当の経営課題なのかを決める。

AIの分析が妥当か判断する。

複数の選択肢から最終案を選ぶ。

経営者へ説明する。

社内の反対意見を調整する。

改革を実行する。

こうした仕事です。

情報を集める能力より、情報を使って判断する能力の価値が高くなります。

AIが大量の作業を担当するほど、人間はより高度な意思決定へ集中できるようになります。

コンサル会社とソフト会社の境界も曖昧になる

AIネイティブ化が進むと、コンサルティング会社そのものの定義も変わる可能性があります。

従来は、人間のコンサルタントが顧客企業へ助言することが中心でした。

しかし、コンサル会社が自社のノウハウをAIサービスとして提供するようになるかもしれません。

顧客企業が日常的な問題をAIへ相談します。

AIで解決できない重要な問題だけ人間の専門家が対応します。

つまり、

AIによる継続的な助言

人間による高度な判断

を組み合わせたサービスです。

そうなると、コンサル会社とソフトウエア会社の境界は次第に曖昧になります。

小さい会社でも知識を大きくできる

AIネイティブ企業の本質は、単なる人員削減ではありません。

少人数の専門家が持つ知識や経験をAIによって拡張できることにあります。

これまで企業規模を大きくするためには、人を増やす必要がありました。

AI時代には、人を増やさなくても一人当たりの処理能力を大きくすることができます。

企業の大きさを社員数ではなく、利用できる知識と判断能力によって考える時代になる可能性があります。

数十人の会社が数百人規模の会社と競争する。

数人の専門家集団が大手企業から仕事を受注する。

さらには一人の専門家がAIを使って組織のように働く。

こうした形が現実味を帯びてきます。

結論

AIネイティブコンサルとは、既存のコンサルティング業務の一部をAIで効率化するのではなく、最初からAIを利用することを前提として組織やサービスを設計する考え方です。

市場調査、データ整理、資料作成などをAIが担当すれば、従来ほど多くの若手コンサルタントを必要としなくなる可能性があります。

その結果、少数の専門家がAIを使いながら、大手コンサル会社と競争できる環境が生まれます。

ただし、AIだけで企業改革ができるわけではありません。

経営課題を設定し、AIの分析を検証し、意思決定を支援し、人や組織を実際に動かす仕事には人間が必要です。

AIネイティブ化の本質は、人間をAIへ置き換えることではありません。

AIに任せられる仕事を徹底的に任せ、人間の専門家を最も価値の高い仕事へ集中させることです。

これまでコンサルティング会社の規模は、かなりの部分を社員数によって決めていました。

AI時代には、小さな会社でも巨大な知的生産能力を持てるようになるかもしれません。

コンサル業界で問われるのは、何人のコンサルタントを抱えているかではなく、その人たちがAIを使ってどれだけ大きな価値を生み出せるかへ変わっていくでしょう。

参考

日本経済新聞 2026年8月 AIでコンサルもう不要?(下)代替される危機感ない

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