裁量労働制には「専門業務型」と「企画業務型」の二つがあります。このうち企画業務型裁量労働制は、企業の経営に関わる企画・立案業務を対象とした制度です。
しかし、企画業務型は専門業務型よりも導入要件が厳しく、対象となる企業や労働者も限定されています。そのため、制度の名称だけを見て「企画部なら利用できる」と考えるのは適切ではありません。
本記事では、企画業務型裁量労働制の対象業務や労使委員会の役割、導入が難しい理由について解説します。
企画業務型裁量労働制とは
企画業務型裁量労働制とは、本社や本社に準ずる事業所において、企業運営に関する企画、立案、調査、分析などの業務を行う労働者を対象とする制度です。
仕事の進め方や時間配分について、会社が細かな指示を行うのではなく、労働者自身の裁量によって業務を遂行することを前提としています。
一方で、単に企画部門に所属しているだけでは対象とはなりません。実際の業務内容が制度の趣旨に合致していることが必要です。
対象業務
対象となるのは、企業経営に関する重要な企画・立案・調査・分析業務です。
例えば、新規事業の企画、経営戦略の立案、市場調査、経営改善の分析など、企業全体の運営に影響を与える業務が想定されています。
一方で、営業活動、一般事務、ルーティンワーク、単純な資料作成などは対象とはなりません。
また、制度が適用されるためには、業務の進め方や時間配分について、実際に労働者へ十分な裁量が与えられていることも必要です。会社が具体的な指示を日常的に行っている場合は、制度の適用は認められません。
労使委員会とは
企画業務型裁量労働制の最大の特徴が、労使委員会の設置です。
専門業務型では労使協定によって導入できますが、企画業務型では労使委員会を設置し、委員の5分の4以上の多数による決議が必要になります。
さらに、その決議内容を労働基準監督署へ届け出ることも求められます。
労使委員会では、次のような事項について決議します。
・対象業務および対象労働者の範囲
・みなし労働時間
・健康・福祉確保措置
・苦情処理措置
・本人同意の取得方法
・同意撤回の手続
・同意しない場合の不利益取扱いの禁止
・評価制度変更時の説明
・決議の有効期間
このように、制度導入前から運用まで幅広い事項について労使双方が確認する仕組みとなっています。
労働者本人の同意も必要
企画業務型裁量労働制では、会社だけの判断で制度を適用することはできません。
対象となる労働者本人に制度内容を十分説明し、本人の同意を得ることが必要です。
また、同意しないことや同意を撤回したことを理由に、不利益な取扱いを行うことは禁止されています。
制度は労働者の自主性を尊重することを前提としているため、本人の意思が重要視されています。
なぜ導入が難しいのか
企画業務型裁量労働制が広く普及していない理由は、導入要件が非常に厳しいためです。
まず、対象業務が限定されていることに加え、労使委員会の設置や決議、本人同意、健康確保措置、継続的なモニタリングなど、多くの実務対応が必要になります。
さらに、制度導入後も、会社が業務の進め方を細かく指示している実態があれば、制度そのものが否定される可能性があります。
形式だけ整えても、実際の働き方が制度の趣旨に沿っていなければ意味はありません。
制度導入で重要な視点
企画業務型裁量労働制は、「導入できるか」ではなく、「自社で適切に運用できるか」という視点で判断することが重要です。
成果で評価する文化が定着しているか、労働者へ十分な裁量が与えられているか、健康管理体制が整っているかなど、実際の運用まで含めて検討する必要があります。
制度の目的は労働時間管理を簡略化することではなく、高度な企画業務を効率的に遂行できる環境を整えることにあります。
結論
企画業務型裁量労働制は、企業経営に関わる企画・立案・調査・分析業務を対象とした制度ですが、対象者は限定され、導入要件も専門業務型以上に厳格です。
労使委員会の設置や本人同意、健康確保措置、継続的なモニタリングなど、多くの要件を満たしたうえで初めて制度を適切に運用できます。制度を導入する際は、法令上の要件だけでなく、自社の業務実態が制度の趣旨に適合しているかを十分に検討することが重要です。
参考
企業実務 2026年8月号
「自社で本当に機能するか 裁量労働制の導入判断と運用上の留意点」 弁護士法人かける法律事務所 代表弁護士 細井大輔 著