企業活動では、契約書を締結する機会が数多くあります。しかし、契約書は署名・押印さえすれば終わりではありません。契約内容を十分に確認せず締結すると、後に予想外の責任を負ったり、多額の損害賠償や契約解除につながったりする可能性があります。
そのため、契約締結前に内容を確認する「契約書レビュー」は、企業法務における最も重要な業務の一つです。特に近年は、世界情勢の変化やサプライチェーンの混乱など予測困難なリスクが増えており、契約書の内容が企業経営に与える影響はますます大きくなっています。
本記事では、契約書レビューで確認すべきポイントについて解説します。
契約書レビューとは何か
契約書レビューとは、契約締結前に契約内容を確認し、自社に不利な条項や法的リスクがないかを検討する作業です。
契約書は一度締結すると、原則として当事者双方を拘束します。そのため、問題が起きてから対応するのではなく、契約締結前にリスクを把握し、必要に応じて修正を求めることが重要になります。
資料でも、履行困難な状況では、まず契約条項を精査し、自社を保護できる根拠がどこにあるのかを確認することが重要であると説明されています。
リスク条項を確認する
契約書レビューでは、リスクを左右する条項を重点的に確認します。
資料では、特に次の条項を確認すべきと整理しています。
- 不可抗力条項
- 中途解約条項
- 解除条項
- 協議条項
- 違約金条項
例えば、不可抗力条項では、
- 天災
- 戦争
- 感染症
- ストライキ
などが免責事由として含まれているかを確認します。また、不可抗力が発生した場合の通知義務が定められている契約もあるため、その内容も重要です。
さらに、違約金条項では、違約金が発生する条件や金額、損害賠償との関係についても確認する必要があります。
責任制限条項を確認する
契約書レビューでは、自社が負う責任の範囲についても確認しなければなりません。
資料では、履行困難が生じた場合には、不可抗力に該当するかどうかを検討し、損害賠償責任を負わないと主張できる可能性があると説明されています。
また、
- 契約解除が認められる条件
- 違約金の支払い義務
- 契約内容変更の可能性
なども、自社の責任範囲を左右する重要な要素です。
そのため、責任を一方的に負担する内容になっていないかを慎重に確認することが求められます。
通知義務を見落とさない
契約書レビューで意外に見落とされやすいのが通知義務です。
例えば、不可抗力条項では、一定期間内に相手方へ通知しなければ免責を受けられない契約があります。
また、履行困難が発生した場合には、取引先への連絡が遅れることで損害が拡大し、その損害について責任を問われる可能性もあります。
資料でも、履行困難が判明した場合には、原則として速やかに状況を共有し、誠実に対応を協議することがリスクの最小化につながると説明されています。
契約書だけでなく証拠も重要
契約書レビューは、契約書を読むだけでは終わりません。
実際に問題が発生した場合に備え、
- メール
- 通知書
- 打ち合わせ記録
- 交渉経緯
- 供給停止通知
などを適切に保存しておくことも重要です。
資料では、これらの記録が、履行困難となった原因や当事者の対応を示す客観的な証拠となり、交渉や紛争解決に役立つと説明されています。
法務担当者は「守る」だけではなく「つなぐ」役割も担う
法務担当者の役割は、契約違反を指摘することだけではありません。
資料では、法務部門は営業や調達など関連部門と連携し、情報を集約・共有しながら、具体的な対応方針を策定して紛争の拡大を防ぐリーダーシップが求められるとしています。
契約書レビューも同様であり、自社を守るだけでなく、将来にわたる取引関係を維持できる契約内容を目指すことが重要です。
結論
契約書レビューとは、契約締結前に法的リスクを確認し、自社を守るための重要な業務です。特に、不可抗力条項、解除条項、違約金条項、協議条項などは、履行困難な事態が発生した際の対応を左右するため、重点的に確認する必要があります。
また、契約書だけでなく、通知義務や交渉記録などの証拠を適切に管理することも、企業を守るうえで欠かせません。法務担当者には、法的リスクを回避するだけでなく、取引先との信頼関係を維持しながら企業価値を高める視点も求められているといえるでしょう。
参考
企業実務 2026年8月号
「契約は守れなくても、関係は壊さない 履行が困難な事態を乗り切るための法的論理と交渉の実務」 湊総合法律事務所 弁護士 中飯裕大 著