水リスクとは何か 企業が電気だけでなく水の確保まで考える必要がある理由編

経営

企業活動に必要なインフラというと、電気や通信、物流を思い浮かべることが多いでしょう。

しかし、もう1つ忘れてはいけないものがあります。

それが水です。

食品や飲料だけでなく、半導体、化学、鉄鋼など幅広い産業で水が使われています。工場の設備を冷却したり、製品や部品を洗浄したりするためにも必要です。

気候変動によって干ばつや豪雨が増えれば、水が不足するリスクと水が多すぎるリスクの両方が企業経営に影響します。

そこで重要になるのが「水リスク」という考え方です。

水リスクとは何か

水リスクとは、水に関する問題によって企業の事業活動や収益などに影響が生じる可能性のことです。

代表的なのが渇水です。

十分な水を確保できなければ、生産量を減らしたり工場の操業を停止したりしなければならない場合があります。

反対に、豪雨や洪水によって水が多くなりすぎても問題です。

工場が浸水したり、物流網が寸断されたりする可能性があります。

さらに、水質が悪化すれば、そのままでは工場で使用できなくなる場合もあります。

企業にとって水リスクとは、単に「水不足」だけを意味するものではないのです。

工場では大量の水が使われる

水はさまざまな製造工程で利用されています。

食品工場では、原材料の洗浄や製造設備の清掃などに使われます。

化学工場では、製造工程や設備の冷却などに水が必要になります。

半導体などの製造では、製品を洗浄するために高い水質が求められる場合があります。

つまり、工場へ水道管がつながっていればよいというだけではありません。

必要な量の水を、必要な品質で、安定的に確保できることが重要なのです。

渇水すると生産できなくなる

雨が少ない状態が長期間続けば、河川やダムなどの水量が減少します。

生活用水を優先するため、企業や工場が利用できる水に制限がかかる可能性もあります。

例えば、通常100の水を使って生産していた工場に対して、使用量を80に減らす必要が生じたとします。

設備や製造方法によっては、水の使用量だけを減らして同じ生産量を維持することが難しい場合があります。

結果として生産量そのものを減らさなければならない可能性があります。

工場も従業員も設備も無事なのに、水が足りないために生産できないということが起こり得るのです。

洪水も水リスクの1つ

水リスクには水不足とは反対の問題もあります。

豪雨によって河川が氾濫すれば、工場や倉庫が浸水する可能性があります。

電気設備や生産設備が水につかれば、復旧に長い時間がかかることもあります。

さらに、自社の工場が浸水していなくても、道路や鉄道が被害を受ければ原材料が届かなくなる可能性があります。

取引先の工場が洪水被害を受ければ、部品の供給が止まることも考えられます。

水が少なすぎても、多すぎても企業活動に影響するのです。

水質も重要な経営リスクになる

水は量だけでなく質も重要です。

製造する商品によっては、高い水質が求められます。

水源の水質が悪化すれば、浄化するための追加設備や処理が必要になる可能性があります。

必要な水質を確保できなければ、生産そのものに影響することも考えられます。

つまり企業が確認すべきなのは「水があるか」だけではありません。

必要な品質の水を継続的に確保できるかという視点も必要です。

水は地域で共有する資源

水には電気や燃料とは異なる特徴があります。

同じ河川や地下水を、企業だけでなく住民、農業、ほかの企業なども利用していることです。

水が十分にあるときには問題にならなくても、渇水時には限られた水を地域全体で利用しなければなりません。

企業が大量の水を使用すれば、地域住民や農業などとの間で利害が生じる可能性もあります。

そのため企業の水戦略では、自社だけが必要量を確保すればよいとは限りません。

地域全体の水資源をどのように持続的に利用するのかという視点が重要になります。

節水は環境対策だけではない

企業が工場の水使用量を減らす取り組みは、環境対策として語られることがあります。

しかし、水リスクという視点では事業継続にも意味があります。

例えば、生産工程を改善して製品1個当たりの水使用量を減らすことができれば、渇水によって利用可能な水が減った場合でも生産量への影響を抑えられる可能性があります。

使用した水を処理し、工場内で再利用する方法もあります。

普段から水への依存度を下げておくことが、非常時のレジリエンスを高めることにつながるのです。

取引先の水リスクも確認する

自社工場で十分な水を確保できていても安心とは限りません。

重要な部品を生産する仕入先が、水不足の地域に工場を持っている可能性があるからです。

その工場が渇水によって生産を減らせば、自社にも部品が届かなくなります。

さらに、その先の原材料メーカーが水不足の影響を受ける場合もあります。

企業の水リスクは自社の敷地内だけでは完結しません。

サプライチェーンのどこで大量の水が使われているのかまで確認することが重要になります。

工場立地にも水の視点が必要になる

新しい工場を建設するときには、土地価格、人件費、交通アクセス、取引先との距離などさまざまな条件を比較します。

これからは水資源も重要な判断材料になります。

現在は十分な水を確保できても、数十年後まで同じ状況が続くとは限りません。

将来の降水量や渇水リスクはどうなるのか。

洪水の危険性はないのか。

必要な水質を確保できるのか。

工場は長期間使用する設備だからこそ、将来の気候変動まで含めて立地を考える必要があります。

結論

水リスクとは、渇水、洪水、水質悪化など、水に関する問題によって企業活動が影響を受ける可能性のことです。

多くの産業では、生産設備だけでなく大量の水がなければ商品をつくることができません。

そのため、水不足によって工場が停止する可能性があります。

一方、豪雨によって水が多くなりすぎても、工場や物流網が被害を受ける可能性があります。

企業には、水の使用量を減らすことや再利用を進めることに加え、自社や取引先がどの水源に依存しているのかを把握することが求められます。

電気が止まった場合のBCPを考える企業は増えています。

これからは「水が止まった場合」についても同じように考える必要があります。

気候安全保障の時代には、水は単なる製造コストではなく、企業の事業継続を左右する重要な経営資源になっているのです。

参考

日本経済新聞 2026年9月25日 朝刊 「気候安全保障」時代の企業経営

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