企業が建物や機械設備などの固定資産を取得すると、その取得価額は一度に費用計上せず、耐用年数にわたって減価償却費として配分します。しかし、会計上と税務上では減価償却の方法や償却額が異なる場合があり、その結果として税効果会計が必要になります。
減価償却は、税効果会計における代表的な一時差異の発生要因です。その仕組みを理解することで、繰延税金資産や繰延税金負債がなぜ計上されるのかがより分かりやすくなります。
今回は、減価償却と税効果会計の関係について解説します。
減価償却とは
減価償却とは、固定資産の取得価額を、その資産が使用される期間にわたって費用配分する会計処理です。
例えば、1,000万円の機械を取得した場合でも、取得年度に全額を費用計上するのではなく、耐用年数に応じて毎年少しずつ減価償却費として計上します。
この考え方により、資産を使用して収益を得る期間と費用を対応させることができます。
会計と税務で違いが生じる理由
会計では、企業の経済的実態を適切に表すことを目的として減価償却を行います。
一方、税務では法人税法の規定に基づいて損金算入できる減価償却費を計算します。
そのため、
- 採用する償却方法
- 償却限度額
- 償却時期
などが異なる場合があります。
この違いによって、会計上の利益と税務上の所得に差が生じます。
一時差異はどのように発生するのか
例えば、税務上の減価償却費が会計上よりも多い場合を考えてみましょう。
当期は税務上の費用が多くなるため、課税所得は会計上の利益より小さくなります。
その結果、当期の法人税は少なくなります。
しかし、その分だけ将来の年度では税務上の減価償却費が少なくなり、課税所得が増加します。
つまり、現在少なく支払った税金を将来支払うことになるため、将来加算一時差異が発生し、繰延税金負債を計上することになります。
反対に、会計上の減価償却費の方が大きい場合には、将来減算一時差異となり、繰延税金資産が生じることがあります。
繰延税金資産と繰延税金負債の関係
減価償却では、一時差異の方向によって計上される勘定科目が変わります。
税務上の償却額が多い場合は、将来税金が増えるため繰延税金負債となります。
一方、会計上の償却額が多い場合は、将来税金が減るため繰延税金資産となります。
どちらも最終的には減価償却が終了する時点で差異が解消されるため、一時差異として税効果会計の対象になります。
決算書への影響
減価償却による税効果会計は、貸借対照表と損益計算書の両方に影響します。
貸借対照表には繰延税金資産または繰延税金負債が計上されます。
また、損益計算書では法人税等調整額を通じて税金費用が調整されます。
そのため、実際に納付する法人税額と、損益計算書に表示される税金費用が一致しないことがあります。
実務で注意したいポイント
減価償却による一時差異は、多くの企業で継続的に発生します。
設備投資が多い企業ほど、その影響は大きくなる傾向があります。
また、税制改正によって減価償却制度が変更された場合には、一時差異の金額や繰延税金資産・繰延税金負債の金額も見直す必要があります。
決算実務では、固定資産台帳と税務上の償却額を照合し、一時差異を正確に把握することが重要です。
結論
減価償却は、会計と税務で処理方法や償却額が異なることがあるため、税効果会計の代表的な対象となる取引です。
税務上の減価償却費が多ければ繰延税金負債、会計上の減価償却費が多ければ繰延税金資産が発生し、将来解消される一時差異として管理されます。
減価償却と税効果会計の関係を理解することで、決算書に計上される繰延税金資産や繰延税金負債の意味をより深く読み解くことができるようになります。
参考
企業実務 2026年8月号
「なるほど納得 勘定科目108 会計上と税務上の資産・負債の額に差異があるときは?②」