企業は、売掛金や貸付金などが将来回収できなくなる可能性に備えて貸倒引当金を計上します。しかし、会計上で費用として認められても、その全額が税務上の損金になるわけではありません。
法人税法では、貸倒引当金の損金算入には一定の制限が設けられています。この会計と税務の違いが、一時差異を生み、税効果会計の対象となります。
今回は、貸倒引当金が税務上どこまで認められるのか、その基本的な考え方と実務上の注意点について解説します。
貸倒引当金とは
貸倒引当金とは、売掛金や受取手形、貸付金などの債権について、将来回収できなくなると見込まれる金額をあらかじめ費用として計上するための引当金です。
企業会計では、損失が実際に発生してから処理するのではなく、損失が見込まれた時点で費用計上するという発生主義の考え方を採用しています。
そのため、決算時には回収不能となる可能性を合理的に見積もり、貸倒引当金を計上します。
税務上はなぜ制限されるのか
税務では、企業が自由に貸倒引当金を計上できるようにすると、利益を意図的に圧縮して法人税を少なくすることが可能になります。
そこで法人税法では、損金算入できる貸倒引当金について一定の範囲を定めています。
会計上の貸倒引当金が税務上の限度額を超える場合、その超過額は当期の損金にはなりません。
資料でも、貸倒引当金繰入額のうち限度超過額については当期には損金とならず、将来貸倒れが発生した時点で損金として認められることが説明されています。
損金算入限度額の考え方
貸倒引当金には、税務上認められる限度額があります。
決算で計上した貸倒引当金がその範囲内であれば、損金として法人税の計算に反映されます。
しかし、限度額を超えた部分は損金不算入となり、会計上の利益と税務上の所得に差異が生じます。
この差異は将来解消されるため、一時差異となります。
一般企業と中小企業で異なる点
法人税法では、貸倒引当金の取扱いは企業の規模などによって異なる場合があります。
中小法人については、一定の債権に対して法定繰入率などによる損金算入が認められる制度が設けられているケースがあります。
一方、大企業では、税務上の貸倒引当金の適用範囲が限定されており、損金算入できるケースは限られています。
そのため、自社がどの制度の適用対象になるかを確認することが重要です。
税効果会計との関係
税務上損金にならなかった貸倒引当金も、将来実際に貸倒れが発生すれば損金として認められます。
そのため、当期に生じた限度超過額は将来減算一時差異となります。
税効果会計では、この将来の節税効果を繰延税金資産として計上します。
資料でも、貸倒引当金の限度超過額に法定実効税率を乗じて繰延税金資産を計上し、翌期に貸倒れが発生すると取り崩す処理が紹介されています。
実務で注意したいポイント
貸倒引当金は、会計上の見積額と税務上の損金算入額を区別して管理する必要があります。
決算では、
- 会計上の貸倒引当金残高
- 税務上の損金算入限度額
- 損金不算入額
- 繰延税金資産の計算
をそれぞれ確認することが重要です。
また、翌期以降に実際の貸倒れが発生した際には、一時差異の解消処理も忘れてはいけません。
結論
貸倒引当金は、会計上は将来の貸倒損失を見積もって費用計上しますが、税務上は法人税法で定められた範囲しか損金として認められません。
限度額を超えた部分は一時差異となり、税効果会計によって繰延税金資産を計上することになります。
会計と税務の違いを正しく理解することは、適正な決算書の作成だけでなく、税務申告や税効果会計を適切に行うためにも重要です。
参考
企業実務 2026年8月号
「なるほど納得 勘定科目108 会計上と税務上の資産・負債の額に差異があるときは?②」