会社が銀行へ決算書を提出すると、銀行はそこに記載された数字だけを見て融資判断をするわけではありません。
参考記事では、貸付金を含む流動資産について、実際に回収できるのか、現金化できるのかという視点から見ることの重要性が示されています。
帳簿上は資産であっても、返済される見込みのない貸付金、回収できない売掛金、適正価格で販売できない商品などが含まれていれば、決算書の数字と会社の実態には差が生じます。
銀行から見た会社の実力を考えるには、資産の金額だけではなく、その中身を見る必要があります。
決算書の数字だけでは実態が分からない
貸借対照表には、決算日時点における会社の資産や負債などが記載されています。
資産には現預金、売掛金、商品、貸付金などがあります。
これらを合計すれば会社の資産総額が分かります。
しかし、参考記事が示しているように、資産として計上されている金額が、そのまま実際の価値を表しているとは限りません。
特に重要なのが、将来その資産を現金化できるのかという点です。
資産の中身によって、会社の実質的な支払能力は大きく変わります。
貸付金は回収可能性を見る
貸付金は、会社が経営者や取引先などに貸しているお金です。
会社には返済を受ける権利があるため、貸借対照表では資産として計上されます。
しかし、参考記事では、貸付金が返済されずに計上されたままになっているケースが多いと説明しています。
返済されない貸付金が1,000万円あったとしても、会社がその1,000万円を仕入れや給与の支払いに使うことはできません。
そのため、貸付金については帳簿上の残高だけでなく、本当に回収できるのかを見ることが重要になります。
1年以内に返済されない貸付金を0と見る事例
参考記事では、具体的な数字を使ってこの問題を説明しています。
流動資産が6,350万円あります。
流動負債が3,600万円あります。
この数字だけで流動比率を計算すると約176%です。
ところが、流動資産6,350万円の中には貸付金3,000万円が含まれています。
しかも、この貸付金は1年以内に返済される見込みがありません。
参考記事では、この貸付金の資産価値を0として流動比率を計算しています。
流動資産から3,000万円を差し引くと3,350万円です。
これを流動負債3,600万円で割ると、流動比率は約93%になります。
表面上の176%とは大きく異なります。
回収できない売掛金も確認する
参考記事では、貸付金だけではなく、回収できない売掛金についても同じように考える必要があるとしています。
売掛金は、商品やサービスを販売したものの、まだ代金を受け取っていない金額です。
通常であれば、取引先から回収することで現金になります。
しかし、取引先の経営状態などによって回収できないのであれば、帳簿上の金額どおりの価値があるとは考えにくくなります。
決算書に売掛金が計上されているという事実だけではなく、その売掛金が実際に回収できるのかを見る必要があります。
適正価格で売れない商品にも注意する
商品も貸借対照表では資産です。
販売できれば売上となり、最終的には現金になります。
しかし、参考記事では、適正価格で販売できない商品についても資産価値を見直す必要があると説明しています。
帳簿上1,000万円の商品があったとしても、それを1,000万円相当の価値で販売できるとは限りません。
長期間売れない商品などが含まれていれば、帳簿上の資産と実際に期待できる価値には差が生じます。
貸付金、売掛金、商品はすべて資産ですが、現金化できる可能性まで考えて見ることが重要なのです。
銀行は多額の貸付金を厳しく見る
参考記事では、銀行は多額の貸付金がある決算書に対して厳しい見方をすると説明しています。
貸付金の相手が経営者であれば、なぜ会社のお金が経営者個人へ流れているのかという問題があります。
取引先への貸付金であれば、その取引先に本当に返済能力があるのかという問題があります。
関連会社への貸付金であれば、グループ内でどのような資金移動が行われているのかを見る必要があります。
つまり、貸付金という勘定科目の金額だけを見るのではありません。
誰に貸しているのか。
なぜ貸したのか。
返済されているのか。
こうした中身が重要になります。
銀行が重視するのは返済できる会社かどうか
銀行にとって重要なのは、融資したお金を会社が返済できるかどうかです。
そのため、決算書に多額の資産が載っているというだけでは十分ではありません。
必要なときに現金化できない資産ばかりであれば、借入金の返済原資として期待することは難しくなります。
参考記事の流動比率の事例は、この違いを分かりやすく示しています。
帳簿上の数字では176%です。
貸付金の実態を考慮すると93%です。
決算書の表面的な数字だけを見る場合と、資産の実態を見る場合では、会社に対する評価が大きく変わる可能性があるのです。
経営者自身も資産の中身を確認する
こうした見方は銀行だけに必要なものではありません。
経営者自身が会社の財務状態を確認するときにも重要です。
貸借対照表に資産がたくさんあるから安全だと考えるのではなく、その中身を確認します。
貸付金は返済されるのか。
売掛金は回収できるのか。
商品は適正な価格で販売できるのか。
こうした確認をすることで、決算書の数字だけでは分からない会社の状態が見えてきます。
銀行から指摘されて初めて問題に気づくのではなく、会社自身が日頃から資産の実態を把握することが重要です。
結論
銀行が決算書を見るときに重要なのは、そこに記載されている資産の金額だけではありません。
参考記事では、1年以内に返済される見込みのない貸付金について資産価値を0として考える事例が示されています。
その結果、表面上176%だった流動比率は、実態では93%になります。
回収できない売掛金や、適正価格で販売できない商品についても同じように実態を見る必要があります。
決算書に1,000万円と書かれている資産が、本当に1,000万円の価値を持つとは限りません。
本当に回収できるのか。
本当に現金化できるのか。
会社の支払いに使える資産なのか。
こうした視点で資産を見ることで、決算書の表面的な数字だけでは分からない会社の実力が見えてきます。
銀行が厳しく見ているのは、決算書をきれいに見せる数字ではなく、会社が実際に借入金を返済していける財務状態にあるかどうかなのです。
参考
企業実務 2026年9月号 貸付金の発生に注意を