企業が従業員の健康管理を考える際、「欠勤者を減らすこと」が重要な課題として挙げられます。しかし、欠勤は単に一人が休むだけの問題ではありません。業務の遅れや周囲への負担増加、売上機会の損失など、企業経営全体にさまざまな影響を及ぼします。
このような欠勤による損失を表す考え方が「アブセンティーイズム」です。
近年では、健康経営の推進に伴い、プレゼンティーイズムと並ぶ重要な指標として注目されています。
今回は、アブセンティーイズムの意味や企業への影響、改善策について解説します。
アブセンティーイズムとは何か
アブセンティーイズム(Absenteeism)とは、病気やけが、メンタルヘルス不調などによって従業員が欠勤し、本来行うべき業務を遂行できない状態を指します。
欠勤には、
・体調不良
・感染症
・精神的な不調
・通院や入院
・労働災害
など、さまざまな理由があります。
企業では欠勤日数として把握しやすいため、従来から重要な労務管理指標の一つとして利用されてきました。
欠勤コストとは何か
従業員が欠勤すると、企業には想像以上に大きなコストが発生します。
例えば、
・予定していた業務の遅延
・他の従業員による応援対応
・残業時間の増加
・顧客対応の遅れ
・売上機会の損失
などが挙げられます。
さらに、管理職による勤務調整や人員配置の変更など、目に見えない管理コストも発生します。
欠勤そのものよりも、その影響が職場全体へ広がることが企業経営上の大きな課題となります。
当日欠勤が企業へ与える影響
特に影響が大きいのが、当日になって発生する急な欠勤です。
サービス業や小売業、医療・介護など、人員配置が重要な職場では、一人の欠勤が業務全体へ大きく影響します。
フェリコ株式会社でも、体調不良による当日欠勤が最大の経営課題となっていました。
少人数で運営する予約制のヘッドスパ専門店では、一人の欠勤が他のスタッフへの負担増加だけでなく、顧客サービスや売上機会にも直接影響していたと紹介されています。
このように、当日欠勤は単なる勤怠上の問題ではなく、経営課題として捉える必要があります。
アブセンティーイズムが発生する原因
欠勤にはさまざまな原因があります。
代表的なものは、
・生活習慣病
・睡眠不足
・感染症
・ストレス
・メンタルヘルス不調
・職場の人間関係
・過重労働
などです。
また、育児や介護との両立が難しいことから、やむを得ず欠勤するケースもあります。
企業が原因を正しく把握しなければ、根本的な改善は期待できません。
改善策
アブセンティーイズムを減らすためには、欠勤後の対応だけではなく、欠勤を未然に防ぐ取り組みが重要です。
例えば、
・健康診断の受診促進
・ストレスチェックの活用
・十分な休暇取得
・長時間労働の是正
・職場環境の改善
・健康教育の実施
・相談しやすい職場づくり
などが有効とされています。
フェリコ株式会社では、出退勤時に健康や業務に関する短い質問を表示し、従業員が毎日自分の体調や働き方を振り返る仕組みを導入しました。
その結果、食生活や睡眠、運動への意識が高まり、当初最大の課題であった体調不良による当日欠勤が大きく減少したと紹介されています。
健康経営との関係
健康経営では、従業員が病気になってから対応するだけではなく、健康な状態を維持し、欠勤そのものを減らすことが重要視されています。
欠勤が減少すれば、
・業務の安定化
・顧客満足度向上
・残業時間の削減
・従業員の負担軽減
・生産性向上
など、多くの効果が期待できます。
フェリコ株式会社でも、健康意識の向上に加え、残業時間の削減やスタッフ定着率の向上、売上拡大など、経営全体へ好影響が及びました。
プレゼンティーイズムとの違い
アブセンティーイズムとプレゼンティーイズムは、どちらも健康経営で重視される指標ですが、対象が異なります。
アブセンティーイズムは「欠勤による損失」を表します。
一方、プレゼンティーイズムは「出勤していても体調不良などで十分な能力を発揮できない状態」を指します。
企業が健康経営を進めるためには、この両方を改善する視点が欠かせません。
結論
アブセンティーイズムとは、病気やけがなどによる欠勤によって企業活動へ損失が生じる状態を指します。
特に少人数で運営する企業では、一人の欠勤が業務や売上、顧客満足度に大きな影響を及ぼすため、重要な経営課題となります。
健康経営では、欠勤への事後対応だけでなく、健康づくりや働きやすい職場環境を整えることで、欠勤そのものを減らす取り組みが重視されています。
従業員が安心して健康に働き続けられる環境を整えることは、企業の持続的な成長と競争力の向上にもつながる重要な投資といえるでしょう。
参考
企業実務 2026年8月号
事例研究「ナッジ」を活用して残業代4割減・売上高2倍増を実現〈フェリコ株式会社の事例〉