グループ会社への貸付金は貸倒れにできるのか 関連会社税務編

税理士
水色 シンプル イラスト ビジネス 解説 はてなブログアイキャッチのコピー - 1

企業グループでは、親会社が子会社へ運転資金を貸し付けたり、グループ会社同士で資金を融通したりすることが珍しくありません。

しかし、その子会社の経営が悪化し、返済が難しくなった場合、「貸付金を貸倒損失として処理できるのではないか」と考えることがあります。

ところが、グループ会社間の貸付金は、通常の取引先に対する債権よりも税務上厳しく判断されます。

今回は、関連会社への貸付金と貸倒損失の関係について解説します。

グループ会社間の貸付金とは

グループ会社間の貸付金とは、親会社と子会社、あるいは兄弟会社など、資本関係のある会社同士で行われる資金の貸し借りです。

例えば、

・運転資金の支援

・設備投資資金の貸付け

・資金繰りの一時的な援助

など、さまざまな目的で利用されています。

企業グループ全体では内部の資金移動ですが、法人税は会社ごとに課税されるため、それぞれの会社で適正な税務処理が求められます。

通常の貸付金より厳しく判断される理由

一般の取引先に対する貸付金であれば、回収不能となった場合に貸倒損失が認められることがあります。

しかし、グループ会社への貸付金では、

「本当に回収不能だったのか」

それとも

「グループ内で利益を移転しただけではないか」

という点が問題になります。

親会社は子会社の経営状況を把握しやすく、資金支援も自由に行える立場にあります。

そのため、税務では通常の第三者間取引より慎重に判断されます。

経営支援だけでは貸倒損失にならない

子会社を支援する目的で貸付金を放棄したとしても、それだけでは貸倒損失とは認められません。

例えば、

「赤字だから返済は求めない。」

「グループ全体のために貸付金を免除する。」

という判断だけでは、寄附金として取り扱われる可能性があります。

税務では、経営判断だけではなく、客観的に回収不能であることが重要になります。

法的整理が行われた場合は判断しやすい

子会社が破産手続や特別清算などの法的整理に入った場合には、貸付金の回収可能性が客観的に判断しやすくなります。

裁判所の決定や清算手続によって回収不能額が明確になれば、その範囲で貸倒損失が認められる可能性があります。

一方、法的整理を行わず、グループ内の判断だけで貸付金を放棄する場合には、その合理性が厳しく確認されます。

再建支援では合理性が重要になる

グループ会社を再建するために貸付金の一部を放棄するケースもあります。

この場合、

・具体的な再建計画があるか

・金融機関も同様に支援しているか

・第三者専門家が関与しているか

・放棄によって事業継続の可能性が高まるか

などが重要になります。

単なる赤字補填ではなく、経済合理性に基づく再建支援であることを説明できるかがポイントです。

税務調査で確認される資料

関連会社への貸付金について貸倒損失を計上した場合、税務調査では次のような資料が確認されます。

・貸付契約書

・取締役会議事録

・資金使途の資料

・再建計画書

・財務諸表

・返済交渉の記録

・法的整理に関する資料

これらの資料から、貸倒処理が適正であったかどうかが判断されます。

貸付けそのものの妥当性も問われる

税務では、貸倒損失だけではなく、「その貸付け自体が適切だったのか」という点まで確認されることがあります。

例えば、返済能力がほとんどないことを知りながら多額の資金を貸し付けていた場合には、通常の融資とは異なる評価を受ける可能性があります。

そのため、貸付けを行う時点から、

・返済計画

・返済能力

・資金使途

などを十分に検討し、資料を残しておくことが重要です。

グループ会社だからこそ適正な手続が必要

企業グループでは、「同じグループだから」という理由で形式的な手続が省略されることがあります。

しかし、税務ではグループ会社であっても、それぞれ独立した法人として扱われます。

貸付金の回収不能を主張するのであれば、第三者間取引と同様に、回収努力や経営状況の確認など、客観的な事実を積み重ねることが求められます。

適切な手続と十分な資料があって初めて、貸倒損失の妥当性を説明することができます。

結論

グループ会社への貸付金は、通常の取引先への債権以上に慎重な税務判断が求められます。

経営支援やグループ全体の利益だけを理由に貸付金を放棄すると、寄附金と認定される可能性があります。一方で、法的整理や具体的な再建計画などに基づき、回収不能であることが客観的に確認できれば、貸倒損失として認められる余地があります。

関連会社間取引では、「グループ会社だから」という考え方ではなく、独立した法人間取引として十分な資料を整え、合理的な説明ができる体制を整えることが、税務リスクを回避するために重要といえるでしょう。

参考

税のしるべ
2026年7月20日
連載「不良債権に係る税務上の取扱いの再確認」税理士・東辻 淳次
第3回/通達で貸倒損失の計上可否が明らかに

タイトルとURLをコピーしました