NISAの普及や円安の進行により、米国株や米国ETF、外国債券などのドル建て資産を保有する人が急増しています。証券会社のアプリを開けば簡単に海外投資ができる時代になりました。
一方で、多くの投資家が見落としているのが「税金」です。
株価の値動きや配当利回りには関心があっても、税務上の取り扱いまで理解している人は決して多くありません。実際には利益が出ていることに気付かないまま課税対象になっているケースもあります。
2026年には最高裁が、外貨を別の外貨へ交換した場合の為替差益にも課税できるとの判断を示しました。海外投資が一般化する中で、税務知識の重要性はますます高まっています。
海外投資の利益は株価だけではない
多くの人は投資の利益と聞くと、株価の値上がりを思い浮かべます。
例えば100ドルで購入した米国株を150ドルで売却すれば50ドルの利益です。
しかし実際にはもう一つの利益があります。
それが為替差益です。
1ドル100円の時に購入した米国株を、1ドル150円の時に売却すれば、円換算での利益は大きく膨らみます。
つまり海外投資では、
・株価変動による利益
・為替変動による利益
という二つの利益が存在するのです。
税務上も円換算で計算するため、投資家が思っている以上に所得が発生していることがあります。
ドルを円に戻さなくても課税される場合がある
近年増えているのが、米国株を売却した後もドルのまま保有するケースです。
次の投資先が決まるまでドルで保有したり、そのまま別の米国株を購入したりする投資家は珍しくありません。
ところが税務上は注意が必要です。
最高裁判決では、保有していた外貨を別の外貨へ交換した場合や、外貨で有価証券を取得した場合に為替差益が実現すると判断されました。
つまり、
「円に戻していないから税金は発生しない」
という考え方は必ずしも正しくありません。
ドルで株を買ったり、ドルを他の通貨へ交換したりする時点で課税対象になる可能性があります。
配当金にも税金がかかる
海外投資で見落としやすいのが配当金です。
米国株の配当には、まず米国で源泉徴収税が課されます。
その後、日本でも課税対象となります。
一定の場合には外国税額控除を利用して二重課税を軽減できますが、手続きをしなければ本来より多く税金を負担することもあります。
特に複数の証券会社を利用している場合や、一般口座を利用している場合は注意が必要です。
投資収益だけでなく、税引後の実際の手取りを把握することが重要になります。
NISAでもすべてが非課税ではない
NISAを利用しているから安心だと思っている人も少なくありません。
確かに日本国内の所得税や住民税は非課税になります。
しかし外国で課税される税金まで免除されるわけではありません。
例えば米国株の配当金については、NISA口座で保有していても米国側の源泉徴収税が発生します。
つまり「非課税」という言葉だけで判断すると誤解が生じます。
制度の仕組みを正しく理解することが必要です。
記録を残す人だけが税務リスクを避けられる
海外投資では取得時の為替レートが重要になります。
しかし長期間投資を続けていると、
・いつ購入したのか
・いくらで購入したのか
・取得時の為替レートはいくらだったのか
を忘れてしまうことがあります。
税務調査では利益計算の根拠を説明できなければなりません。
証券会社の年間取引報告書だけでは十分でない場合もあります。
人生100年時代の資産形成では、投資記録そのものが重要な資産になります。
人生100年時代は税務知識が資産を守る
これからの時代、海外投資は特別なものではありません。
年金だけに頼らず、自ら資産形成を行う人にとって米国株や海外ETFは身近な存在になっています。
しかし投資商品を理解するだけでは不十分です。
税金の知識がなければ、せっかくの運用成果を失うこともあります。
資産を増やす力と同時に、資産を守る力も必要です。
その守る力の中心にあるのが税務知識なのです。
結論
ドル建て資産を持つ人が見落としやすいのは、株価の利益ではなく為替差益や配当課税などの税務上の論点です。
特に近年は海外投資が一般化し、外貨を保有したまま運用を続ける人が増えています。しかし税務上は円に戻していなくても所得が発生する場合があります。
人生100年時代の資産形成では、投資の知識だけでは十分ではありません。税務を理解して初めて、本当の意味で資産を守り育てることができるのです。
参考
日本経済新聞(2026年6月17日朝刊)
「外国通貨を別の外貨に交換、円で為替差益なら課税適法 最高裁が初判断」