税務行政のデジタル化が着実に進んでいます。
国税庁は「税務行政におけるオンラインツールの利用に関するQ&A」を改訂し、税務調査や行政指導においてMicrosoft Teamsやメール、オンラインストレージなどの活用範囲を広げる方針を示しました。
かつて税務調査といえば、調査官が会社や事務所を訪問し、大量の資料を持参して対面で説明を受けるのが当たり前でした。しかし今後は、一部の手続きや面談がオンライン化されることで、納税者や税理士の負担が大きく変わる可能性があります。
人生100年時代においては、税務手続きもまた大きな転換期を迎えているのです。
税務調査のオンライン化が始まった背景
国税庁は近年、e-Taxや電子帳簿保存法などを通じて税務行政のデジタル化を進めてきました。
今回のオンラインツール活用もその流れの一環です。
利用される主なツールは次のとおりです。
・インターネットメール
・Microsoft Teams
・PrimeDrive
・Microsoft Forms
これらを利用することで、資料の受け渡しや面談の一部をオンラインで実施できるようになります。
もっとも、国税庁は「税務調査は原則として臨場調査」と明言しています。
つまり、税務署が会社や事務所を訪問する従来型調査がなくなるわけではありません。
オンライン化は調査の効率化を目的とした補完的な手段として導入されるのです。
税務署からメールで資料が届く時代へ
今回の改訂で特に注目されるのが、税務署側から納税者へ資料を提供できるようになった点です。
従来は税務署からメールやオンラインストレージを使った資料提供は行われていませんでした。
しかし改訂後は、
「効率的な調査の実施に資すると認められる場合」
には税務署側から資料送付を行うことが可能となりました。
例えば、
・確認事項の説明資料
・制度解説資料
・質問事項一覧
などが電子的に送付される可能性があります。
企業側から見ると、郵送を待つ必要がなくなり、情報共有のスピードが大きく向上します。
税理士との連携も容易になり、調査対応の効率化につながるでしょう。
Teams面談で重視される本人確認
オンライン面談の拡大に伴い、国税庁は情報漏えい防止対策も強化しています。
今回新たに追加されたQ&Aでは、Teamsによる面談時のルールが示されました。
重要なポイントは次のとおりです。
面談前に参加者を明確化すること
面談当日にカメラをオンにして本人確認を行うこと
参加予定者以外が同席していないことを確認すること
録音・録画を禁止すること
もし、
参加予定者以外の出席
録音や録画
画面撮影
などが確認された場合には、面談を中断するとしています。
オンラインだから自由度が高いのではなく、むしろ対面以上に厳格な管理が求められる時代になったといえるでしょう。
税理士業務も大きく変わる可能性
今回の改訂は税理士業界にも大きな影響を与える可能性があります。
これまで税務調査立会いは現地訪問が中心でした。
しかしオンライン面談が普及すれば、地域を問わず対応できる場面が増えていきます。
例えば、
地方企業の調査対応
遠隔地の顧問先支援
専門分野に特化した税理士の全国対応
などがさらに進む可能性があります。
税理士に求められる能力も変化するでしょう。
従来の対面説明力に加え、
オンライン面談能力
資料共有能力
ITリテラシー
デジタル証拠管理能力
が重要になっていきます。
人生100年時代に必要なのはデジタル税務力
人生100年時代では、60歳以降も働き続ける人が増えます。
副業やフリーランス、法人経営など、多様な働き方を選択する人も増えていくでしょう。
その結果、税務調査や税務行政との接点も長期間続くことになります。
そのとき重要になるのは、
税金の知識だけではありません。
電子帳簿保存法への対応
クラウド会計の活用
データ保存のルール理解
オンライン面談への対応力
といった「デジタル税務力」が求められる時代になります。
税務行政が変われば、納税者側も変わらなければなりません。
結論
国税庁によるオンラインツール活用の拡大は、税務行政DXの大きな一歩です。
税務調査そのものが完全オンラインになるわけではありませんが、資料提出や面談の一部は確実にデジタル化が進んでいきます。
人生100年時代においては、税金の知識だけでなく、デジタル環境で適切に証拠を管理し、オンラインで説明できる能力が重要になります。
これからの納税者に求められるのは「税務知識」と「IT活用力」の両輪です。
税務行政の変化を他人事として眺めるのではなく、自らの働き方や経営の在り方を見直すきっかけにしていくことが大切ではないでしょうか。
参考
税のしるべ 2026年6月15日
「税務行政におけるオンラインツールの利用に関するQ&Aを改訂、一定の場合は税務署からメール等で資料提供も」