長い間、「現金は持っていても増えない」「預金は負け組の資産」と言われてきました。
超低金利時代には、銀行にお金を預けてもほとんど利息は付きませんでした。そのため、多くの人がNISAや投資信託、株式投資へと資金を移してきました。
しかし、日本銀行の利上げによって状況は少しずつ変わり始めています。
金利がある世界では、現金の価値が見直される可能性があります。
人生100年時代において、現金は単なる待機資金ではなく、重要な資産防衛手段として再評価されるかもしれません。
今回は「現金を持つ意味」について改めて考えてみます。
超低金利時代は現金が不利だった
これまで現金が嫌われた理由は明確です。
預金金利が極めて低かったからです。
普通預金に1000万円預けても年間の利息は数百円程度でした。
一方で株式市場は世界的な金融緩和の恩恵を受け、大きく上昇しました。
投資をした人としなかった人の資産格差は年々広がりました。
その結果、
「現金は眠った資産」
「現金を持つことは機会損失」
という考え方が広がったのです。
確かに資産を増やすという観点だけで見れば、その考え方は間違っていませんでした。
金利のある世界では現金にも価値が生まれる
しかし利上げ局面では話が変わります。
銀行預金にも利息が付き始めるからです。
かつては無視できるほど小さかった預金利息が、今後は家計収入の一部として認識されるようになるかもしれません。
例えば3000万円の預金を持つ人であれば、金利上昇によって年間数万円から十数万円の利息収入が発生する可能性があります。
もちろん株式投資の期待リターンには及びません。
それでも元本保証で得られる収入としては決して小さくありません。
人生後半戦においては、「増やすこと」よりも「守ること」の重要性が高まります。
その意味で現金の役割は再び大きくなるでしょう。
現金は暴落時の最強の武器になる
投資家にとって現金の最大の価値は利息ではありません。
最大の価値は「いつでも動けること」です。
株式市場は必ず上下します。
リーマンショックやコロナショックのような急落局面では、多くの投資家が恐怖に支配されます。
そのとき現金を持っている人だけが優良資産を安く買うことができます。
反対に資金余力のない人は、暴落をチャンスに変えることができません。
現金とは収益を生まない資産ではなく、未来の投資機会を買うためのオプションとも言えます。
人生100年時代では長い投資期間があります。
だからこそ現金という余力を持つことが重要になるのです。
シニア世代ほど現金比率は重要になる
若い世代は多少の価格変動に耐えながら長期投資を続けることができます。
しかしシニア世代は違います。
70代、80代になると大きな暴落を待つ時間が限られます。
また介護費用や医療費、住宅修繕費など予測できない支出も増えてきます。
そのため生活資金まで投資に回してしまうことは危険です。
人生後半戦では、
「いくら増やせるか」
よりも
「いつでも使えるか」
が重要になります。
現金は安心を買う資産でもあるのです。
現金だけでは資産は守れない
一方で現金を過信することも危険です。
インフレが続けばお金の価値は目減りします。
仮に物価が毎年2%上昇すると、35年後にはお金の価値は半分近くになります。
人生100年時代では老後期間が30年以上続くことも珍しくありません。
現金だけで資産を守ることは難しいのです。
重要なのは、
現金
預金
債券
株式
投資信託
などを適切に組み合わせることです。
現金は万能ではありませんが、資産全体を支える土台として欠かせない存在です。
資産形成から資産防衛への発想転換
現役時代は資産形成が中心になります。
収入を増やし、投資で資産を拡大していくことが重要です。
しかし60歳を超える頃からは考え方を変える必要があります。
これからは
「いくら増やすか」
ではなく
「どう守るか」
が大切になります。
現金はそのための防波堤です。
暴落に備え、生活費を確保し、将来の投資機会を逃さないための安全資産です。
金利上昇によって、その価値は再び見直され始めています。
結論
超低金利時代には軽視されてきた現金ですが、金利のある世界ではその存在意義が復活しつつあります。
現金は単なる待機資金ではありません。生活を守り、投資機会を生かし、不測の事態に備えるための重要な資産です。
人生100年時代では、資産形成だけでなく資産防衛の視点が欠かせません。
現金は増やすための資産ではなく、人生を安定して生き抜くための基盤です。
これからの時代、本当に豊かな人とは多くの資産を持つ人ではなく、必要な時に使える現金を適切に確保している人なのかもしれません。
参考
日本経済新聞 2026年6月17日朝刊
「利上げ、家計にどう影響 現役世代はローン利払い増加 60代以上、定期預金押し上げ」