海外ETFだけで老後資産を作ると何が起きるのか 国際分散投資編

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人生100年時代を迎え、老後資産づくりの中心として海外ETFを活用する人が増えています。新NISAの普及もあり、全世界株式や米国株式のETFに毎月積み立てている人は珍しくありません。

確かに海外ETFは低コストで分散投資ができ、長期投資との相性も良い優れた商品です。しかし一方で、「海外ETFだけで老後資産を作る」という考え方には見落とされがちなリスクもあります。

投資の成功とは資産額を増やすことだけではありません。老後に安心して使える状態で資産を保有することが本当の目的です。

今回は海外ETFを中心に老後資産を形成する場合に起こり得ることについて考えてみます。

海外ETFが人気を集める理由

海外ETFの最大の魅力は世界経済の成長を取り込めることです。

例えば米国市場には世界を代表する企業が数多く存在します。

AI、半導体、クラウド、医療、宇宙開発など、今後の成長が期待される産業の多くは海外企業が主導しています。

個別株を選ばなくてもETFを購入するだけで幅広い企業へ投資できます。

さらに運用コストが低く、長期的には高い成長が期待できます。

そのため老後資産形成の主役として海外ETFが選ばれているのです。

老後資産が為替で大きく変わる

海外ETFで資産形成をする場合、多くの人が株価には注目します。

しかし老後に実際に使うお金は円です。

仮に資産が1億円相当に増えたとしても、円高になれば受け取れる金額は大きく減少します。

例えば1ドル150円で評価されていた資産が、老後に1ドル100円になれば円換算額は大幅に目減りします。

投資期間中は円安が味方になることもありますが、取り崩し時期に円高になる可能性もあります。

老後資産を考える際には、株価だけでなく為替リスクも管理しなければなりません。

税金という見えないコスト

海外ETFでは税金も重要な要素です。

配当金には外国税が課される場合があります。

また売却益や為替差益も課税対象になります。

近年の最高裁判決では、外貨を別の外貨に交換した場合でも為替差益に課税できるとの判断が示されました。

海外資産が増えるほど税務管理は複雑になります。

老後資産は額面の資産残高ではなく、税引後に実際に使える金額で考える必要があります。

海外ETFだけでは生活防衛資金が不足する

長期投資では値動きは避けられません。

老後に大きな相場下落が起きた場合、生活費のために安値で売却せざるを得ないことがあります。

これを「取り崩しリスク」と呼びます。

現役時代は毎月積み立てることで価格変動を味方にできますが、老後は逆になります。

生活費として現金を引き出さなければならないからです。

そのため老後資産のすべてを海外ETFで保有することは危険です。

預金や個人向け国債などの安全資産との組み合わせが重要になります。

本当に必要なのは国際分散ではなく資産分散

海外ETFを保有している人の中には、「国際分散しているから安心」と考える人もいます。

しかし国際分散と資産分散は別の話です。

海外ETFの多くは株式中心です。

地域は分散されていても、資産の種類は株式に偏っている場合があります。

老後資産では、

・株式

・債券

・現金

・年金

・不動産

など複数の収入源や資産を持つことが重要です。

人生100年時代では30年以上にわたって資産を維持する必要があります。

そのためには価格変動に強い資産構成が求められます。

老後は資産形成から資産管理へ変わる

現役時代は資産を増やすことが最大の目標です。

しかし老後は違います。

重要なのは、

・資産を長持ちさせること

・安定した収入を確保すること

・大きな損失を避けること

です。

海外ETFは資産形成の強力な武器ですが、老後資産全体を任せる万能商品ではありません。

資産形成期と資産活用期では考え方を変える必要があります。

人生100年時代に求められる視点

人生100年時代では、65歳で引退しても30年以上の人生が続く可能性があります。

その長い期間を支えるためには、成長性だけでなく安定性も必要です。

海外ETFは世界経済の成長を取り込む優れた手段ですが、それだけで老後を支えることは難しいかもしれません。

年金、預金、債券、そして海外ETFを組み合わせながら、自分自身に合った資産配分を考えることが重要になります。

結論

海外ETFは老後資産形成において非常に有効な投資手段です。しかし海外ETFだけで老後資産を作ろうとすると、為替リスク、税務リスク、取り崩しリスクなどさまざまな課題に直面します。

人生100年時代に必要なのは、高いリターンだけを追い求めることではありません。資産を増やす力と守る力の両方を備えた仕組みを作ることです。

海外ETFはその中心的な役割を果たしますが、最終的に老後を支えるのはバランスの取れた資産設計なのではないでしょうか。

参考

日本経済新聞(2026年6月17日朝刊)

「外国通貨を別の外貨に交換、円で為替差益なら課税適法 最高裁が初判断」

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