なぜ同じ税法でも税理士によって見解が分かれるのか 税務判断編

税理士
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税金について相談した際、

「税理士Aは経費になると言った」

「税理士Bは経費にならないと言った」

という話を耳にすることがあります。

一般の人からすると不思議に感じるかもしれません。

税法は法律です。

法律なら答えは一つであるはずです。

それなのに、なぜ税理士によって見解が分かれるのでしょうか。

これは税理士の能力差だけで説明できる問題ではありません。

実は税務実務そのものが、解釈や判断を伴う世界だからです。

今回は、なぜ専門家同士でも意見が分かれることがあるのかについて考えてみます。

税法は思ったほど単純ではない

税法には数多くの法律があります。

所得税法

法人税法

消費税法

相続税法

地方税法

などです。

しかし、これらの法律は必ずしもすべてを明確に定めているわけではありません。

例えば、

「必要経費」

という言葉一つをとっても、

どこまでが事業のための支出なのか

どこからが個人的支出なのか

を法律だけで完全に判断することはできません。

現実の経済活動は法律よりも複雑だからです。

同じ法律でも解釈が分かれる

法律の条文には抽象的な表現が少なくありません。

例えば、

「通常必要と認められる費用」

「相当の理由」

「著しく低い価額」

などです。

これらの表現は具体的な金額や範囲を示しているわけではありません。

そのため、

税理士Aは認められると考える

税理士Bは認められないと考える

という違いが生じることがあります。

これは税法に限らず、民法や会社法などでも同様です。

法律の世界では解釈が重要な役割を果たしています。

事実認定で結論が変わる

税務実務では、

法律解釈よりも事実認定の方が重要

と言われることがあります。

例えば、

接待交際費なのか

福利厚生費なのか

広告宣伝費なのか

という問題があります。

同じ10万円の支出でも、

誰と

何の目的で

どのように支出したのか

によって結論が変わります。

税理士による見解の違いは、法律の解釈よりも事実関係の評価の違いから生じることも少なくありません。

通達の読み方にも差がある

前回の記事で説明したように、通達は法律ではありません。

しかし実務上は非常に重要です。

もっとも、通達も必ずしも明確とは限りません。

ある税理士は通達を厳格に解釈するかもしれません。

別の税理士は通達の趣旨を重視して柔軟に考えるかもしれません。

また、

「このケースは通達の想定範囲外だ」

という判断になることもあります。

その結果、同じ通達を読んでも異なる結論に至ることがあります。

判例の評価が分かれることもある

税務訴訟の判例も重要な判断材料です。

しかし、判例が存在するからといって、必ずしも答えが一つになるわけではありません。

判例は個別の事実関係に基づいて判断されています。

例えば、

似ているようで少し違う事実関係

新しい取引形態

新しいビジネスモデル

が登場すると、

「この判例がそのまま当てはまるのか」

という議論になります。

税理士によって判例の評価が分かれることもあります。

リスクに対する考え方が違う

税理士によって見解が分かれる大きな理由の一つがリスク許容度です。

税務の世界には、

絶対に安全な処理

一定のリスクはあるが合理的な処理

税務調査で争いになる可能性が高い処理

があります。

例えば、

税理士Aは

「税務調査リスクを避けるべき」

と考えるかもしれません。

一方、

税理士Bは

「法律上十分に主張可能」

と考えるかもしれません。

どちらが正しいというよりも、リスクに対する考え方の違いが結論に影響するのです。

医師の診断と似ている部分がある

税理士の判断は医師の診断に似ています。

同じ症状を見ても、

医師Aは手術を勧める

医師Bは経過観察を勧める

ことがあります。

どちらも専門知識に基づいています。

税務も同じです。

同じ法律と事実を見ても、

税理士によって重視するポイントが異なることがあります。

だからこそ、セカンドオピニオンが有効な場合もあります。

AI時代でも見解は分かれるのか

近年はAIが税務相談に活用され始めています。

しかし、AIが普及しても見解の違いが完全になくなることはないでしょう。

なぜなら、

法律解釈

事実認定

リスク評価

将来予測

といった要素が含まれるからです。

AIは条文や判例を整理することは得意です。

しかし、

「この案件ならどこまで主張するか」

という判断は依然として人間の専門家に求められる部分が残ります。

良い税理士とは何か

では、良い税理士とはどのような税理士でしょうか。

それは、

常に正解を知っている税理士

ではありません。

税法にはグレーゾーンも存在します。

重要なのは、

なぜその判断になるのか

どのようなリスクがあるのか

他の考え方はあるのか

を説明できることです。

見解が分かれること自体は問題ではありません。

根拠を示しながら説明できることが専門家として重要なのです。

結論

同じ税法でも税理士によって見解が分かれることがあります。

それは税法が不完全だからではなく、現実の経済活動が法律の想定を超えて多様だからです。

法律解釈

事実認定

通達の理解

判例の評価

リスク判断

これらが組み合わさることで、複数の見解が生まれます。

税務の世界は単なる計算の世界ではありません。

法律と現実社会を結び付ける判断の世界でもあります。

だからこそ税理士の仕事には専門性が求められ、同時に奥深さも存在するのです。

参考

・金子宏『租税法』(弘文堂)

・中里実ほか『租税法概説』(有斐閣)

・増井良啓『租税法入門』(有斐閣)

・国税庁「法令解釈通達」

・国税不服審判所「裁決事例集」

・最高裁判所 税務訴訟関係判例集

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