令和7年度法人税改正の実務ポイント完全解説⑤ 経営強化税制は何が変わったのか(制度再設計編)

税理士
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中小企業向けの設備投資税制の中でも、最も強力な制度の一つが経営強化税制です。これまで即時償却や税額控除といった大きなメリットがあり、多くの企業で活用されてきました。

しかし令和7年度改正では、この制度が単なる延長ではなく「再設計」されています。本稿では、その変更点を整理しながら、制度の本質的な変化を読み解きます。


今回の改正は“制度の作り替え”に近い

今回の改正は、単なる要件の調整ではありません。制度の目的そのものが明確に変わっています。

従来の経営強化税制は、

  • 生産性向上
  • 収益力強化
  • デジタル化
  • M&A促進

といった複数の目的を並列的に支援する仕組みでした。

しかし今回の改正では、これらの中から一部が整理され、明確に「成長志向」に軸足が移されています。


C類型の廃止が意味するもの

今回の改正で象徴的なのが、デジタル化設備に関するC類型の廃止です。

デジタル化は依然として重要なテーマであるにもかかわらず、あえて独立した類型としては残されませんでした。

これは、

  • デジタル化そのものではなく
  • 収益や成長につながる投資であるか

が重視されるようになったことを意味します。

つまり、「何に投資するか」ではなく、「その投資がどのような成果を生むか」が評価軸に変わっています。


B類型の再設計と「100億円企業」政策

今回の改正の中心は、B類型の見直しです。

従来のB類型は、投資収益率5%以上といった要件を満たす設備投資が対象でしたが、改正後はこれが強化され、さらに新たな枠組みが追加されています。

特に重要なのが、「売上100億円企業の創出」を前提とした制度です。

この新しい枠組みでは、

  • 売上100億円を目指す計画
  • 年平均10%以上の売上成長
  • 投資利益率7%以上

といった条件が求められます。

これは、従来の「改善」レベルの投資ではなく、「飛躍的成長」を前提とした投資だけを対象とする制度設計です。


建物が対象に追加された意味

今回の改正で実務上非常に重要なのが、対象設備に建物が追加された点です。

従来は、機械装置やソフトウェアなどが中心であり、建物は対象外とされていました。

しかし改正後は、一定の条件を満たす場合に建物やその附属設備も対象となります。

これは、

  • 大規模投資を促す
  • 生産拠点の拡張を支援する
  • 成長企業のインフラ整備を後押しする

といった政策意図を反映したものです。

つまり、制度の対象が「設備更新」から「事業拡張」へと広がっています。


要件の厳格化とハードルの高さ

今回の改正により、制度の適用要件は明らかに厳しくなっています。

例えば、

  • 投資利益率は5%から7%へ引き上げ
  • 売上規模や成長率の要件
  • 投資規模の下限設定
  • 賃上げ要件の追加

など、多くの条件が課されています。

さらに、これらの要件は単独ではなく、複合的に満たす必要があります。

その結果、

  • 誰でも使える制度ではなく
  • 条件を満たす企業のみが使える制度

へと変化しています。


なぜここまで厳しくなったのか

このような厳格化の背景には、政策目的の明確化があります。

従来の制度は広く利用される一方で、

  • 効果が限定的な投資にも適用される
  • 本来の政策目的と乖離するケースがある

といった課題が指摘されていました。

今回の改正では、

  • 本当に成長につながる投資に限定する
  • 税制効果を集中させる

という方向に舵が切られています。


実務への影響は何か

この制度変更は、実務に大きな影響を与えます。

まず、適用できる企業が限定されるため、「使えるかどうか」の判断が重要になります。

次に、事前準備の重要性が高まります。計画の策定や認定手続が必要となるため、投資決定のタイミングにも影響します。

さらに、他の税制との比較検討が不可欠になります。条件を満たさない場合には、投資促進税制など他制度への切り替えが必要になります。


制度は“選ばれる企業”を前提にしている

今回の改正後の経営強化税制は、明らかに「選別型」の制度です。

すべての企業を支援するのではなく、

  • 成長意欲がある
  • 投資余力がある
  • 計画的に事業拡大を行う

こうした企業に対して重点的に支援を行う設計となっています。


結論

経営強化税制は、令和7年度改正によって大きく性格を変えました。

従来は「使える制度」でしたが、今後は「条件を満たせば非常に有利な制度」に変わっています。

そのため実務では、

  • 自社が対象になるかどうかを見極める
  • 他制度との比較を行う
  • 投資計画と一体で検討する

といった対応が不可欠となります。

制度の本質を理解したうえで適切に活用することが、今後の税務戦略において重要なポイントとなります。


参考

東京税理士会 全国統一研修会資料 令和8年度法人課税改正関係資料(配布資料)

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