住宅用地特例とは何か ― 1/6軽減の本当の意味

税理士
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固定資産税の中でも、特に大きな影響を持つ制度が「住宅用地特例」です。

住宅が建っている土地については、固定資産税が大幅に軽減されます。

特に小規模住宅用地では、

課税標準額=評価額×16課税標準額 = 評価額 \times \frac{1}{6}

という大きな軽減措置があります。

この制度によって、日本の住宅保有コストは大きく抑えられています。

一方で、この特例は、

  • 空き家放置
  • 更地化回避
  • 老朽住宅残存

など、日本の不動産問題とも深く結び付いています。

本稿では、住宅用地特例の仕組みと、「なぜ住宅だけが優遇されるのか」という制度の本質について考えます。


住宅用地特例とは何か

住宅用地特例とは、住宅が建っている土地について固定資産税を軽減する制度です。

対象となるのは、

  • 一戸建住宅
  • マンション
  • アパート

などの敷地です。

特例は大きく2つに分かれます。


小規模住宅用地

住宅1戸あたり200㎡までの部分です。

固定資産税の課税標準額が、

課税標準額=評価額×16課税標準額 = 評価額 \times \frac{1}{6}

となります。

さらに都市計画税も、

課税標準額=評価額×13課税標準額 = 評価額 \times \frac{1}{3}

まで軽減されます。

これは極めて大きな優遇措置です。


一般住宅用地

200㎡を超える部分については、

課税標準額=評価額×13課税標準額 = 評価額 \times \frac{1}{3}

となります。

小規模住宅用地ほどではありませんが、それでも大幅な軽減です。


なぜ住宅だけ優遇されるのか

住宅用地特例の背景には、「住宅政策」があります。

戦後の日本では、

  • 住宅不足
  • 都市人口集中
  • 持家促進

が重要政策でした。

そのため政府は、

  • 住宅ローン減税
  • 持家政策
  • 住宅用地特例

などを通じて住宅取得を支援してきました。

つまり住宅用地特例は、単なる税軽減ではなく、

「住宅を持ちやすくする政策」

として設計されているのです。


「住むこと」を優遇する税制

固定資産税は本来、「資産保有課税」です。

しかし住宅用地特例によって、

  • 投機目的土地
  • 事業用土地

よりも、

  • 居住用土地

が大幅に優遇されています。

つまり日本の固定資産税制度は、

「住むこと」

を政策的に保護しているとも言えます。

これは日本の戦後社会における、

  • 持家中心社会
  • 中間層形成
  • 住宅資産形成

という思想とも結び付いています。


なぜ更地にすると税金が上がるのか

よく知られているのが、

「家を壊すと固定資産税が高くなる」

という問題です。

これは住宅用地特例がなくなるためです。

例えば、

  • 老朽空き家
  • 誰も住んでいない家

でも、住宅が残っている限りは特例が適用される場合があります。

しかし解体して更地にすると、特例が消滅します。

その結果、固定資産税が数倍になるケースもあります。


空き家放置問題との関係

この制度は、日本の空き家問題とも深く関係しています。

本来であれば、

  • 危険空き家
  • 老朽住宅
  • 利用されていない住宅

は撤去した方が望ましい場合があります。

しかし更地化すると税負担が増えるため、

「壊さず放置する」

という行動が合理的になってしまうことがあります。

つまり住宅用地特例は、

  • 居住支援政策

である一方、

  • 空き家温存政策

として作用してしまう側面もあるのです。


空家法と特定空家

近年、この問題への対応として「空家等対策特別措置法」が整備されました。

管理不全空家や特定空家に指定されると、住宅用地特例が解除される場合があります。

つまり、

「危険な空き家には優遇を適用しない」

方向へ制度が変化しています。

これは、

  • 防災
  • 景観
  • 衛生
  • 地域安全

などを重視する流れです。

固定資産税は、都市政策とも一体化し始めているのです。


都市部と地方で異なる意味

住宅用地特例は、都市部と地方で意味合いも異なります。

都市部では、

  • 地価高騰
  • 住宅負担増
  • 長期居住支援

の意味が強くなります。

一方地方では、

  • 空き家放置
  • 人口流出
  • 土地余剰

の問題が深刻です。

つまり同じ制度でも、

  • 都市では「住宅維持支援」
  • 地方では「空き家固定化」

として作用する場合があります。


マンションと住宅用地特例

マンションでは、住宅用地特例がさらに強く作用することがあります。

高層マンションでは、多数の住戸で土地を分割して持つため、

「土地持分が小さい」

という特徴があります。

その結果、

  • 高額マンション
  • 都心タワマン

でも、土地部分の固定資産税負担が相対的に抑えられることがあります。

これが近年の「タワマン課税問題」にもつながっています。


人口減少時代の住宅政策

住宅用地特例は、高度成長期には合理的な制度でした。

しかし人口減少社会では、

  • 空き家増加
  • 土地需要減少
  • インフラ維持負担増

など、新しい問題が発生しています。

その結果、

「住宅保有優遇を今後も維持するべきか」

という議論も強まっています。

今後は、

  • 空き家対策
  • コンパクトシティ政策
  • 土地利用誘導

などと連動しながら制度が見直される可能性があります。


住宅用地特例は「社会政策」

住宅用地特例は単なる税軽減ではありません。

そこには、

  • 持家促進
  • 居住安定
  • 中間層形成
  • 都市政策
  • 地方財政

など、さまざまな政策思想があります。

一方で、その優遇が、

  • 空き家放置
  • 老朽住宅残存
  • 土地流動化阻害

などを引き起こしている面もあります。

税制は、人々の行動を大きく変える制度でもあるのです。


結論

住宅用地特例は、日本の固定資産税制度の中でも極めて重要な制度です。

住宅保有を支援することで、

  • 持家社会
  • 居住安定
  • 中間層形成

を支えてきました。

一方で、

  • 空き家問題
  • 更地回避
  • 老朽住宅放置

など、人口減少時代特有の副作用も拡大しています。

今後の固定資産税制度では、

「住宅を守る税制」

から、

「土地利用を最適化する税制」

への転換が議論される可能性もあるでしょう。

次回は、「家屋評価はなぜ納得しにくいのか ― 再建築価格方式の仕組み」を整理します。


参考

  • 総務省「固定資産税の概要」
  • 地方税法
  • 総務省自治税務局 固定資産税関係資料
  • 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法」
  • 内閣府 税制調査会資料「住宅政策と固定資産税」
  • 一般財団法人資産評価システム研究センター資料

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