2027年の年末調整は何が変わる みなし提出と30枚基準とeLTAXをまとめて整理

税理士
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2027年の給与税務では、給与所得の源泉徴収票をめぐる実務が大きく変わります。

中心となるのが、2027年1月から始まる給与所得の源泉徴収票の「みなし提出の特例」です。

給与支払報告書を市区町村へ提出すると、給与所得の源泉徴収票を税務署へ提出したものとみなされます。

さらに、法定調書の電子的提出義務の基準枚数が100枚以上から30枚以上へ引き下げられます。

そしてeLTAXを利用すれば、単に電子提出できるだけでなく、従業員の給与情報をマイナポータル連携の対象とすることもできます。

個々の改正を見ると複雑に感じますが、「何を作るのか」「どこへ提出するのか」「電子提出義務があるのか」の3つに分けると全体像が見えてきます。

最大の変更は源泉徴収票のみなし提出

まず押さえておきたいのが、給与所得の源泉徴収票のみなし提出です。

2027年1月1日以後、企業が給与支払報告書を市区町村へ提出すると、給与所得の源泉徴収票を税務署へ提出したものとみなされます。

これまでは、給与支払報告書を市区町村へ提出し、一定の提出基準に該当する給与所得の源泉徴収票を税務署へ提出するという2つの事務がありました。

2027年からは、市区町村への給与支払報告書の提出を起点として、税務署への源泉徴収票提出にもつなげる仕組みに変わります。

企業にとっては、給与情報を重複して提出する事務が減ることになります。

源泉徴収票の提出範囲も変わる

みなし提出の開始に伴い、給与所得の源泉徴収票の提出範囲も変更されます。

改正後は、その年の給与等の支払金額が30万円以下である中途退職者を除くすべての給与等が提出範囲になります。

これによって、給与所得の源泉徴収票と給与支払報告書の提出範囲がそろえられることになります。

ただし、提出範囲が広がるからといって、企業がそのすべての源泉徴収票を税務署へ直接提出するわけではありません。

給与支払報告書を市区町村へ提出することで、税務署への源泉徴収票についてはみなし提出となります。

提出範囲の拡大と、税務署への直接提出の省略が同時に行われる点が今回の改正を分かりにくくしています。

従業員への源泉徴収票は引き続き必要

みなし提出が始まっても、給与所得の源泉徴収票そのものがなくなるわけではありません。

受給者本人である従業員への源泉徴収票の交付は、これまでどおり必要です。

したがって、2027年以降も企業では源泉徴収票を作成し、従業員へ交付することになります。

変わるのは税務署への提出方法です。

「税務署への直接提出が不要になる」

「源泉徴収票を作成しなくてよくなる」

「従業員へ交付しなくてよくなる」

という3つは全く違います。

年末調整担当者は、この違いを明確に理解しておく必要があります。

電子的提出義務は100枚から30枚へ

もう1つの大きな変更が、法定調書の電子的提出義務です。

2027年1月1日以後、その基準枚数が従来の100枚以上から30枚以上へ引き下げられます。

対象範囲が大きく広がるため、これまで書面提出を続けてきた企業でも、新たに電子提出義務が生じる可能性があります。

2027年の提出方法を考える場合には、まず自社が30枚基準に該当するのかを確認する必要があります。

資料では、2025年の法定調書提出枚数を確認し、2027年の提出方法を確認することが準備項目として示されています。

30枚はその年の従業員数ではない

ここで注意したいのが、30枚という基準の考え方です。

単純に「従業員が30人以上なら電子提出」と判断するわけではありません。

電子的提出義務は、基準年に提出すべきであった法定調書の枚数によって判定します。

基準年は、提出期限の前々年です。

したがって、2027年の電子的提出義務を確認するときには2025年の枚数を確認します。

2028年であれば2026年、2029年であれば2027年が基準年になります。

年末調整担当者は、その年の従業員数だけではなく、過去の提出枚数を管理しておく必要があります。

みなし提出後は税務署への実提出枚数にも注意

2027年からみなし提出が始まると、企業が税務署へ直接提出する給与所得の源泉徴収票が0枚になるケースも出てきます。

しかし、それを理由に将来の電子提出義務の判定枚数まで0枚になるわけではありません。

資料では、給与支払報告書を市区町村へ提出したことでみなし提出となった源泉徴収票も、電子提出義務の判定上の枚数に含まれることが示されています。

したがって、今後は「税務署へ実際に何枚送ったか」だけを記録していても十分ではありません。

将来の電子提出義務を判定できるよう、基準年の判定に必要な枚数を把握しておく必要があります。

みなし提出のためにeLTAXは必須ではない

2027年改正ではeLTAXという言葉が多く登場しますが、みなし提出そのものにeLTAXが必須というわけではありません。

給与支払報告書をeLTAXで提出した場合だけでなく、光ディスク等や書面で市区町村へ提出した場合にも、みなし提出の特例は適用されます。

したがって、みなし提出を利用するためだけにeLTAXへ切り替える必要はありません。

ただし、電子的提出義務の対象となる企業については、その義務を踏まえて提出方法を検討する必要があります。

みなし提出の適用条件と電子的提出義務は、別々の制度として整理することが大切です。

eLTAXには別のメリットがある

一方、電子的提出義務の有無とは別に、eLTAXを利用するメリットがあります。

給与支払報告書をeLTAXで提出すれば、提出先となる市区町村への自動振分けが行われます。

紙の給与支払報告書を市区町村ごとに仕分けする作業などを減らすことができます。

印刷、押印、封入、送付といった作業や、紙の保管場所、誤封入などのリスクの軽減にもつながります。

さらに重要なのが、従業員の確定申告との連携です。

給与情報がマイナポータル連携の対象になる

eLTAXで給与支払報告書を提出すると、従業員が確定申告を行う際に給与情報がマイナポータル連携の対象になります。

給与情報を確定申告書へ自動入力できるため、従業員側の申告事務の負担軽減につながります。

一方、資料では、光ディスク等や書面による給与支払報告書の提出は、この給与情報のマイナポータル連携の対象外とされています。

したがって、企業が提出方法を選ぶ際には、自社の提出事務だけでなく、従業員側の利便性も判断材料になります。

eLTAXの意味は、単なるペーパーレス化だけではありません。

法定調書合計表にも影響する

2027年以降は、法定調書合計表についても従来と同じ感覚で作成しないよう注意が必要です。

給与支払報告書を市区町村へ提出し、給与所得の源泉徴収票がみなし提出となった場合、その源泉徴収票を税務署へ直接提出する必要はありません。

給与所得の源泉徴収票以外に税務署へ提出する法定調書がなければ、法定調書合計表も不要になります。

一方、退職所得の源泉徴収票や報酬等の支払調書など、ほかの法定調書を税務署へ提出する場合には合計表が必要です。

その場合には、実際に税務署へ提出する法定調書について合計表を作成します。

給与ソフトの設定についても、この変更に対応しているか確認しておく必要があります。

2026年中の準備が重要になる

2027年1月に制度が始まるからといって、2027年になってから確認を始めるのでは十分とはいえません。

資料では、2026年9月から10月に2027年の電子的提出義務を確認し、2025年の法定調書提出枚数から2027年の提出方法を確認することが示されています。

そのうえで、2026年11月には2027年の提出方法を選定します。

eLTAXを利用するのであれば、給与情報のマイナポータル連携について従業員へ案内する準備も必要です。

さらに、給与ソフト等の設定や送信方法も確認しておく必要があります。

年末調整の作業そのものだけでなく、その後の給与支払報告書や法定調書の提出まで含めて準備することが重要です。

2027年改正は3つに分けると分かりやすい

今回の制度変更は、複数の改正が重なっているため複雑に見えます。

しかし、実務では3つに分けて考えると整理できます。

1つ目は、給与支払報告書を市区町村へ提出することで源泉徴収票を税務署へみなし提出とする仕組みです。

2つ目は、電子的提出義務の基準が100枚以上から30枚以上へ引き下げられることです。

3つ目は、eLTAXを利用することで提出事務を効率化し、給与情報のマイナポータル連携にもつなげられることです。

この3つは関係していますが、同じ制度ではありません。

それぞれを切り分けて理解することが、実務上の混乱を防ぎます。

結論

2027年の給与税務では、給与所得の源泉徴収票をめぐる提出実務が大きく変わります。

給与支払報告書を市区町村へ提出すれば、給与所得の源泉徴収票について税務署へ提出したものとみなされます。

これによって、企業が同じような給与情報を税務署と市区町村へ重複して提出する事務が減ります。

一方、従業員への源泉徴収票の交付は引き続き必要です。

さらに、法定調書の電子的提出義務の基準は100枚以上から30枚以上へ引き下げられます。

その判定には基準年という考え方があるため、その年の従業員数だけを見て判断することはできません。

そして、みなし提出そのものにeLTAXは必須ではありませんが、eLTAXを利用すれば、提出事務の効率化に加えて給与情報のマイナポータル連携というメリットがあります。

2027年改正では、「みなし提出」「30枚基準」「eLTAX」を一緒に考えながらも、それぞれの制度を混同しないことが重要です。

年末調整が終わった後に何をどこへ提出するのかまで含めて業務全体を見直すことが、2027年からの新しい給与税務への対応につながります。

次回は、「年末調整のデジタル化はどこまで進む みなし提出の先にある給与税務の姿」について詳しく見ていきます。

参考

企業実務 2026年10月号 2027年1月施行 給与所得の源泉徴収票「みなし提出の特例」の実務対応

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