一人暮らしの高齢者を見守るサービスでは、人感センサーや電球、家電製品などから生活の異変を検知できます。
しかし、異変が分かっただけでは高齢者を助けることはできません。
例えば「24時間以上、室内で生活反応がありません」という通知が家族に届いたとしても、家族が遠方に住んでいればすぐに確認へ行けないことがあります。
そこで重要になるのが「駆け付けサービス」です。
ICTによって異変を見つけ、必要な場合には実際に人が現地へ向かう。
高齢者見守りを考えるうえでは、この最後の部分まで含めて仕組みをつくる必要があります。
駆け付けサービスとは何か
駆け付けサービスとは、高齢者の自宅で異変が疑われる場合などに、事業者のスタッフが現地へ向かって安否を確認するサービスです。
見守りサービスと組み合わせて提供されることがあります。
例えば人感センサーが長時間反応していないとします。
まず本人へ電話などで連絡します。
本人が電話に出て無事だと確認できれば、それ以上の対応は必要ありません。
しかし何度連絡しても応答がない場合には、本当に室内で倒れている可能性があります。
そこでスタッフが自宅へ向かい、状況を確認します。
異変を「知らせる」だけで終わらず、「確認する」ところまでつなげるのがポイントです。
家族が遠方にいると通知だけでは足りない
従来、高齢者の見守りでは家族の存在が大きな役割を果たしてきました。
近くに子どもが住んでいれば、電話に出ないときに自宅まで様子を見に行くことができます。
しかし現在は、親と子どもが離れて暮らしていることも珍しくありません。
例えば親が地方で一人暮らしを続け、子どもは東京や大阪などで働いているケースがあります。
センサーから異常を知らせるメールが届いても、数百キロ離れた場所からすぐに駆け付けることはできません。
近所の人に毎回確認を頼めるとも限りません。
ICTによって距離を超えて異変を知ることはできても、最後に本人のところへ行くという物理的な距離の問題は残ります。
この部分を補うのが駆け付けサービスです。
警備会社などが役割を担う
駆け付けサービスでは、警備会社などが重要な役割を担います。
警備会社はもともと、住宅や建物の異常を遠隔で監視し、必要な場合にスタッフが現地へ向かう仕組みを持っています。
この仕組みを高齢者の見守りにも利用できます。
例えば高齢者自身が緊急ボタンを押した場合にスタッフが向かう方法があります。
センサーなどで異常が検知された場合に、状況を確認する方法も考えられます。
高齢者本人が電話をかけたり、詳しく状況を説明したりできない場合でも、一定の条件を満たせば支援につなげられることが利点です。
特に一人暮らしでは、本人が助けを求められない状態になった場合を想定しておく必要があります。
見守り機器だけでは助けられない
高性能なセンサーを設置すれば安心だと思うかもしれません。
しかしセンサーができるのは、基本的には情報を取得して異変を知らせるところまでです。
例えば室内で高齢者が転倒したとします。
長時間動きがなければ、人感センサーなどから異常を検知できる可能性があります。
しかしセンサー自身が高齢者を起こすことはできません。
玄関を開けることも、救急車を呼ぶ必要があるかを本人に代わってすべて判断することもできません。
最後には人の対応が必要になります。
見守りサービスを選ぶ場合には、どのようなセンサーを使っているかだけではなく、異変が発生した後に誰が何をするのかを確認することが重要です。
家族への通知型との違い
見守りサービスには、異変を家族へ通知することを中心としたものがあります。
こうしたサービスは比較的簡単な仕組みにできるため、利用料金を抑えやすいというメリットがあります。
家族が近くに住んでいる場合には、それでも十分かもしれません。
一方、家族が遠方にいる場合には事情が違います。
通知を受けても現地確認ができなければ、結局は別の人へ依頼する必要があります。
そのため見守りサービスを考えるときには、機器の性能だけではなく家族との距離も重要になります。
近距離に家族がいる人と、頼れる家族が遠方にしかいない人では、必要なサービスが違うわけです。
駆け付けには費用がかかる
当然ながら、人が現地へ向かう仕組みには費用がかかります。
センサーから家族へメールを送るだけなら、比較的低コストでサービスを提供できます。
しかし24時間いつでもスタッフが対応できる体制を維持するには人件費が必要です。
利用者が全国に点在していれば、拠点やスタッフの配置も必要になります。
そのため駆け付けサービスを組み合わせると、見守りサービスの料金が高くなる可能性があります。
ここに高齢者見守りの難しい問題があります。
支援が必要な人ほど一人暮らしで、頼れる家族が近くにいない可能性があります。
一方、その人が必ずしも高い利用料金を負担できるとは限りません。
自治体との連携も重要になる
単身高齢者が増えれば、見守りをすべて個人と家族の負担だけで行うことには限界が出てきます。
特に低所得の一人暮らし高齢者では、民間の見守りサービスを継続して利用することが難しい場合があります。
そこで自治体が見守りサービスを提供したり、利用料金の一部を支援したりする取り組みも重要になります。
地域包括支援センター、民生委員、居住支援法人、民間事業者などとの連携も考えられます。
すべての高齢者を自治体職員が直接訪問するのではありません。
ICTによって日常的な見守りを効率化し、本当に確認が必要な人に人的支援を集中する考え方が重要です。
誤報があるからこそ段階的に確認する
前回取り上げたように、センサーによる見守りには誤報があります。
旅行や外泊をしているだけでも、生活反応がなくなれば異常と判断される可能性があります。
そのたびにスタッフが自宅へ駆け付けていては、費用も人手も増えてしまいます。
そこで段階的な確認が重要になります。
まずセンサーが異変を検知する。
次に電話などで本人の安否を確認する。
それでも確認できなければ家族などへ連絡する。
必要性が高い場合に現地へ駆け付ける。
このように段階を設けることで、限られた人員を本当に必要な場面へ振り向けやすくなります。
見守りは技術だけでは完成しない
高齢者見守りでは、新しいセンサーやAIなど技術面が注目されがちです。
しかし重要なのは、技術そのものではありません。
異変を発見した後に、人につながる仕組みがあるかどうかです。
どれだけ正確に異変を検知できても、その情報を誰も確認しなければ意味がありません。
逆に、人が毎日すべての高齢者を訪問することも現実的ではありません。
そこで機械と人の役割分担が必要になります。
日常的な確認はICTが担う。
異変の可能性があれば人に知らせる。
最終的に必要な場合には人が現地へ向かう。
この流れ全体が、高齢者見守りの仕組みになります。
結論
駆け付けサービスとは、高齢者の異変が疑われたときに、実際に人が現地へ向かって安否を確認する仕組みです。
一人暮らしの高齢者が増え、家族が遠方に暮らすケースが増えれば、異変を家族へ通知するだけでは十分ではない場合があります。
センサーは異変を見つけることができます。
通信技術は離れた家族へ情報を届けることができます。
しかし最後に高齢者のそばへ行く必要が生じれば、人の力が必要です。
これからの高齢者見守りで重要なのは、ICTか人かという二者択一ではありません。
普段はICTが静かに見守り、異変があれば電話などで確認し、それでも安否が分からなければ人が駆け付ける。
単身高齢者が増える社会では、このように技術と人を組み合わせた仕組みを地域の中につくることが重要になっていくでしょう。
参考
日本経済新聞 2026年9月10日 朝刊 単身高齢者見守るICT 手ごろな機器でサービス続々
日本経済新聞 2026年9月10日 朝刊 高齢者見守りサービスとは