身寄りのない高齢者は誰が支えるのか 家族を前提とした高齢者支援が難しくなる理由編

人生100年時代
ブルー ベージュ ミニマル note ブログアイキャッチ - 1

一人暮らしの高齢者が増えると、見守りだけでは解決できない問題が出てきます。

病院へ入院するとき、介護施設へ入所するとき、緊急事態が起きたときなど、日本のさまざまな仕組みでは家族が重要な役割を担ってきました。

しかし、子どもがいない人もいます。兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合もあります。親族がいても遠方に住んでいたり、日常的な交流がなかったりすることもあります。

単身高齢者が増える社会では、これまで家族が担ってきた役割を誰が担うのかという問題を避けて通れなくなります。

身寄りのない高齢者とは何か

身寄りのない高齢者という言葉からは、親族がまったくいない人を想像するかもしれません。

しかし実際に問題になるのは、戸籍上の親族がいるかどうかだけではありません。

子どもや兄弟姉妹がいても、遠く離れて暮らしていて支援を頼めない場合があります。

親族自身が高齢になり、支援することが難しい場合もあります。

長期間交流がなく、緊急時に連絡できないケースも考えられます。

つまり重要なのは「親族がいるか」ではなく、実際に頼れる人がいるかどうかです。

単身高齢者が増えれば、この問題を抱える人も増えていくと考えられます。

入院すると家族の役割が見えてくる

普段は一人で問題なく生活していても、病気になると状況が変わります。

例えば突然入院することになった場合です。

入院中に必要な物を用意したり、退院後の生活について相談したりする場面があります。

本人の状態によっては、医療機関との連絡を支える人が必要になる場合もあります。

これまでは、こうした役割を配偶者や子どもなどが担うケースが多くありました。

しかし頼れる家族がいなければ、本人一人では対応することが難しいことがあります。

元気なときには見えにくかった問題が、病気や入院をきっかけに一気に表面化するわけです。

介護施設への入所でも問題になる

介護が必要になり、自宅での生活が難しくなった場合には、介護施設への入所を検討することがあります。

ここでも家族の存在が重要になる場面があります。

施設との連絡、費用の支払い、必要な物品の準備など、入所後にもさまざまな対応が必要になるからです。

本人の判断能力が低下すれば、さらに問題は複雑になります。

自分自身で契約内容を理解したり、財産を管理したりすることが難しくなる可能性があります。

一人暮らしを支えるということは、自宅にいる間だけを支えることではありません。

入院や施設入所など生活の場所が変わった後まで考える必要があります。

緊急連絡先を誰にするのか

一人暮らしの高齢者にとって、身近な問題の一つが緊急連絡先です。

賃貸住宅を借りる場合にも、緊急連絡先を求められることがあります。

病院や高齢者施設などでも、緊急時に連絡できる人を確認される場合があります。

若い頃なら親や兄弟姉妹、配偶者などを書けばよかったかもしれません。

しかし高齢になるほど、頼れる親族も同じように年齢を重ねます。

自分より年上の兄や姉を緊急連絡先にしていても、先に支援が必要になる可能性があります。

一度決めた緊急連絡先を何十年もそのままにするのではなく、自分の年齢や家族関係の変化に合わせて考え直す必要があります。

保証人の問題もある

住宅や施設などでは、保証に関する問題もあります。

家族が当然に保証人になるという仕組みは、単身世帯が増えるほど維持することが難しくなります。

子どもがいない人に、子どもを保証人にすることはできません。

親族がいても、その人に金銭的な責任まで負ってもらえるとは限りません。

そこで家賃債務保証や身元保証など、これまで家族が担ってきた機能の一部を民間サービスなどで補う考え方が出てきます。

重要なのは、家族そのものを誰かに代わってもらうことではありません。

家族が担ってきた機能を一つずつ分け、それぞれを適切な仕組みで補うことです。

自治体にも役割がある

身寄りのない高齢者の問題を、すべて本人の自己責任にすることは難しいでしょう。

経済的に余裕がある人なら、さまざまな民間サービスを利用できます。

しかしすべての高齢者が十分な費用を負担できるわけではありません。

そのため自治体や地域の支援機関の役割も重要になります。

例えば地域包括支援センターなど、地域には高齢者の生活について相談できる仕組みがあります。

住宅については居住支援法人などとの連携も考えられます。

医療、介護、福祉、住宅をそれぞれ別々の問題として考えるのではなく、その人の生活全体を支える視点が必要になります。

民間サービスにも期待が集まる

一方、民間事業者が担える分野もあります。

見守りサービスが代表例です。

人感センサーや電球、家電などによって生活状況を確認し、異変があれば通知します。

さらに駆け付けサービスを組み合わせれば、遠方の家族がすぐに行けない場合でも現地確認につなげられます。

身元保証、生活支援、死後の手続きなどを提供するサービスもあります。

単身高齢者が増えるほど、こうしたサービスへの需要は大きくなるでしょう。

ただし、長期間にわたって利用するサービスでは、料金や契約内容、事業者の信頼性などを十分確認することも重要です。

元気なうちに考える必要がある

身寄りのない高齢者の問題で難しいのは、本当に支援が必要になってから本人が準備しようとしても間に合わない場合があることです。

例えば認知機能が大きく低下してから、財産管理や契約について一から考えることは難しくなります。

突然入院してから緊急連絡先を探すのも簡単ではありません。

だからこそ、自分で判断できる元気なうちに考えることが重要です。

誰に緊急時の連絡をするのか。

自宅で一人暮らしを続けるなら、どのような見守りを利用するのか。

介護が必要になったらどこで暮らすのか。

財産管理をどうするのか。

亡くなった後の手続きを誰に頼むのか。

老後の準備は、お金を貯めることだけではありません。

自分ができなくなったことを誰に、どの仕組みで任せるのかまで考えておく必要があります。

家族の代わりではなく機能を分担する

これから重要になるのは、家族に代わる一つの万能な組織をつくることではないでしょう。

これまで家族が行ってきたことを分解すると、さまざまな役割があります。

日常の安否を確認する。

緊急時に駆け付ける。

住宅契約を支える。

入院や施設入所を支援する。

財産管理を支える。

亡くなった後の手続きを行う。

これらをすべて一人の親族に任せるのではなく、ICT、自治体、居住支援法人、民間事業者、専門職などが分担することができます。

家族の形が変化するのであれば、社会の仕組みもそれに合わせて変えていく必要があります。

結論

身寄りのない高齢者の問題とは、単に一人暮らしの高齢者が増えるという問題ではありません。

これまで家族が無償で担ってきたさまざまな役割を、誰が担うのかという問題です。

入院、施設入所、緊急連絡、保証、見守り、財産管理など、高齢になるほど誰かの支援が必要になる場面は増えていきます。

しかし単身高齢者が増える社会では、すべてを家族に任せることはできません。

これから必要なのは、家族の代わりを探すことではなく、家族が担ってきた機能を社会の中で分担することです。

ICTが日常を見守り、必要なら人が駆け付ける。居住支援法人が住まいを支え、自治体や福祉機関が生活を支える。必要に応じて民間事業者や専門職も関わる。

そして何より重要なのは、支援が必要になってから考えるのではなく、元気なうちに自分の老後の仕組みをつくっておくことです。

長生きする時代の老後設計では、資産をいくら準備するかと同じくらい、「自分を誰とどの仕組みで支えるのか」を準備することが重要になっていくでしょう。

参考

日本経済新聞 2026年9月10日 朝刊 単身高齢者見守るICT 手ごろな機器でサービス続々

日本経済新聞 2026年9月10日 朝刊 高齢者見守りサービスとは

タイトルとURLをコピーしました