銀行は預金者から預かった資金を企業や個人へ貸し出すだけではありません。融資に回しきれない資金は、国債や社債などの有価証券へ投資し、安定した収益を確保しています。
その運用状況を表す代表的な指標が「預証率(よしょうりつ)」です。
近年、日本では企業の資金需要が伸び悩み、預貸率が低下する一方で、有価証券運用の重要性が高まっています。そのため、預証率は銀行経営を理解するうえで欠かせない指標となっています。
今回は、預証率の意味や、銀行が預金をどのように運用しているのかを解説します。
預証率とは
預証率とは、銀行が集めた預金のうち、どれだけを有価証券で運用しているかを示す割合です。
一般的には、
預証率=有価証券残高÷預金残高×100
で計算されます。
例えば、
- 預金残高が100兆円
- 有価証券残高が30兆円
であれば、預証率は30%となります。
つまり、預かった預金の約3割を有価証券で運用していることになります。
預証率を見ることで、銀行が融資以外でどの程度収益を得ようとしているかを把握できます。
国債運用
銀行が最も多く保有する有価証券の一つが国債です。
国債は国が発行する債券であり、信用力が高く、安全性の高い資産とされています。
銀行にとって国債は、
- 安定した利息収入が得られる
- 必要に応じて売却しやすい
- 流動性が高い
という特徴があります。
特に融資先が十分に見つからない場合には、預金を国債で運用することが有力な選択肢になります。
一方で、金利が上昇すると既に保有している国債の価格は下落するため、評価損が発生する可能性もあります。
有価証券投資
銀行が投資するのは国債だけではありません。
例えば、
- 地方債
- 社債
- 外国国債
- 外国社債
- 投資信託
- 株式
などにも投資しています。
これらの資産は国債より高い利回りが期待できる一方で、価格変動リスクや信用リスクも伴います。
銀行は安全性、収益性、流動性のバランスを考えながら、有価証券ポートフォリオを構築しています。
近年では海外金利の上昇を背景に、外国債券への投資戦略を見直す銀行も増えています。
金利上昇との関係
預証率を考えるうえで重要なのが金利上昇の影響です。
一般的に、市場金利が上昇すると、既に発行されている低金利の債券価格は下落します。
そのため、銀行が大量の長期国債を保有している場合には、評価損が発生することがあります。
一方、新たに購入する債券は高い利回りで運用できるため、長期的には収益改善につながる可能性もあります。
銀行は金利の動向を見極めながら、有価証券の保有期間や種類を調整しています。
預貸率との違い
預証率とよく比較されるのが預貸率です。
預貸率は預金をどれだけ融資に回しているかを示す指標であり、預証率は預金をどれだけ有価証券で運用しているかを示す指標です。
例えば、
- 預貸率が高い銀行は融資中心
- 預証率が高い銀行は証券運用の比重が大きい
という傾向があります。
両方を合わせて見ることで、その銀行がどのようなビジネスモデルを採用しているかを理解しやすくなります。
預証率から分かる銀行経営
預証率が高いこと自体は、必ずしも良いことでも悪いことでもありません。
地域経済の資金需要が弱い場合には、融資先が少なく、有価証券運用の割合が高まるのは自然なことです。
一方で、有価証券への依存が過度に高まると、市場金利や株価の変動によって収益が左右されやすくなります。
そのため、銀行は融資と有価証券運用のバランスを取りながら、安定した収益基盤を築くことを目指しています。
結論
預証率とは、銀行が預かった預金をどの程度有価証券で運用しているかを示す重要な経営指標です。
銀行は融資だけでなく、国債や社債などの有価証券にも投資することで収益を確保しています。しかし、金利上昇局面では債券価格が下落するため、運用には市場リスクも伴います。
預貸率と預証率を合わせて見ることで、銀行が預金をどのように活用し、どのような収益構造を持っているのかをより深く理解できます。銀行経営や金融市場を学ぶうえで、ぜひ押さえておきたい基本指標の一つです。
参考
日本経済新聞 2026年8月5日 朝刊
銀行預金、金利競争に みずほは大口向け1.5%
日本経済新聞 2026年8月5日 朝刊
預金金利 日銀の利上げに伴い上昇 きょうのことば