非正規社員を正社員へ転換するとは何か 待遇差をなくす方法として雇用区分そのものを変える仕組み編

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正社員と契約社員が同じ職場で長年働いている。

仕事内容もほとんど同じ。

責任の範囲も少しずつ近づいている。

それでも、

賞与

退職金

各種手当

休暇

福利厚生

などには多くの違いが残っている。

このような会社では、一つ一つの待遇差について合理性を確認し、必要に応じて制度を修正する方法があります。

しかし、もう一つ考えられる方法があります。

非正規社員を正社員へ転換することです。

参考資料でも、長期間雇用され、正社員と同じような仕事をしている非正規社員については、正社員への転換を検討することが対応策の一つとして挙げられています。 02121ea7-51b0-43f2-ab19-7ccfb5f…

待遇を一つずつ正社員に近づけるのではなく、

そもそも別の雇用区分にしておく必要があるのか

を見直す考え方です。

正社員転換とは何か

正社員転換とは、契約社員やパート社員などとして働いている従業員を、会社の正社員の雇用区分へ移行させることです。

たとえば1年ごとの有期労働契約で働いていた契約社員を、会社の正社員として雇用するケースが考えられます。

正社員になることで、一般的には会社が正社員向けに設けている賃金制度や人事制度の対象になります。

ただし、

正社員転換とは必ずこの条件にする

という一つの共通した制度があるわけではありません。

正社員の定義や人事制度は会社によって異なるため、自社の雇用区分に沿って考える必要があります。

なぜ正社員転換が同一労働同一賃金と関係するのか

同一労働同一賃金では、正社員と非正規社員との間に待遇差があれば、その違いが不合理ではないかを確認します。

参考資料では、その出発点として、正社員と非正規社員の間にどのような待遇差があるのかを一つずつ確認することが示されています。 02121ea7-51b0-43f2-ab19-7ccfb5f…

たとえば契約社員について、

基本給が違う

賞与が違う

退職金が違う

住宅手当が違う

家族手当が違う

休暇が違う

という複数の待遇差があったとします。

それぞれに理由があるのであれば、その理由を整理します。

しかし、実際の仕事や人材活用が正社員とほとんど変わらないのであれば、

なぜこれほど多くの待遇差を残しているのか

という問題が生じます。

そこで雇用区分そのものを見直すという発想が出てくるのです。

長期雇用の非正規社員とは何か

非正規社員という言葉から、

一時的に働く人

短期間だけ働く人

を想像することがあります。

しかし実際には、契約更新を繰り返しながら長期間働いている非正規社員もいます。

1年契約でも毎年更新されれば、勤務期間は長くなります。

仕事にも習熟します。

後から入社した社員を指導するようになる場合もあります。

会社にとって欠かせない人材になっていることもあるでしょう。

このような社員については、

契約社員だから正社員とは別の待遇

という従来の区分が、現在の実態に合っているのかを確認する必要があります。

同じ仕事をしている場合

正社員転換を検討する一つの場面として、長期間にわたって正社員と同じような仕事をしているケースがあります。

たとえば入社当初は明確な違いがあったとします。

正社員は幅広い仕事を担当する。

契約社員は補助的な仕事を担当する。

ところが年月が経過するにつれて契約社員の仕事が広がりました。

正社員と同じ顧客を担当する。

同じ業務を担当する。

同じように後輩を指導する。

責任も以前より重くなる。

それでも雇用区分だけは契約社員のままです。

このような場合、待遇差を一つずつ検討するだけでなく、

現在も正社員と契約社員を分けておく実質的な理由があるのか

というところまで考えることができます。

同じ仕事なら必ず正社員転換という意味ではない

ただし、

正社員と同じ仕事をしている部分がある

というだけで、必ず正社員へ転換しなければならないという意味ではありません。

同一労働同一賃金では、単に目の前の作業だけを見るわけではありません。

職務内容。

責任。

職務や配置変更の範囲。

その他の事情。

さらに、それぞれの待遇の性質や目的などを踏まえて検討します。 02121ea7-51b0-43f2-ab19-7ccfb5f…

たとえば現在担当している仕事は似ていても、正社員には将来的な全国転勤や幅広い配置転換が予定されている場合があります。

管理職候補として異なる人材育成が行われている場合もあります。

そのような違いが実際に存在するのであれば、雇用区分を分ける理由になり得ます。

重要なのは、名称ではなく実態です。

雇用区分と実態がずれていないか

正社員転換を考えるときに重要なのが、

制度上の違い

と、

実際の働き方の違い

を比べることです。

就業規則には、

正社員は幅広い業務を担当する

契約社員は限定的な業務を担当する

と書かれているかもしれません。

しかし現場では、両者がほとんど同じ仕事をしていることがあります。

正社員には転勤があるという制度になっていても、実際には長期間転勤が行われていない場合もあります。

逆に、制度どおり正社員には幅広い配置転換があり、契約社員とは明確に異なる人材活用をしている会社もあります。

雇用区分が合理的かどうかを考えるには、規程だけではなく実態まで確認する必要があります。

待遇を一つずつ変える方法もある

もちろん、不合理な待遇差が見つかったからといって、すぐに正社員転換を行う必要があるわけではありません。

個別の待遇を改善する方法もあります。

たとえば家族手当の差だけが問題なのであれば、一定の非正規社員にも家族手当を支給する方法があります。

夏季冬季休暇の差に問題があるのであれば、休暇制度を見直す方法があります。

福利厚生施設の利用に差があるのであれば、利用対象を広げることもできます。

参考資料でも、不合理性を払拭できない待遇差については、その差を解消することが実務対応として示されています。 02121ea7-51b0-43f2-ab19-7ccfb5f…

問題が限定されているのであれば、個別の待遇を見直す方法が適している場合があります。

正社員転換が適する場合

一方、待遇差が多数存在し、さらに仕事の実態も正社員に近づいている場合には事情が違ってきます。

基本給を見直す。

賞与を見直す。

退職金を見直す。

手当を見直す。

休暇を見直す。

福利厚生を見直す。

このように一つ一つの待遇を正社員に近づけていくと、最終的には、

正社員との違いは何なのか

という問題が出てきます。

そのような場合には、個々の待遇だけを修正するより、雇用区分そのものを見直すほうが制度として分かりやすくなる可能性があります。

参考資料でも、長期間雇用されて正社員と同じような業務を担当している非正規社員について、正社員への転換が選択肢として示されています。 02121ea7-51b0-43f2-ab19-7ccfb5f…

正社員転換には人材活用の見直しも伴う

正社員転換は、単に社員の名称を書き換えるだけではありません。

正社員になれば、会社が正社員にどのような役割を期待しているのかという問題も出てきます。

たとえば、

担当できる職務の範囲

責任の範囲

配置転換

昇進

教育研修

賃金制度

などとの関係を整理する必要があります。

参考資料では、2026年改正を契機として、職群や責任、職務や配置変更の範囲などを含め、人材活用や賃金制度全体を見直すことが実務対応として挙げられています。 02121ea7-51b0-43f2-ab19-7ccfb5f…

つまり正社員転換は、待遇差をなくすだけではなく、

その人に今後どのような働き方をしてもらうのか

を考えることでもあります。

正社員にも複数の形があり得る

正社員転換を考える場合、

全国転勤のある正社員になるしかない

とは限りません。

企業によっては、

勤務地限定正社員

職種限定正社員

など、複数の社員区分を設けています。

たとえば長期間勤務している契約社員について、

現在の勤務地で働き続けてもらいたい

しかし全国転勤までは求めない

という場合もあるでしょう。

このような会社では、自社の社員区分全体を見直すことが考えられます。

ただし、社員区分を増やせばよいというわけではありません。

新しい区分を作った結果、再び合理的に説明できない待遇差が生じれば、問題を複雑にするだけです。

職務や責任、人材活用と待遇の関係を整理することが重要です。

待遇差の説明もしやすくなる

正社員と非正規社員の区分が実際の働き方に対応していれば、待遇差についても説明しやすくなります。

反対に、

仕事は同じ

責任もほぼ同じ

長期勤務も同じ

それでも待遇だけ大きく違う

という状態では、待遇差について説明を求められたときに会社が苦しくなる可能性があります。

2026年10月からは、非正規社員に対する労働条件の明示事項に、待遇差の内容や理由について説明を求めることができる旨が追加されます。 02121ea7-51b0-43f2-ab19-7ccfb5f…

そのため、

なぜ私は正社員と違うのですか

という質問を受ける可能性も意識しておく必要があります。

雇用区分と実態が一致していることは、待遇差を説明するうえでも重要になります。

正社員転換は待遇差解消だけが目的ではない

正社員転換には、もう一つ重要な意味があります。

長期間働き、経験や技能を蓄積した人材を、会社の人材活用の仕組みの中に改めて位置付けることです。

非正規社員として採用した当初と、10年勤務した後では、その社員が会社で果たしている役割が変わっていることがあります。

採用当時の雇用区分をそのまま維持するのではなく、

現在の仕事に合った雇用区分になっているか

を確認することが重要です。

2026年改正への対応は、単に法律に合わせて待遇差を修正するだけではありません。

会社の人材活用制度そのものを点検する機会にもなるのです。

結論

正社員と非正規社員との待遇差をなくす方法は、個々の待遇を修正することだけではありません。

長期間勤務し、正社員と同じような仕事を担当している非正規社員については、正社員への転換を検討する方法もあります。

もちろん、

同じ仕事をしているから必ず正社員にしなければならない

という意味ではありません。

職務内容や責任、配置変更の範囲など、実際の人材活用の違いを確認する必要があります。

しかし、

長期間働いている

仕事内容も正社員に近い

責任も近づいている

それでも雇用区分だけが違い、多数の待遇差が残っている

という場合には、一つ一つの待遇差を修正するだけでなく、

そもそも別の雇用区分にしておく必要があるのか

を考えることが重要です。

同一労働同一賃金への対応は、正社員と非正規社員の待遇を比較するだけの作業ではありません。

待遇差を確認していく過程で、会社の雇用区分そのものが現在の働き方に合っているのかを見直す作業でもあります。

待遇を仕事に合わせるだけではなく、雇用区分そのものを実際の働き方に合わせる。

正社員転換は、そのための選択肢の一つなのです。

参考

企業実務 2026年9月号 同一労働同一賃金改正対応の総点検

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