非上場株式評価の大改正に中小企業オーナーはどう備えるのか 今から確認しておきたい実務ポイント編

税理士
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非上場株式の評価方法について、60年以上続いてきた体系を抜本的に見直す議論が進んでいます。

新しい評価方法として残余利益方式が検討され、会社の純資産だけでなく収益力をより強く評価へ反映する可能性があります。

その結果、利益を安定して生み出している会社や、長年にわたって純資産を蓄積してきた会社では、自社株評価額が大きく変わる可能性があります。

中小企業オーナーにとって、自社株評価は単なる税金の計算ではありません。

相続税や贈与税だけでなく、後継者へいつ株式を渡すのか、誰に会社を引き継ぐのか、納税資金をどう準備するのかという事業承継そのものに関係します。

制度の詳細がまだ確定していない今だからこそ、慌てて株式を動かすのではなく、自社の現状を整理しておくことが重要です。

まず現在の自社株評価額を知る

最初に確認したいのが、現在の自社株評価額です。

自社株対策を考えるうえで、現在の評価額が分からなければ、新しい制度との比較ができません。

現在の財産評価基本通達に基づけば、自社株はいくらになるのか。

経営者が保有している株式全体ではいくらになるのか。

まず、この基準となる数字を把握しておく必要があります。

制度改正後に評価額を計算したとき、現在との差額を見ることによって初めて改正の影響が分かります。

株式の保有割合も確認する

自社株の評価額だけでは不十分です。

誰が何株持っているのかも確認する必要があります。

創業者が100%持っている会社もあります。

配偶者や子どもが一部保有している会社もあります。

親族以外の役員や従業員が株式を保有している場合もあります。

事業承継では、株式数だけでなく議決権の割合が重要になります。

後継者へどの程度の株式を移せば安定した経営権を確保できるのかを確認しておく必要があります。

利益の推移を確認する

今回の評価見直しで特に重要になる可能性があるのが利益です。

残余利益方式では、会社がどれだけ利益を生み出す力を持っているのかという収益力が重要になります。

そのため、直近1年だけではなく、数年間の利益推移を確認しておくことが重要です。

毎年安定して利益を出しているのか。

利益が大きく増えているのか。

一時的に大きな利益が出た年があるのか。

業績が大きく変動する会社なのか。

こうした特徴によって、新しい評価方法の影響も変わる可能性があります。

純資産の推移を見る

利益と同時に確認したいのが純資産です。

利益を会社内部に蓄積していけば、純資産が増えていきます。

長年にわたって利益を積み上げてきた会社では、多額の純資産を持っている場合があります。

純資産が増えている会社では、現在の評価方法でも自社株評価が高くなる場合があります。

さらに、新しい方式で収益力まで強く評価されれば、自社株評価への影響が大きくなる可能性があります。

現在の純資産額だけでなく、どの程度のペースで増えているのかを見ることが重要です。

なぜ純資産が増えたのかを見る

純資産の数字だけを見るのでは不十分です。

なぜ増えたのかを見る必要があります。

毎年の本業の利益が積み上がったのか。

不動産などの資産を持っているのか。

大きな資産売却があったのか。

一時的な利益によるものなのか。

同じ純資産額でも、その中身は会社によって違います。

新しい評価方法が具体化したときには、こうした会社ごとの特徴も確認する必要があります。

後継者が決まっているか

税務以前に重要なのが、誰に会社を引き継ぐのかです。

子どもが継ぐのか。

親族以外の役員が継ぐのか。

従業員へ承継するのか。

第三者へ会社を譲渡するのか。

後継者によって株式承継の方法も変わります。

後継者が決まっていなければ、自社株をいつ誰に移すのかという税務対策も決められません。

自社株評価だけを先に考えるのではなく、経営承継の方向性を確認する必要があります。

後継者に経営を任せられる時期を考える

後継者が決まっていても、すぐに経営権を渡せるとは限りません。

現在は役員になったばかりかもしれません。

まだ経営経験が十分ではないかもしれません。

取引先や金融機関との関係を引き継ぐ必要もあります。

株式を税務上有利な時期に移すことと、経営権を適切な時期に移すことは必ずしも一致しません。

だからこそ、税務と経営を一緒に考える必要があります。

株式をいつ移す予定なのか

事業承継の方法には、大きく分けて生前に移す方法と、相続によって移す方法があります。

生前贈与を利用する。

事業承継税制を利用する。

相続まで保有する。

複数回に分けて株式を移す。

さまざまな方法があります。

重要なのは、現在どの方法を考えているのかを明確にしておくことです。

新しい評価制度が示されたとき、現在の計画との違いを比較できるからです。

すでに進めている株式移転を確認する

事業承継をすでに始めている会社では、これまでの株式移転状況を整理しておく必要があります。

何株を後継者へ移したのか。

いつ贈与したのか。

どの評価額を使ったのか。

今後何株を移す予定なのか。

こうした情報を整理しておけば、評価制度が変わった場合に残りの株式をどうするのか検討できます。

経過措置が設けられた場合にも、過去の手続きや日付が重要になる可能性があります。

事業承継税制を確認する

自社株評価額が高い会社では、事業承継税制が重要になります。

一定の要件を満たせば、非上場株式に係る相続税や贈与税について納税猶予を受けられる仕組みがあります。

しかし、事業承継税制は誰でも自動的に利用できるものではありません。

会社や経営者、後継者などについて要件があります。

必要な手続きもあります。

そのため、自社が制度を利用できる可能性があるのかをあらかじめ確認しておく必要があります。

納税猶予を使わない場合も考える

事業承継税制が利用できるからといって、必ず利用しなければならないわけではありません。

通常の贈与や相続で税金を支払う方法もあります。

制度を利用すれば、一定の要件を継続して満たす必要があります。

企業によっては、通常の相続や贈与を選択した方が経営上自由度が高い場合もあります。

したがって、

事業承継税制を使う場合

使わない場合

の両方を比較することが重要です。

納税資金を確認する

自社株評価額だけを見ていてはいけません。

実際に相続税や贈与税を支払う必要が生じた場合、どこから資金を用意するのかを考える必要があります。

経営者個人の預金なのか。

後継者自身の資金なのか。

他の相続財産なのか。

金融機関からの借入れを検討するのか。

会社からの配当などを利用するのか。

自社株は評価額が高くても、そのまま納税資金になるわけではありません。

この点が非上場株式の事業承継で特に重要です。

会社の現預金と個人の現預金を分ける

会社に多額の預金があるから納税できると考えるのは注意が必要です。

会社の預金は会社の財産です。

経営者個人や後継者の財産ではありません。

その資金を個人へ移すには、配当や役員報酬など別の方法が必要になり、税務上の問題も発生します。

また、会社の運転資金を減らせば、事業そのものに影響する可能性があります。

会社の資金と個人の納税資金は分けて考える必要があります。

他の相続財産も確認する

相続税は自社株だけで計算するわけではありません。

預金。

上場株式。

不動産。

生命保険。

その他の財産。

そして債務なども関係します。

自社株評価額が高くても、他に十分な現金があれば納税資金を確保できる場合があります。

逆に、自社株と不動産が財産の大部分を占めている場合には、納税資金の準備が大きな課題になります。

相続財産全体を見ることが重要です。

家族構成も整理する

事業承継は会社だけの問題ではありません。

相続でもあります。

例えば、子どもが3人いて、そのうち1人だけが会社を継ぐ場合、自社株を後継者へ集中させる必要があるかもしれません。

一方で、他の相続人にはどの財産を渡すのかという問題があります。

自社株対策だけを進めても、相続全体の財産配分が決まっていなければ、後で家族間の問題が生じる可能性があります。

後継者への経営権集中と、他の相続人への財産配分を一緒に考える必要があります。

遺言の必要性も考える

経営者が大量の自社株を持ったまま相続を迎える場合、誰にその株式を引き継がせるのかを明確にしておくことが重要です。

遺産分割協議によって自社株が複数の相続人へ分散すると、会社の意思決定に影響する可能性があります。

そのため、遺言などによって株式承継の方向性を明確にすることも検討課題になります。

ただし、他の相続人とのバランスも考える必要があります。

税理士には早めに情報共有する

今回の評価見直しでは、税理士との情報共有も重要です。

制度が正式決定してから突然相談するより、現在の事業承継計画をあらかじめ共有しておいた方が対応しやすくなります。

現在の自社株評価。

経営者の保有割合。

後継者。

承継予定時期。

事業承継税制の利用状況。

家族構成。

こうした情報を税理士と共有しておけば、新制度の詳細が出た段階で迅速に影響を確認できます。

税理士だけで完結しない場合もある

事業承継には、税務以外の問題もあります。

株式や会社法については弁護士や司法書士などの専門家が関係する場合があります。

資金調達では金融機関との相談が必要になることがあります。

第三者承継であれば、M&Aの専門家が関係することもあります。

そのため、自社株評価の問題を税務だけで完結させず、必要に応じて複数の専門家と連携することが重要です。

新しい評価方式が出たら比較表を作る

制度の詳細が示されたら、まず新旧の評価額を比較したいところです。

現行方式による評価額。

新方式による評価額。

差額。

増減率。

相続した場合の税負担。

贈与した場合の税負担。

事業承継税制を利用した場合。

こうした数字を並べることで、初めてどの選択肢が自社に合っているのかを比較できます。

単に新方式の評価額だけを見るのでは不十分です。

還元率などの具体的な数値を見る

今後特に注目したいのが、還元率などの具体的な評価条件です。

残余利益方式という名称だけでは、実際の評価額は分かりません。

還元率がどう設定されるのか。

利益を何年分見るのか。

一時的な利益をどう扱うのか。

純資産をどう計算するのか。

こうした細部によって評価額は大きく変わる可能性があります。

ニュースの見出しだけではなく、具体的な計算方法まで確認する必要があります。

経過措置を必ず確認する

新制度が発表された場合、経過措置は非常に重要です。

いつから新方式になるのか。

すでに進めている事業承継はどうなるのか。

旧制度を一定期間利用できるのか。

どの日付を基準に判断するのか。

これによって、改正前に株式を移す必要があるかどうかの判断も変わります。

新制度の評価方法だけを見て判断しないことが重要です。

正式な施行日を確認する

今回のインタビューでは、令和10年1月1日施行という見方が示されています。

ただし、これは現時点で正式決定された施行日として扱うべきものではありません。

正式な制度が公表された段階で、適用開始日を改めて確認する必要があります。

税務では、1日の違いで適用する制度が変わることがあります。

日付の確認は非常に重要です。

改正前だからといって急がない

新しい制度で評価額が上がるかもしれないと聞けば、今のうちに株式を移したくなるかもしれません。

しかし、制度が確定していない段階で大きな株式移転を行うことにはリスクがあります。

実際には評価額がそれほど上がらないかもしれません。

経過措置が設けられるかもしれません。

事業承継税制が拡充される可能性もあります。

一方、一度贈与した株式を簡単に元へ戻すことはできません。

まず比較材料をそろえてから判断することが重要です。

何もしないリスクも考える

逆に、制度が決まるまで何も考えないというのもリスクがあります。

評価額が大きく上昇した後で初めて自社株評価を確認し、そこから後継者や承継方法を考え始めれば、選択肢が限られる可能性があります。

だからこそ、

今すぐ株式を移すのではなく

今すぐ現状を整理する

という考え方が重要になります。

準備と実行を分けて考えることです。

自社株評価だけを目的に会社経営を変えない

今回の制度見直しを意識するあまり、会社経営そのものを税務中心に変えることにも注意が必要です。

利益を出さないようにする。

必要以上の配当を出す。

無理な組織再編をする。

必要な投資を控える。

これでは会社の競争力を損なう可能性があります。

企業経営の目的は、自社株評価を低くすることではありません。

会社を成長させ、事業を継続することです。

税務対策は、その経営を支える範囲で考える必要があります。

最終的に見るべきは会社をどう残すか

自社株評価の議論を続けていると、どうしても税額ばかりに目が向きます。

しかし、事業承継で最も重要なのは会社をどう残すかです。

誰が会社を継ぐのか。

どのような経営体制にするのか。

経営権をどう安定させるのか。

従業員の雇用をどう守るのか。

取引先との関係をどう維持するのか。

自社株対策は、その大きな事業承継計画の一部分です。

結論

非上場株式の評価方法が60余年ぶりに大きく変わる可能性があります。

その影響は、相続税や贈与税だけではありません。

経営権、後継者、納税資金、家族間の財産配分、事業承継税制など、会社を次世代へ引き継ぐ仕組み全体に関係します。

だからこそ、中小企業オーナーが今行いたいのは、制度が決まる前に慌てて株式を動かすことではありません。

まず現在の自社株評価額を把握する。

利益と純資産の推移を確認する。

株式の保有状況を整理する。

後継者と承継時期を確認する。

事業承継税制の利用可能性を確認する。

納税資金と他の相続財産を確認する。

そして税理士などの専門家と情報を共有する。

こうした準備をしておけば、新しい評価制度が具体化したとき、現行方式と比較して冷静に判断することができます。

今回の評価見直しで最も避けたいのは、制度変更を知らないまま相続や事業承継を迎えることです。

一方で、不確定な情報だけを基に駆け込みで大きな取引を行うことにも注意が必要です。

重要なのは、制度改正を継続的に確認しながら、自社について数字で影響を把握できる状態を作っておくことです。

非上場株式の評価は税務上の株価の問題ですが、その先にあるのは会社を誰に、いつ、どのように引き継ぐのかという経営そのものの問題です。

だからこそ、自社株評価の見直しを、会社の事業承継を改めて考えるきっかけとして捉えることが重要です。

参考

税のしるべ 2026年9月14日 財務省主税局で相続税・贈与税等の企画・立案に従事した高橋達也氏に取引相場のない株式の評価見直しについて聞く

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