非上場株式の評価損はなぜ認められにくいのか

税理士
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企業が保有する非上場株式について、発行会社の業績悪化や債務超過を理由に評価損を計上することがあります。

しかし、非上場株式の評価損は、上場株式以上に慎重な税務判断が求められます。

上場株式であれば、証券取引所で形成された市場価格を利用できます。一方、非上場株式には市場価格が存在しないため、株式の価値を客観的に把握することが容易ではありません。

特に、子会社や関連会社の株式については、発行会社の業績悪化だけでなく、取得時の財務状況、資産状態の変化、将来の回復可能性などを総合的に検討する必要があります。

今回は、非上場株式の評価損が法人税上どのような場合に認められるのか、具体例を交えて整理します。

非上場株式は市場価格による評価ができない

上場株式と非上場株式の大きな違いは、市場価格の有無です。

上場株式には証券取引所で形成される株価があり、事業年度末の時価を客観的に確認できます。

これに対して、非上場株式には一般的に市場で形成される取引価格がありません。

そのため、株式の価値を判断する際には、発行会社の財務諸表や資産負債の状況などを検討する必要があります。

法人税では、売買目的外の有価証券について、原則として取得原価を基礎とした評価が行われます。

したがって、非上場株式についても、発行会社の業績が悪化したという理由だけで評価損を自由に損金算入できるわけではありません。

法人税法第33条では、一定の事実が生じた場合に限り、資産の評価損の損金算入を認めています。

非上場株式については、発行会社の資産状態が著しく悪化したことなどが重要な判断要素になります。

発行会社の資産状態の著しい悪化とは何か

非上場株式の評価損について、重要になるのが発行会社の資産状態の著しい悪化です。

法人税基本通達9-1-9では、取引所売買有価証券等以外の株式について、発行法人の資産状態が著しく悪化した場合の判断基準が示されています。

具体的には、株式を取得した時点の発行法人の1株当たり純資産価額と、事業年度末における1株当たり純資産価額を比較します。

その結果、事業年度末の1株当たり純資産価額が、取得時の1株当たり純資産価額のおおむね50%相当額を下回ることなどが重要になります。

例えば、ある会社が非上場会社の株式を取得した時点で、発行会社の1株当たり純資産価額が10万円だったとします。

その後、発行会社の業績が悪化し、事業年度末の1株当たり純資産価額が4万円まで低下しました。

この場合、純資産価額は60%減少しています。

資産状態の著しい悪化を判断するうえで、重要な事情になります。

ただし、純資産価額が50%以上減少したという事実だけで、評価損の損金算入が自動的に認められるわけではありません。

その悪化がどのような原因によって生じたのか、今後の回復可能性があるのかなどについても検討する必要があります。

50%基準は取得価額との単純比較ではない

非上場株式の評価損について、誤解されやすいのが50%基準の考え方です。

上場株式では、事業年度末の株価と税務上の帳簿価額を比較することが基本になります。

一方、非上場株式では、発行会社の資産状態の悪化を判断するため、取得時と事業年度末の1株当たり純資産価額を比較することが重要です。

例えば、非上場株式を1,000万円で取得した場合を考えます。

取得時の発行会社の1株当たり純資産価額が10万円で、事業年度末に4万円まで低下したとします。

この場合、純資産価額は60%減少しています。

しかし、取得価額1,000万円に対して、単純に60%を乗じた600万円が評価損として認められるわけではありません。

株式の取得価額と発行会社の純資産価額は、必ずしも一致しないためです。

取得価額には、発行会社の収益力、将来性、事業上の価値などが反映されている場合があります。

したがって、発行会社の資産状態の悪化を判定することと、評価損として損金算入できる金額を算定することは、区別して考える必要があります。

純資産価額の計算では資産負債の実態が重要になる

非上場株式の評価損を検討する際には、発行会社の貸借対照表を確認することになります。

ただし、帳簿上の純資産額だけで判断すれば十分というわけではありません。

発行会社が保有する土地、有価証券、その他の資産について、帳簿価額と実際の価値が大きく異なる場合があるためです。

例えば、発行会社が取得から長期間経過した土地を保有しており、その時価が帳簿価額を大きく上回っている場合を考えます。

帳簿上は債務超過に近い状態でも、土地の含み益を考慮すると、実質的な資産状態が異なる可能性があります。

反対に、帳簿上は純資産がプラスでも、回収困難な売掛金や価値が低下した棚卸資産が多額に存在する場合には、実質的な資産状態が悪化している可能性があります。

そのため、評価損を検討する際には、発行会社の財務諸表だけでなく、主要な資産負債の内容も確認することが重要です。

特に、子会社や関連会社の株式については、発行会社の財務情報を比較的入手しやすい反面、親会社として実態を把握していることも求められます。

債務超過になれば評価損を計上できるのか

非上場会社が債務超過に陥った場合、その会社の株式には経済的な価値がないと考えられることがあります。

しかし、債務超過という事実だけで、必ず評価損の損金算入が認められるわけではありません。

例えば、発行会社が一時的な設備投資負担によって債務超過となっている場合を考えます。

今後、新規事業が本格的に稼働し、収益の改善が見込まれるのであれば、資産状態の回復可能性について検討する必要があります。

一方、長期間にわたり営業赤字が継続し、主要事業の収益改善が見込めず、資金繰りも悪化している場合には、資産状態の著しい悪化を裏付ける事情となります。

重要なのは、事業年度末時点で把握できる情報に基づいて判断することです。

将来の事業計画についても、単なる希望的な見通しではなく、具体的な受注状況、資金調達計画、収益改善策などの合理的な根拠が必要になります。

債務超過会社への増資と評価損の関係

実務上、特に注意したいのが、債務超過に陥った子会社などに対して増資を行った場合です。

例えば、親会社が経営不振の子会社に対して1億円の増資を行ったとします。

子会社は増資前から多額の累積損失を抱えており、増資後も事業の再建が進まない状況にあります。

この場合、親会社が取得した株式の価値について、評価損を計上できるかが問題になります。

ここで注意したいのは、増資時点ですでに発行会社の資産状態が悪化していたという点です。

非上場株式の評価損では、取得時と事業年度末の資産状態の比較が重要になります。

したがって、取得前から存在していた損失や債務超過を理由として、増資直後に評価損を損金算入できるとは限りません。

また、増資によって発行会社の純資産が増加するため、資産状態の悪化の判定にも影響が生じます。

特に、経営再建を目的とした増資については、株式の取得価額、増資時点の資産状態、その後の事業状況を整理して判断する必要があります。

単に資金を投入したものの、子会社の経営状態が悪いという理由だけで評価損を計上することは危険です。

会計上の減損処理と税務上の損金算入は一致しない

非上場株式についても、企業会計上の減損処理と法人税上の評価損の損金算入は、必ずしも一致しません。

例えば、親会社が保有する子会社株式について、会計上は実質価額が著しく低下したとして減損損失を計上する場合があります。

しかし、税務上の評価損の要件を満たしていなければ、その減損損失は損金に算入できません。

この場合、法人税申告書の別表四で、会計上の評価損を所得金額に加算する必要があります。

例えば、取得価額5,000万円の子会社株式について、会計上3,000万円の減損損失を計上したとします。

税務上の要件を満たさない場合には、3,000万円を申告加算します。

会計上の帳簿価額は2,000万円になりますが、税務上の帳簿価額は原則として5,000万円のままです。

この差額は、その後の株式売却や清算などの際にも影響するため、継続的な管理が必要です。

会計上の減損処理を行ったという事実だけで、法人税上も損金算入できると判断しないことが重要です。

税務調査では取得時と期末の比較資料が重要になる

非上場株式の評価損について税務調査で重要になるのは、発行会社の資産状態が著しく悪化したことを客観的に説明できるかどうかです。

そのためには、株式取得時と評価損計上時の財務情報を保存しておく必要があります。

具体的には、取得時の決算書、事業年度末の決算書、主要な資産負債の明細、純資産価額の計算資料などが考えられます。

さらに、発行会社の事業計画、資金繰り表、金融機関との協議資料なども、回復可能性を判断するうえで重要です。

子会社への増資を行っている場合には、増資の目的、資金使途、再建計画、取締役会議事録なども確認できるようにしておく必要があります。

税務調査では、評価損を計上した年度だけでなく、株式を取得した時点の状況まで確認される可能性があります。

したがって、非上場株式の取得時から、取得目的や発行会社の財務状況を記録しておくことが望まれます。

評価損の検討を決算直前に始めるのではなく、日頃から投資先の財務状況を把握しておくことが重要です。

結論

非上場株式の評価損は、上場株式以上に慎重な税務判断が求められます。

市場価格が存在しないため、発行会社の資産状態や純資産価額などを基礎として、株式の価値を検討する必要があるためです。

特に重要なのは、取得時と事業年度末の1株当たり純資産価額の比較です。

事業年度末の純資産価額が取得時のおおむね50%相当額を下回ることは、資産状態の著しい悪化を判断する重要な基準になります。

ただし、50%基準を満たしたことだけで、評価損の損金算入が自動的に認められるわけではありません。

資産状態の悪化の原因、回復可能性、取得時の状況などを総合的に検討する必要があります。

また、債務超過会社への増資については、取得時点ですでに存在していた損失をどのように取り扱うかが重要になります。

企業会計上の減損処理と法人税上の評価損の損金算入は、目的も要件も異なります。

非上場株式の評価損を適正に処理するためには、取得時から発行会社の財務状況を把握し、判断の根拠を継続的に保存することが重要です。

評価損の損金算入を検討する際には、単に株式の価値が下がったという事実だけでなく、税務上の要件を客観的な資料によって説明できるかどうかが問われます。

参考

日本税理士会連合会 講義資料① 損金の計算・実務 太田達也

法人税法第33条

法人税法施行令第68条

法人税基本通達9-1-9

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