電子提出義務の「基準年」とは何か 2028年・2029年の判定方法を具体例で解説

税理士
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2027年1月1日以後、法定調書の電子的提出義務の基準枚数が、従来の100枚以上から30枚以上へ引き下げられます。

この改正によって、これまで書面で提出できていた企業でも、eLTAX等による電子提出が必要になる可能性があります。

ここで実務担当者が理解しておきたいのが「基準年」という考え方です。

電子提出義務があるかどうかは、その年に何人の従業員がいるかだけで判断するわけではありません。

原則として、提出期限の前々年である基準年に提出すべきであった法定調書の枚数によって判定します。

しかも、2027年から源泉徴収票のみなし提出が始まるため、「実際に税務署へ何枚提出したか」だけを見ていると判断を間違える可能性があります。

電子提出義務は30枚以上へ

2027年1月1日以後、法定調書の電子的提出義務の基準枚数は30枚以上になります。

従来は100枚以上でしたから、対象となる企業の範囲は大きく広がります。

給与支払報告書についても電子的提出義務があり、その判定には法定調書と同様の考え方が関係します。

従業員数がそれほど多くない企業でも、30枚という基準であれば対象になる可能性があります。

そのため、これまで「うちは電子提出義務とは関係ない」と考えていた企業でも確認が必要です。

基準年は提出期限の前々年

電子提出義務を理解するうえで重要なのが基準年です。

資料では、判定基準となる枚数は「基準年」に提出すべきであった法定調書の枚数とされています。

この基準年は、提出期限の前々年です。

したがって、ある年に給与支払報告書を提出するとき、その年だけを見て電子提出義務の有無を判断するわけではありません。

過去の提出枚数を確認する必要があります。

この時間差が、電子提出義務の判定を少し分かりにくくしています。

2028年は2026年を確認する

たとえば2028年に給与支払報告書を提出する場合を考えてみます。

提出年から2年前となる2026年が基準年になります。

したがって、2026年に提出すべきであった源泉徴収票などの枚数を確認して、2028年の電子的提出義務を判定することになります。

ここで重要なのは、2028年時点の従業員数だけを見て判断しないことです。

2028年に従業員が少なくなっていたとしても、基準年の提出枚数によって電子提出義務が生じる可能性があります。

逆に、2028年に従業員が増えていても、基準年の枚数によっては、その判定結果が異なることになります。

2029年は2027年が基準年

次に2029年を考えてみます。

2029年に給与支払報告書を提出する際の基準年は2027年です。

資料には、2029年の電子的提出義務について具体的な判定例が示されています。

この2029年の判定は特に重要です。

なぜなら、基準年となる2027年には、すでに給与所得の源泉徴収票のみなし提出の特例が始まっているからです。

企業が給与支払報告書を市区町村へ提出すれば、源泉徴収票について税務署へ直接提出する必要がなくなっています。

すると、「2027年に税務署へ源泉徴収票を1枚も直接提出していないから、基準年の枚数も0枚なのではないか」と考えてしまう可能性があります。

しかし、この考え方は正しくありません。

税務署への実際の提出枚数が0枚でも判定上は0枚とは限らない

みなし提出開始後の電子提出義務の判定で、最も注意したいポイントです。

資料では、基準年の枚数について、給与支払報告書を市区町村へ提出したことでみなし提出となった源泉徴収票も含まれるとされています。

つまり、税務署へ企業が直接提出した源泉徴収票が0枚であったとしても、電子提出義務の判定上の枚数が0枚になるわけではありません。

市区町村への給与支払報告書の提出によって、税務署へ提出したものとみなされた源泉徴収票についても、基準年の判定に関係します。

「実際に税務署へ送った枚数」と「電子提出義務を判定するための枚数」は別物として考える必要があります。

さらに改正前の提出範囲で判定する

もう1つ重要な注意点があります。

資料では、基準年に提出すべきであった源泉徴収票の枚数について、「改正前の提出範囲」で判定することが示されています。

2027年から給与所得の源泉徴収票の提出範囲は拡大されます。

改正後は、その年の給与等の支払金額が30万円以下である中途退職者を除くすべての給与等が提出範囲になります。

しかし、電子提出義務の枚数判定では、単純に改正後の広い提出範囲の人数を全部数えるわけではありません。

資料に示された判定例でも、この違いが重要なポイントになっています。

A社の例では50枚で電子提出義務あり

資料では、2029年に給与支払報告書を提出する際の例としてA社が示されています。

A社には、年末調整済みの対象者が50人います。

各人の給与等の支払金額は600万円です。

2027年には給与支払報告書50枚を市区町村へ提出し、給与所得の源泉徴収票についてはみなし提出となります。

このケースでは、基準年に提出すべき源泉徴収票が50枚となります。

30枚以上という基準に該当するため、A社には2029年の給与支払報告書について電子的提出義務が生じることになります。

税務署へ源泉徴収票50枚を直接送っていなかったとしても、みなし提出となった源泉徴収票が判定から消えるわけではありません。

B社の例では人数と判定枚数が一致しない

さらに興味深いのがB社の例です。

B社には、年末調整済みの対象者20人がいて、各人の給与等の支払金額は600万円です。

さらに、乙欄適用者15人がおり、各人の給与等の支払金額は40万円です。

給与支払報告書については、それぞれ市区町村へ提出し、源泉徴収票はみなし提出となります。

しかし、電子提出義務の判定では、すべてを単純に合計するわけではありません。

資料では、年末調整済みの20枚は基準年に提出すべき源泉徴収票に含まれる一方、乙欄適用者15枚は含まれないとされています。

したがって、判定対象となるのは20枚です。

30枚以上には達しません。

このためB社には、資料の例では2029年の給与支払報告書について電子的提出義務はありません。

35人いるから電子提出義務とは限らない

B社の例は、電子提出義務を従業員数だけで判断してはいけないことをよく示しています。

対象者を単純に合計すれば35人です。

30人を超えています。

しかし、資料の判定では基準年に提出すべき源泉徴収票として数えるのは20枚です。

そのため30枚以上という基準には該当しません。

「従業員が30人以上だから電子提出」

「給与支払報告書を30枚以上提出したから電子提出」

と単純に判断することはできないわけです。

あくまで基準年に提出すべきであった法定調書の枚数を確認する必要があります。

2027年の記録を残すことが2029年の判定につながる

2029年の電子提出義務を正しく判定するためには、2027年の給与情報を適切に把握しておく必要があります。

みなし提出が始まると、税務署へ源泉徴収票を直接提出しなくなるため、「税務署への提出枚数」という分かりやすい記録だけでは判定できなくなります。

2027年に誰について給与支払報告書を提出したのか。

そのうち、電子提出義務の判定上、源泉徴収票の枚数に含まれるのは何枚なのか。

こうした情報を確認できるようにしておくことが重要です。

2027年の処理が終わった時点で、その情報は不要になるわけではありません。

2年後の電子提出義務の判定にも利用することになります。

毎年のチェック項目にする

資料の年末調整実務の準備チェックリストでも、翌年、翌々年の電子的提出義務を確認することが挙げられています。

電子提出義務は、制度改正時に1度確認すれば終わるものではありません。

基準年の提出枚数によって、その後の提出方法が変わる可能性があります。

そのため、年末調整や法定調書提出の業務が終わった段階で、将来の電子提出義務判定に必要となる枚数も確認しておくという運用が考えられます。

提出した後に「何枚だったか」を忘れてしまうのではなく、次の判定につなげる意識が重要です。

結論

2027年1月1日以後、法定調書の電子的提出義務の基準枚数は100枚以上から30枚以上へ引き下げられます。

そのため、これまで電子提出義務の対象外だった企業でも、新たに対象になる可能性があります。

ただし、30枚という数字だけを見て判断してはいけません。

判定に使うのは、原則として提出期限の前々年である基準年に提出すべきであった法定調書の枚数です。

さらに、みなし提出が始まった後は、税務署へ源泉徴収票を直接提出した枚数が0枚であっても、みなし提出となった源泉徴収票が判定上の枚数に含まれます。

また、資料では改正前の提出範囲で枚数を判定することも示されています。

2029年の判定例では、A社は50枚となり電子的提出義務があります。

一方、B社は対象者を単純に数えれば35人いるものの、判定に含まれる源泉徴収票は20枚であるため、電子的提出義務はありません。

重要なのは、従業員数や実際に税務署へ送信した枚数ではなく、「基準年に提出すべきであった源泉徴収票は何枚なのか」を確認することです。

みなし提出によって税務署への直接提出がなくなった後ほど、この枚数管理が重要になります。

次回は、「年末調整担当者が2026年中に確認すべきこと 2027年1月改正への準備」について詳しく見ていきます。

参考

企業実務 2026年10月号 2027年1月施行 給与所得の源泉徴収票「みなし提出の特例」の実務対応

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