住宅ローン金利が上昇すると、「これから金利はどこまで上がるのか」が気になります。
変動金利と固定金利のどちらを選べばよいのか。
今のうちに固定金利へ変更した方がよいのか。
繰上返済を急いだ方がよいのか。
住宅価格が下がるまで購入を待った方がよいのか。
さまざまな判断が必要になります。
しかし、住宅ローンは20年、30年、35年と長期間にわたって返済するものです。
その間の金利を正確に予測し続けることは困難です。
だからこそ、金利上昇時代の住宅ローンで最も重要になるのは、金利を当てることではありません。
金利が予想と違う方向へ動いても返済できるように、最初から借り過ぎを防ぐことです。
金利の将来予測には限界がある
住宅ローンを選ぶときには、将来の金利を予測したくなります。
これから金利が上昇するなら固定金利が有利に見えます。
金利がそれほど上昇しないなら、変動金利を利用した方が支払利息を抑えられる可能性があります。
しかし、将来の金利は日銀の金融政策だけで決まるものではありません。
物価、賃金、景気、為替、海外金利など、さまざまな要因が影響します。
数カ月先の金利を正確に予測することさえ難しいのに、35年間の金利を当て続けることはさらに困難です。
住宅ローンの安全性を金利予測だけに依存させないことが重要です。
借りられる金額と返せる金額は違う
住宅ローンでは、金融機関の審査によって借入可能額が決まります。
しかし、借入可能額は金融機関が一定の審査基準に基づいて融資できると判断した金額です。
その家庭が数十年間無理なく返済できることを保証する金額ではありません。
住宅購入後には、住宅ローン以外にもさまざまな支出があります。
子どもの教育費が増えることがあります。
自動車を買い替えることもあります。
住宅の修繕費も必要です。
老後資金も準備しなければなりません。
借りられる上限まで借りるのではなく、こうした支出を続けながら返済できる金額に抑えることが重要です。
金利が上がった場合の返済額を先に確認する
変動金利型住宅ローンを利用する場合には、現在の適用金利だけで返済計画を立てないことが重要です。
例えば現在の金利に加えて、1%上昇した場合を試算します。
さらに2%上昇した場合も確認します。
そのとき毎月返済額や利息負担がどの程度増えるのかを把握します。
金利が上昇しても生活費や教育費を支払いながら貯蓄を続けられるのであれば、家計には一定の余裕があります。
反対に、わずかな金利上昇だけで毎月の家計が赤字になるのであれば、借入額そのものが大き過ぎる可能性があります。
固定金利でも借り過ぎれば安全ではない
固定金利を選べば、将来の金利上昇リスクを抑えることができます。
全期間固定型であれば、借入時に将来の住宅ローン返済額を見通しやすくなります。
しかし、固定金利を選べば住宅ローンが安全になるわけではありません。
毎月返済額が家計に対して大き過ぎれば、金利が固定されていても返済は苦しくなります。
収入が減る可能性もあります。
教育費や生活費が増えることもあります。
住宅ローンの安全性を決める基本は、金利タイプより借入額です。
返済期間を長くすれば毎月返済額は減る
住宅価格が高くなると、返済期間を長くして毎月返済額を抑える方法が使われます。
返済期間を長くすれば、同じ借入額でも毎月返済額を小さくできます。
そのため、購入時の家計負担は軽く見えます。
しかし、返済期間が長くなれば完済年齢も高くなります。
さらに、一般的には利息を支払う期間も長くなります。
毎月返済額だけを小さくするために返済期間を延ばすのではなく、何歳まで住宅ローンを返済することになるのかを確認する必要があります。
貯蓄を残すことも住宅ローン対策になる
借入額を減らすために、頭金をできるだけ多く入れたり、繰上返済を積極的に行ったりする方法があります。
住宅ローン元本を減らすことは金利上昇への有効な対策です。
しかし、貯蓄を使い切ってまで住宅ローンを減らすことには注意が必要です。
病気や失業などによって収入が減ったときには、住宅ローン残高が少ないこと以上に、すぐ使える現金が重要になる場合があります。
教育費や住宅修繕費などのまとまった支出にも備えなければなりません。
住宅ローン残高と手元資金の両方を管理することが重要です。
住宅費全体で考える
住宅ローンの返済能力を考えるときには、毎月返済額だけを見てはいけません。
マンションなら管理費や修繕積立金が必要です。
固定資産税などもあります。
駐車場を利用すれば、その費用もかかります。
戸建て住宅でも外壁、屋根、給湯器などの修繕や交換に備える必要があります。
住宅ローンを完済しても、こうした住宅費は残ります。
住宅購入では住宅ローンをいくら返せるかではなく、住宅に関する支出全体をいくらまで負担できるかを見る必要があります。
収入が減った場合も想定する
住宅ローンは現在の年収だけで考えないことも重要です。
共働き世帯なら、夫婦2人の収入が長期間続くとは限りません。
出産、育児、介護、病気、転職などによって収入が減る可能性があります。
60歳以降に給与水準が変わることもあります。
さらに年金生活に入れば、現役時代より収入が少なくなることも考えられます。
住宅ローンは、現在の収入が続けば返せる金額ではなく、多少収入が減っても返済できる金額に抑えることが重要です。
余裕のある住宅ローンは選択肢を増やす
借入額に余裕があれば、金利が上昇したときにもさまざまな対応ができます。
そのまま変動金利で返済を続けることもできます。
固定金利への変更や借り換えを検討することもできます。
余裕資金があれば繰上返済することもできます。
一方、最初から返済能力ぎりぎりまで借りていると、金利が上昇したときに選択肢が少なくなります。
住宅ローンの余裕は、単に毎月のお金を余らせるためのものではありません。
将来の環境変化に対応するための余力でもあります。
結論
金利上昇時代の住宅ローンでは、将来の金利を予測したくなります。
しかし、20年、30年、35年先まで金利を正確に予測することは困難です。
重要なのは、金利予測を当てることではありません。
予測が外れて金利が上昇しても、返済を続けられる住宅ローンを組むことです。
そのためには、借りられる金額ではなく返せる金額を基準にします。
金利が1%や2%上昇した場合も試算します。
住宅ローンだけではなく、管理費や修繕積立金などの住宅費も含めます。
収入減少や教育費、老後資金も考えます。
そして、頭金や繰上返済によって住宅ローンを減らす場合にも、十分な手元資金を残します。
変動金利と固定金利のどちらが最終的に有利だったかは、将来にならなければ分かりません。
しかし、借り過ぎを防ぐことは現在でもできます。
金利上昇時代の住宅ローンで最も重要なのは、将来の金利を当てることではなく、金利がどう動いても家計が耐えられる借入額に抑えることです。
参考
日本経済新聞 2026年9月26日 朝刊 住宅ローン金利上昇に備え 借入額抑制や貯蓄が重要に