住宅ローン金利が上昇すると、「これから住宅価格は下がるのではないか」と考える人もいるでしょう。
金利が上昇すれば、同じ金額を借りても毎月返済額が増えます。
その結果、住宅購入者が借りられる金額や無理なく返せる金額は小さくなります。
住宅需要が弱くなれば、住宅価格を押し下げる要因になります。
この意味では、金利上昇と住宅価格には一定の関係があります。
しかし、住宅価格は金利だけで決まるものではありません。
土地価格、建築費、人件費、住宅の供給量、世帯所得、人口動態、立地など、さまざまな要因によって決まります。
そのため、住宅ローン金利が上昇したからといって、住宅価格が必ず下落するとは限りません。
金利上昇は住宅購入者の負担を増やす
住宅ローン金利が上昇すると、まず影響を受けるのが住宅購入者の返済負担です。
例えば4,000万円を35年間借りる場合でも、金利が1%の場合と3%の場合では毎月返済額が大きく違います。
金利が高くなれば、同じ毎月返済額で借りられる住宅ローンの金額は少なくなります。
そのため、これまで5,000万円の住宅を購入できた世帯が、金利上昇後には4,500万円程度まで予算を下げるということも考えられます。
こうした動きが多くの購入者に広がれば、住宅需要を弱める要因になります。
住宅需要が弱くなれば価格には下落圧力がかかる
住宅を購入できる人が減れば、売り手は価格を下げなければ売却しにくくなる可能性があります。
特に同じ地域に似たような物件が多く売り出されている場合には、価格競争が起こりやすくなります。
新築住宅でも、購入者の返済能力が低下すれば販売価格を引き上げ続けることが難しくなる可能性があります。
このように考えると、金利上昇は住宅価格に対する下落圧力の1つになります。
ただし、あくまで価格を決める要因の1つです。
建築費が高ければ新築価格は下がりにくい
住宅価格を考えるうえで重要なのが建築費です。
マンションや戸建て住宅を建設するためには、鉄鋼、コンクリート、木材、設備などさまざまな資材が必要です。
さらに建設現場で働く人の人件費もかかります。
資材価格や人件費が上昇すれば、住宅を建設するコストも上昇します。
住宅ローン金利が上昇して購入者の負担が増えても、建築費が高いままであれば、事業者が販売価格を大幅に引き下げることは難しくなります。
金利上昇と建築費上昇が同時に起きれば、住宅価格が簡単には下がらない可能性があります。
土地価格も住宅価格を左右する
特に都市部のマンションでは、土地取得費も販売価格に大きく影響します。
駅に近い場所や都心部など、需要の強い土地は供給量が限られています。
建物は新しく建設できますが、同じ場所の土地を増やすことはできません。
そのため、人気の高い地域では住宅ローン金利が上昇しても土地価格が高い状態を維持することがあります。
土地価格が下がらなければ、新築マンション価格も下がりにくくなります。
住宅価格を見るときには、全国平均だけではなく地域ごとの需給を見ることが重要です。
住宅の供給量も重要になる
住宅価格は需要だけではなく供給によっても決まります。
住宅購入希望者が多少減っても、販売される住宅の数も少なければ価格が下がらないことがあります。
反対に、人口が減少している地域で中古住宅の売却が増えれば、供給が需要を上回り価格が下落する可能性があります。
同じ金利上昇でも、住宅不足の地域と住宅が余っている地域では影響が違います。
そのため、「金利が上がったから日本全国の住宅価格が同じように下がる」と考えることはできません。
所得が増えれば金利上昇を吸収できることもある
住宅価格を支えるもう1つの要因が世帯所得です。
住宅ローン金利が上昇して毎月返済額が増えても、賃金が上昇して家計収入も増えていれば、その影響をある程度吸収できる場合があります。
反対に、金利が上昇しているのに所得が増えなければ、住宅購入者の負担は大きくなります。
つまり、住宅価格を見るときには金利だけではなく、金利と所得の両方を見る必要があります。
住宅を購入できる金額は、住宅ローン金利と世帯収入の組み合わせによって変わります。
新築と中古で影響が違うこともある
金利上昇の影響は、新築住宅と中古住宅で同じとは限りません。
新築住宅では、土地取得費や建築費などが価格を下支えします。
そのため、販売会社が簡単に価格を下げられない場合があります。
一方、中古住宅では売主の事情によって価格が変わります。
早く売却したい売主が増えれば、価格を下げる動きが出る可能性があります。
ただし、人気地域の希少な中古マンションなどでは需要が強く、価格が維持されることもあります。
住宅市場を考えるときには、新築と中古を分けて見ることも重要です。
価格が下がっても購入負担が下がるとは限らない
ここで注意したいのが、住宅価格と住宅購入負担は同じではないということです。
例えば住宅価格が5,000万円から4,700万円へ300万円下がったとします。
一見すると購入しやすくなったように見えます。
しかし、その間に住宅ローン金利が大きく上昇していれば、毎月返済額は以前より高くなる可能性があります。
つまり、住宅価格が下落しても住宅ローンを含めた総負担が軽くなるとは限りません。
住宅購入者にとって重要なのは、物件価格だけではなく金利を含めた返済負担です。
住宅価格の下落を待つことにもリスクがある
金利上昇を見て、「住宅価格が下がるまで購入を待とう」と考えることもできます。
しかし、将来の住宅価格を正確に予測することは困難です。
金利が上昇しても、建築費や土地価格が高ければ住宅価格が下がらない可能性があります。
住宅価格が少し下がったとしても、住宅ローン金利がさらに上昇すれば返済負担が増えることもあります。
反対に、景気や物価の状況によって長期金利が低下し、固定型住宅ローン金利が下がることも考えられます。
住宅価格と住宅ローン金利の両方の底を正確に当てて購入することは容易ではありません。
結論
住宅ローン金利が上昇すれば、住宅購入者の返済負担が増えます。
同じ毎月返済額で借りられる住宅ローンの金額も小さくなるため、住宅需要を弱め、住宅価格に下落圧力をかける要因になります。
しかし、住宅価格は金利だけで決まりません。
土地価格、建築費、人件費、住宅の供給量、所得、人口動態、立地など、さまざまな要因が影響します。
そのため、住宅ローン金利が上昇すれば住宅価格が必ず下落するという単純な関係ではありません。
さらに住宅価格が下落しても、住宅ローン金利がそれ以上に上昇すれば、購入者の毎月返済額が増える可能性があります。
住宅購入を考えるときに重要なのは、住宅価格が上がるか下がるかを当てることではありません。
現在の物件価格と住宅ローン金利を前提として、自分の家計が無理なく支払える金額を確認することです。
金利と住宅価格の両方を予測するよりも、どのような環境になっても返済を続けられる購入予算に抑えることが重要です。
参考
日本経済新聞 2026年9月26日 朝刊 住宅ローン金利上昇に備え 借入額抑制や貯蓄が重要に