農林水産業にも労災保険が強制適用されるのか 小規模個人事業の暫定措置を廃止する理由編

経営

労災保険は、仕事中の事故や仕事が原因となる病気から労働者を守る重要な制度です。

労働者を使用する事業であれば、原則として労災保険の適用対象になります。

しかし、これまで農林水産業の小規模な個人経営事業の一部については、例外的に任意適用とされてきました。

今回の労災保険法等の改正では、この暫定措置が廃止されます。

労災保険は原則として強制適用される

労災保険には、労働者が仕事によって被った災害を補償する役割があります。

そのため、事業主や労働者が自由に加入するかどうかを選択することを基本とする制度ではありません。

労災保険の適用事業については、原則として制度が適用される仕組みになっています。

仕事中の事故や疾病は、本人だけでなく家族の生活にも大きな影響を与える可能性があります。

労働者を広く保護するためには、事業主の判断だけに加入を委ねない仕組みが必要だからです。

一部の農林水産業には例外があった

一方で、これまで農林水産業の小規模個人経営事業の一部については、任意適用とされてきました。

つまり、一般的な適用事業とは異なる特別な扱いが残っていたということです。

今回の資料では、この仕組みを労災保険の適用事業に関する暫定措置として位置づけています。

暫定措置とは、本来の制度とは異なる扱いを一定の事情から一時的に認める仕組みです。

しかし、社会や就業構造が変化すれば、その例外を維持する必要があるのかを改めて検討することになります。

今回の改正で暫定措置を廃止する

今回の労災保険法等の改正では、労災保険の適用事業に関する暫定措置を廃止します。

資料では、現在任意適用とされている農林水産業の小規模個人経営事業の一部についても、労災保険の強制適用の対象とするとされています。

つまり、小規模な個人経営だからという理由で残されていた例外を見直すことになります。

これは、労災保険によって保護される労働者の範囲を広げる方向の改正です。

小規模事業でも仕事上のリスクはある

事業規模が小さいことと、仕事中に事故が発生する可能性が低いことは同じではありません。

農林水産業で働く人にも、当然ながら業務上の災害が発生する可能性があります。

そこで重要になるのが、事業の規模や業種によって労働者の保護に大きな違いを残すべきなのかという視点です。

今回の資料では、就業構造の変化や働き方の多様化などを踏まえ、労働災害に対する幅広いセーフティネットを整備することが改正の背景とされています。

農林水産業に残されていた暫定措置の廃止も、この大きな方向性のなかで理解することができます。

任意適用と強制適用では何が違うのか

任意適用と強制適用の大きな違いは、労災保険を適用するかどうかを任意の選択に委ねるかどうかです。

任意適用であれば、制度が当然に適用されるわけではありません。

これに対して強制適用の対象になれば、一定の要件を満たす事業について労災保険が適用されることになります。

この違いは、そこで働く労働者にとって重要です。

労災保険は、仕事によって生じた事故や疾病という本人だけではコントロールできないリスクに備える社会的なセーフティネットだからです。

例外を減らして保護を広げる

今回の改正には、これまで制度の外側に置かれていた人や、異なる条件で扱われていた人への保護を広げるという共通した方向性があります。

一人親方等については特別加入に関する制度を整備します。

遺族補償年金等については、夫にのみ課されていた支給要件を見直します。

そして農林水産業については、小規模個人経営事業の一部に残っていた任意適用という暫定措置を廃止します。

個々の改正内容は異なりますが、労働災害に対する幅広いセーフティネットを整備するという点ではつながっています。

結論

これまで農林水産業の小規模個人経営事業の一部については、労災保険が任意適用とされる暫定措置が残されていました。

今回の労災保険法等の改正では、この暫定措置を廃止し、現在任意適用となっている事業の一部についても強制適用の対象とします。

重要なのは、小規模事業だからといって、そこで働く人に仕事上のリスクがないわけではないということです。

働き方や事業の形態が違っても、仕事による災害から労働者を守る必要性は変わりません。

農林水産業に残されていた例外の見直しは、労災保険をより幅広い労働者に行き渡らせるための制度改正といえるでしょう。

参考

企業実務 2026年9月号 働き方の多様化に対応した労災保険法等の改正

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