証券取引所とは何か PTSとの違いから株式市場の仕組みを理解する編

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株式市場というと、東京証券取引所を思い浮かべる人が多いでしょう。しかし、株式を売買できる場所は証券取引所だけではありません。現在はPTSでも上場株式を売買できます。

では、証券取引所とPTSは何が違うのでしょうか。

両者はどちらも株式を売買する場ですが、法律上の位置付けや役割、企業の上場審査、不公正取引の監視などに大きな違いがあります。PTSの取引シェアが拡大し、取引所への移行が議論される今、この違いを理解することは重要です。

証券取引所とは何か

証券取引所とは、株式や債券、デリバティブなどの金融商品を売買するための市場を運営する組織です。

日本では代表的なものとして、

東京証券取引所

大阪取引所

などがあります。

投資家自身が直接取引所に注文を出すのではなく、通常は証券会社を通じて売買します。

証券取引所は単に買い注文と売り注文を突き合わせるだけではありません。

企業を上場させるための審査や、上場後の管理、不公正取引の監視など、幅広い役割を担っています。

取引所免許とは何か

証券取引所を自由に開設できるわけではありません。

金融商品取引法に基づき、金融商品市場を開設するには一定の要件を満たし、免許を取得する必要があります。

これは証券取引所が社会的に非常に重要なインフラだからです。

もし市場運営者が突然業務を停止したり、売買ルールを恣意的に変更したりすれば、多くの投資家に影響が及びます。

そのため取引所には、

財務基盤

業務運営体制

システム管理

市場監視

自主規制

など、高い水準の体制が求められます。

上場とは何か

証券取引所を理解するうえで重要なのが「上場」です。

上場とは、企業の株式などを証券取引所で広く売買できるようにすることです。

企業が東証に上場すれば、その株式は多くの投資家が市場を通じて売買できるようになります。

しかし企業が希望すれば無条件で上場できるわけではありません。

取引所による審査を受け、一定の基準を満たす必要があります。

上場審査では何を見るのか

上場審査では、企業が一般投資家から資金を集めるのにふさわしい体制を備えているかを確認します。

代表的な確認事項には、

企業の財務状況

事業の継続性

内部管理体制

情報開示体制

株主数

流通株式

コーポレートガバナンス

などがあります。

上場企業には多くの個人投資家が投資します。

そのため企業の健全性や情報開示体制を一定程度確認する必要があります。

証券取引所には、こうした企業を市場へ迎え入れる門番としての役割があります。

上場後も管理される

上場審査を通過すれば、それで終わりではありません。

企業は上場後も取引所のルールを守り続ける必要があります。

例えば、

決算情報

業績予想の修正

M&A

資本政策

重要な訴訟

重大な事故

など、投資判断に影響する情報について適切な開示が求められます。

上場基準を満たさなくなった場合には、改善を求められたり、場合によっては上場廃止が問題になったりします。

これが上場管理です。

証券取引所は売買も監視する

証券取引所には、市場で行われる売買を監視する役割もあります。

例えば、

インサイダー取引

相場操縦

見せ玉

仮装売買

などの不公正取引が行われていないかを確認します。

大量の売買データを分析し、不自然な注文や取引パターンを調べます。

市場価格への信頼を維持するためには、こうした監視機能が欠かせません。

自主規制機能も重要

証券取引所では、市場運営と同時に自主規制機能も重要になります。

日本取引所グループでは、日本取引所自主規制法人が上場審査や売買審査などを担っています。

取引所には、

できるだけ多くの企業や投資家を集めたい

という事業者としての側面があります。

その一方で、

問題のある企業は上場させない

不公正取引を厳しく監視する

という規制者としての役割もあります。

この二つを適切に分け、市場への信頼を維持する仕組みが必要になります。

PTSとは何か

PTSとは私設取引システムのことです。

金融商品取引業者が運営し、証券取引所とは別の場所で株式などを売買できます。

日本では、

ジャパンネクスト証券

大阪デジタルエクスチェンジ

ジャパン・オルタナティブ・マーケット

などが日本株を扱っています。

PTSでも東証上場銘柄などを売買できるため、投資家から見れば証券取引所に似た存在に見えます。

しかし法律上の位置付けは異なります。

PTSは上場市場ではない

証券取引所とPTSの大きな違いの一つが、上場制度です。

東証は企業を上場させ、

上場審査

上場管理

情報開示

などを担います。

一方、PTSは基本的に、すでに取引所へ上場している株式などを売買する場所です。

つまり企業がPTSへ上場し、そのPTSが企業の上場審査を行うという仕組みではありません。

この違いが、PTSと金融商品取引所を分ける重要なポイントです。

PTSには独自のメリットがある

PTSには取引所とは違う強みがあります。

代表的なのは、

細かな呼び値

夜間取引

市場間の価格競争

証券会社のSORとの連携

などです。

例えば東証より有利な価格がPTSに存在すれば、SORによってPTSへ注文が送られることがあります。

PTSの存在によって、東証にも価格や取引サービスの改善を促す競争圧力が働きます。

なぜPTSに市場シェア上限があるのか

PTSは取引所より比較的柔軟な制度のもとで運営されています。

一方で、取引量が非常に大きくなれば、そのPTSが株式市場の価格形成に与える影響も大きくなります。

そこで現行制度では、PTSが一定以上の市場シェアを占めた場合、金融商品取引所としての免許取得を求める考え方が示されています。

金融庁の監督指針では、売買代金ベースの市場シェアが過去6か月間にわたり10%を超えるなどの要件が一つの基準となっています。

これは、巨大な市場を運営するなら取引所に近い規制を受けるべきだという考え方です。

PTSが取引所になる難しさ

問題は、PTSがそのまま取引所へ移行するのが簡単ではないことです。

取引所になれば、

自主規制体制

市場監視

上場審査

上場管理

システム体制

など、より広範な機能を整備する必要があります。

さらに現行制度では、PTSが取引所へ移行した場合、東証上場銘柄を今までと同じように売買することが難しくなるという問題があります。

PTSが成長した結果、取引所化によって逆に取扱銘柄や競争力が低下する可能性があるわけです。

東証との重複上場という壁

新しい取引所で東証上場銘柄を売買するには、企業が新しい取引所にも上場するという方法が考えられます。

いわゆる重複上場です。

しかし企業側には、

追加の上場費用

審査への対応

管理負担

事務コスト

が発生します。

そのため新しい取引所へ重複上場する企業がどれだけ現れるかは不透明です。

この問題が、PTSの取引所化を難しくしています。

米国のUTPとの違い

米国にはUTPと呼ばれる制度があります。

一定の仕組みのもと、一つの取引所に上場している株式を別の取引所でも売買できます。

企業がすべての取引所へ個別に重複上場しなくても、市場間競争を実現しやすい仕組みです。

日本でもPTSを取引所へ移行しやすくするのであれば、こうした制度を参考にする余地があります。

ただし複数市場で同じ株式を売買できるようにすれば、市場横断的な価格情報や監視体制の整備も必要になります。

証券取引所とPTSは競争相手なのか

両者は競争関係にありますが、単純なライバルというだけではありません。

東証には、

大量の流動性

上場制度

価格形成

自主規制

といった強みがあります。

一方、PTSには、

柔軟な取引時間

細かな価格設定

新しい取引サービス

といった特徴があります。

PTSが東証を補完しながら競争することで、日本市場全体の利便性が高まる可能性があります。

2020年に東証でシステム障害が発生し、終日売買できなかった経験からも、複数の取引場所を持つ重要性が意識されています。

制度改革で問われていること

PTSの市場シェアが拡大したことで、現在の制度には難しい問題が生じています。

成長を認めれば市場間競争が進みます。

しかし巨大なPTSを取引所より軽い制度のまま運営させてよいのかという問題があります。

反対に取引所化を求めれば、PTSが現在の利便性を失い、市場間競争が弱くなる可能性があります。

したがって今後の制度改革では、

PTSの市場シェア上限

取引所への移行条件

UTP型制度

共通の市場監視体制

自主規制機能

などを一体として考える必要があります。

結論

証券取引所とは、株式の売買市場を運営するだけでなく、上場審査、上場管理、市場監視、自主規制など幅広い機能を担う金融市場の重要なインフラです。

これに対してPTSは、金融商品取引業者が運営し、主にすでに上場している株式を取引する私設の取引システムです。

PTSは細かな呼び値や夜間取引などを通じて市場間競争を促す一方、取引所と同じ上場管理や自主規制機能をすべて担っているわけではありません。

PTSの市場シェアが大きくなったことで、「どこまで成長すれば取引所と同じ規制を求めるべきか」という問題が表面化しています。

今回の金融庁による制度見直しは、単にPTSの10%ルールを変更するだけではなく、証券取引所とPTSの役割分担そのものを見直す議論につながる可能性があります。

参考

日本経済新聞 2026年8月7日 朝刊
私設取引「PTS」、制度見直し検討 金融庁 シェア10%上限引き上げ議論 売買活況で対応急ぐ

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