繰上返済と貯蓄はどちらを優先すべきなのか 金利上昇時代ほど手元資金が重要になる理由編

FP
緑 赤 セミナー ブログアイキャッチ - 1

住宅ローン金利が上昇すると、余裕資金がある人は「できるだけ早く繰上返済した方がよいのではないか」と考えるでしょう。

住宅ローンの元本を減らせば、その後に支払う利息を減らすことができます。

金利が高くなるほど、繰上返済による利息軽減効果も大きくなりやすくなります。

しかし、だからといって貯蓄をほとんど使って住宅ローンを返済することが最善とは限りません。

一度住宅ローンの返済に使ったお金は、必要になったときに簡単に取り戻すことができないからです。

金利上昇時代には、住宅ローン残高を減らすことと同時に、手元資金を確保することも重要になります。

繰上返済とは何か

繰上返済とは、毎月の通常返済とは別に住宅ローンの元本を前倒しで返済することです。

例えば住宅ローン残高が3,000万円あるときに100万円を繰上返済すれば、その100万円は原則として元本の返済に充てられます。

元本が減れば、その後に発生する利息も少なくなります。

住宅ローン金利が高いほど、元本を早く減らす効果は大きくなります。

そのため、金利上昇局面では繰上返済への関心が高まりやすくなります。

繰上返済には確実な利息軽減効果がある

繰上返済の大きな特徴は、将来支払う住宅ローン利息を確実に減らせることです。

例えば預金金利より住宅ローン金利の方が高ければ、預金として置いておくより住宅ローン元本を減らした方が金利面では有利に見える場合があります。

しかも、投資とは違って価格変動によって元本が減るという問題はありません。

住宅ローン元本を減らした分だけ、その元本に対して将来発生するはずだった利息を減らすことができます。

特に住宅ローン残高が大きく、返済期間が長く残っている場合には、繰上返済の効果も大きくなりやすくなります。

しかし現金は戻ってこない

繰上返済には大きな注意点があります。

一度住宅ローンの返済に使ったお金は、原則として生活費として取り戻すことができません。

例えば貯蓄500万円のうち400万円を繰上返済した直後に、勤務先の状況が変わって収入が減少したとします。

手元に残っている貯蓄は100万円です。

住宅ローン残高は減っていますが、毎月の生活費や教育費を支払うために、その減らした住宅ローン元本を再び現金化することは簡単ではありません。

住宅という資産を持っていても、日々の支払いには現金が必要です。

この違いが重要になります。

金利上昇時代ほど現金の役割が大きくなる

金利が上昇すると、住宅ローン返済額が将来増える可能性があります。

変動金利を利用している場合には特に注意が必要です。

毎月返済額が2万円増えれば、年間では24万円の支出増になります。

3万円なら年間36万円です。

十分な貯蓄があれば、返済額が増えても家計を調整する時間を確保できます。

反対に、繰上返済によって貯蓄をほとんど使ってしまっていると、返済額の増加がそのまま家計を圧迫します。

金利上昇への備えという意味では、住宅ローン残高を減らすことだけが対策ではありません。

現金を持っておくこと自体が重要な対策になります。

生活防衛資金を先に確保する

繰上返済を考える前に確認したいのが生活防衛資金です。

病気や失業、休職などによって収入が減っても、一定期間生活できる資金を手元に確保しておく必要があります。

必要な金額は家庭によって違います。

共働きか片働きか、子どもがいるか、自営業か会社員かなどによって必要な備えは変わります。

住宅ローン返済だけではなく、食費、光熱費、教育費、保険料なども支払わなければなりません。

まず生活を維持するための資金を確保し、それを超える余裕資金の範囲で繰上返済を検討するという順番が重要です。

教育費を繰上返済に使わない

子どもがいる家庭では、教育費との関係にも注意が必要です。

住宅を購入した直後は子どもが小さく、教育費がそれほどかからないことがあります。

そのため、余裕資金を住宅ローンの繰上返済に使いたくなるかもしれません。

しかし、数年後に高校や大学への進学が控えている場合には、まとまった教育資金が必要になる可能性があります。

住宅ローンを減らすために教育資金まで使ってしまい、後から教育ローンを借りることになれば、必ずしも合理的とはいえません。

将来必要になることが分かっている資金は、繰上返済とは分けて確保しておくことが重要です。

住宅の修繕費も忘れない

住宅を所有していると、住宅ローン以外にもまとまった支出が発生します。

戸建て住宅なら外壁や屋根、給湯器などの修繕や交換が必要になります。

マンションでも専有部分の設備交換などは自分で負担します。

さらに、管理費や修繕積立金が将来引き上げられる可能性もあります。

住宅ローンを早く減らすことに集中して現金を使い切ると、こうした支出に対応できなくなることがあります。

住宅を維持するためのお金も含めて手元資金を考える必要があります。

住宅ローン控除との関係も確認する

住宅ローン控除を利用している場合には、繰上返済によって住宅ローン残高が減ることで控除額に影響する可能性があります。

住宅ローン控除は一定の要件のもと、年末の住宅ローン残高などを基に税額控除を受ける仕組みだからです。

そのため、住宅ローン金利だけを見て繰上返済を判断すると、税負担まで含めた効果を正しく比較できない場合があります。

住宅ローン金利、住宅ローン控除による効果、手元資金の必要額を合わせて考えることが重要です。

全額返すか何もしないかの二択ではない

繰上返済を考えるときには、貯蓄をすべて返済に使うか、まったく繰上返済しないかという二択で考える必要はありません。

例えば1,000万円の貯蓄があるからといって、1,000万円すべてを繰上返済する必要はありません。

生活防衛資金、教育費、住宅修繕費などを確保したうえで、残った300万円だけ繰上返済する方法もあります。

さらに、一度に大きく返済するのではなく、家計や金利の状況を確認しながら複数回に分ける方法もあります。

繰上返済と貯蓄は、どちらか一方を選ぶものではありません。

両方のバランスを取ることが重要です。

結論

金利上昇時代には、繰上返済によって住宅ローン元本を減らすメリットが大きくなる可能性があります。

元本を減らせば、将来支払う利息を確実に減らすことができます。

しかし、貯蓄を使い切ってまで繰上返済することには注意が必要です。

一度返済したお金は、病気や失業、教育費、住宅修繕などで現金が必要になったときに簡単には取り戻せません。

特に変動金利を利用している場合には、将来返済額が増える可能性があるため、手元資金そのものが金利上昇への備えになります。

まず生活防衛資金や近い将来必要になる資金を確保し、そのうえで余裕資金を繰上返済に回すことが重要です。

金利上昇時代の住宅ローン対策では、借金をできるだけ早く減らすことだけが正解ではありません。

住宅ローン残高を減らすことと、十分な現金を残しておくことのバランスを取ることが重要になります。

参考

日本経済新聞 2026年9月26日 朝刊 住宅ローン金利上昇に備え 借入額抑制や貯蓄が重要に

タイトルとURLをコピーしました