租税特別措置とは何か 同じ法人税でも企業によって負担が変わる仕組み編

税理士
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企業が利益を上げれば、原則として法人税などを負担します。

ところが、同じくらいの利益を上げている会社でも、実際に支払う税金が同じになるとは限りません。

特定の設備へ投資した会社や研究開発に力を入れた会社などについて、税負担を軽くする特別な制度が設けられているからです。

こうした政策目的による税制上の特例を租税特別措置といいます。

日本版DOGEによる税優遇の見直しを理解するうえでも、まず租税特別措置とは何なのかを押さえておく必要があります。

租税特別措置とは何か

租税特別措置とは、特定の政策目的を実現するために、通常の税制とは異なる特別な取り扱いを設ける仕組みです。

一般に租特と略されます。

税金には、本来であれば同じような経済力を持つ人や企業には同じように負担してもらうという考え方があります。

しかし、政府が特定の経済活動を促したい場合があります。

例えば、企業に設備投資を増やしてほしい、研究開発を進めてほしい、賃金を引き上げてほしいといった場合です。

そこで一定の条件を満たした企業について税負担を軽くします。

税金を政策の手段として利用しているわけです。

通常の税制とは何が違うのか

通常の法人税では、企業の所得を計算し、それをもとに税額を求めます。

基本的には同じルールが幅広い企業に適用されます。

これに対して租税特別措置では、一定の条件を満たした企業だけが特別な取り扱いを受けられます。

例えば、ある設備投資について税制上の優遇措置が設けられていたとします。

設備投資をしなかった会社には通常の税制が適用されます。

一方、その設備へ投資して一定の要件を満たした会社には税負担を軽減する仕組みが適用されます。

その結果、同程度の利益を上げている企業でも税負担に差が生じることがあります。

政策目的を達成するため、通常の税制に例外を設けるのが租税特別措置なのです。

どのように税金を軽くするのか

租税特別措置による税負担の軽減方法は一つではありません。

代表的なものが税額控除です。

一定の要件を満たした場合に、計算された法人税額から一定額を直接差し引きます。

例えば、法人税額が1000万円と計算された会社が200万円の税額控除を利用できれば、単純化すると納める税金は800万円になります。

このほか、通常より多くの金額を早い時期に費用として計上できる特別償却などもあります。

また、不動産の登記などで負担する登録免許税や固定資産税について税率や税額を軽減する制度もあります。

参考記事に登場したローカル5G設備にかかる固定資産税の特例も、こうした政策的な税負担軽減の一つです。

なぜ補助金ではなく税金を安くするのか

企業を支援するのであれば、政府が補助金を支給する方法もあります。

それでも税制優遇が使われるのは、税金を通じて企業の行動を促せるからです。

例えば、政府が企業の設備投資を増やしたいと考えたとします。

一定の設備へ投資すれば税金が安くなる制度を設ければ、企業にとって投資後の実質的な負担が小さくなります。

すると、それまで採算が合わなかった投資を実行する企業が出てくる可能性があります。

つまり租税特別措置には、

税負担を軽くすることによって企業や個人の行動を政策目的の方向へ誘導する

という役割があります。

単純に税金を安くすることだけが目的ではありません。

税優遇には政策目的がある

租税特別措置を見るときに重要なのは、なぜその制度が存在するのかという点です。

例えば研究開発を促進する税制であれば、企業の研究開発投資を増やし、技術革新や経済成長につなげることが目的になります。

賃上げを促す税制であれば、企業に従業員の給与を増やしてもらうことが目的です。

中小企業向けの設備投資税制であれば、生産性向上や競争力強化などが目的になります。

つまり、租特には必ず政策上の理由があります。

したがって制度を評価するときも、単純に利用企業が多いか少ないかだけを見るのでは不十分です。

本来の政策目的をどれだけ達成したのかを見る必要があります。

税金を安くすると国の税収は減る

租税特別措置には、もう一つ重要な側面があります。

企業の税負担を軽くすれば、その分だけ国や地方自治体が受け取る税収は減ります。

仮に通常なら100億円徴収できる税金が、租特によって80億円になったとします。

企業側から見れば20億円の負担軽減です。

一方、政府側から見れば20億円の税収減です。

このため税制優遇は、予算として企業へ直接お金を渡していなくても、財政に負担を生じさせます。

参考記事によると、租特の大半を占める法人税関係の措置による減収額は2024年度に約3.2兆円にのぼります。

租特の見直しが財源論と結びつくのはこのためです。

なぜ租特は定期的に見直す必要があるのか

租税特別措置が政策目的を達成しているのであれば、税収が減ったとしても一定の意味があります。

問題は、政策効果が小さくなった制度がそのまま残り続ける場合です。

制度を作った当時には必要だったとしても、経済環境が変われば必要性が低下することがあります。

利用者がほとんどいなくなることもあります。

反対に、利用者は多くても、その税優遇がなくても企業が同じ行動をしているのであれば、税金を安くする必要性が低い可能性があります。

そこで租特については、利用状況や政策効果を定期的に確認し、延長、縮小、廃止などを判断する必要があります。

日本版DOGEが租特を点検対象としているのも、この考え方につながります。

同じ利益でも税負担が違うことをどう考えるのか

租税特別措置には政策を後押しするメリットがある一方、税負担の公平性という問題もあります。

例えば同じ1000万円の利益を上げた2社があったとします。

一方は税制優遇を利用でき、もう一方は利用できなければ、実際に支払う税金は異なる可能性があります。

政策目的が十分に合理的であれば、この違いには意味があります。

しかし、政策効果がほとんどなくなった制度で税負担の差だけが残っているのであれば、制度を続ける合理性が問われます。

そのため租特を考えるときには、

政策効果

財政への影響

税負担の公平性

という複数の視点が必要になります。

単純に減税は良い、悪いという問題ではありません。

結論

租税特別措置とは、特定の政策目的を実現するため、通常の税制とは異なる特別な取り扱いを設ける仕組みです。

設備投資や研究開発、賃上げなどを促すため、税額控除や特別償却、税率軽減などによって企業や個人の税負担を軽くします。

その結果、同じ程度の利益を上げている企業でも、利用する租特によって実際の税負担が異なる場合があります。

租特は企業の行動を変える政策手段になる一方、政府にとっては税収を減らす制度でもあります。

だからこそ重要なのは、税優遇が存在すること自体ではありません。

失われる税収に見合うだけの政策効果を生み出しているのかを継続的に検証することです。

日本版DOGEによる租特の見直しも、最終的にはこの費用と効果をどう評価するかという問題に行き着きます。

参考

日本経済新聞 2026年9月4日朝刊「日本版DOGE、税優遇廃止は3件どまり 財源捻出、年10万円」

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