日本版DOGEとは何か 120件の税優遇を点検しても廃止が3件にとどまった理由

税理士
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政府が税金の使い方を見直す取り組みとして「日本版DOGE」を進めています。

政策効果が乏しくなった減税制度や補助金を洗い出し、廃止や縮小によって財源を生み出そうという取り組みです。

ところが、2027年度の税制改正要望では、約120件ある減税などの優遇制度のうち、各省庁が廃止を要望したものはわずか3件でした。

しかも、金額を把握できる範囲で生み出される財源は年間約10万円です。

なぜこれほど小さな金額にとどまったのでしょうか。

日本版DOGEとは何か

日本版DOGEは、政府の歳出や税制上の優遇措置について、本当に政策効果があるのかを検証し、効果の乏しいものを見直す取り組みです。

政府が新しい政策を実施するためには財源が必要になります。

通常であれば、税収を増やす、国債を発行する、既存の歳出を削減するといった方法が考えられます。

これに対して日本版DOGEでは、既存の制度を点検して無駄や効果の乏しいものを削ることで、新たな政策に使える財源を生み出そうとしています。

つまり、

新しい負担を求める前に、現在の制度に無駄がないかを調べる

という発想です。

租税特別措置とは何か

今回、特に注目されているのが租税特別措置です。

税金には本来、同じ条件なら同じように課税するという原則があります。

ところが、政府が特定の政策を進めたい場合には、一定の条件を満たした企業や個人について税負担を軽くすることがあります。

これが租税特別措置、いわゆる租特です。

例えば、企業に設備投資を促すため税額控除を設けたり、特定の事業を支援するため税率を軽減したりします。

税金を安くすることで、政府が望む行動を企業や個人に促すわけです。

その意味では租特も一種の政策支援です。

税優遇も実質的には政府の支出になる

租税特別措置は、政府が企業などに直接お金を渡す補助金とは違います。

しかし、経済的には似た面があります。

例えば、本来100億円徴収できる法人税を税優遇によって70億円しか徴収しなければ、政府は30億円の税収を失います。

これを租税支出と考えることがあります。

つまり、

補助金はお金を渡す

租特は税金を取らない

という違いはありますが、どちらも政府の財政に影響します。

そのため、歳出改革を考えるなら補助金だけでなく税優遇についても政策効果を検証する必要があります。

法人税関係だけで約3.2兆円

租特の規模は決して小さくありません。

参考記事によると、租特の大半を占める法人税関係の措置による減収額は2024年度に約3.2兆円でした。

仮に政策効果の低い制度を見直すことができれば、まとまった財源が生まれる可能性があります。

そこで政府は、2026年度末に適用期限を迎える制度を中心に各省庁へ自主点検を求めました。

約120件の税優遇などが対象になりました。

ところが、6月末の自主点検で廃止の方向が明示されたものは1件だけでした。

さらに財務相が点検結果を税制改正要望に反映するよう求めたものの、最終的な廃止要望も3件にとどまりました。

廃止される3制度とは何か

1つ目は、一定の要件を満たした中堅・中小企業が特別な事業再編を行った場合に、登録免許税を軽減する措置です。

この制度は2024年度に始まりましたが、これまで利用実績がありませんでした。

2つ目は、結婚や子育ての資金を子や孫へ一括贈与した場合、一定額まで贈与税を非課税にする制度です。

資金の用途が限定されることなどから利用が伸びず、2025年の利用件数は前年比約1割減の219件でした。

3つ目は、ローカル5G設備にかかる固定資産税を軽減する特例です。

2024年度の減収額は約10万円でした。

つまり、今回廃止される制度は、もともと利用実績や財政への影響がかなり小さいものが中心です。

なぜ財源が10万円しか生まれないのか

ここが今回の記事の重要なところです。

税優遇制度を廃止すると聞くと、大きな財源が生まれるように感じます。

しかし、制度を廃止したときに生まれる財源は、その制度によって実際に減っていた税収です。

例えば、年間1000億円の税収減を生んでいる優遇措置を廃止すれば、大きな財源になります。

一方、誰も利用していない制度を廃止しても税収は増えません。

今回廃止要望が出た制度の一つは利用実績がなく、ローカル5Gの特例による減収額も約10万円でした。

結婚・子育て資金の贈与税非課税制度については減収額が示されていません。

したがって、金額を確認できる範囲では年間約10万円しか財源を捻出できないことになります。

制度の数ではなく、

どれだけ税収を減らしている制度を見直せるか

が財源確保では重要なのです。

なぜ各省庁は税優遇を廃止したがらないのか

税優遇制度には、それぞれ政策目的があります。

設備投資を増やす、研究開発を促す、中小企業を支援する、地域経済を活性化するといった目的です。

そして多くの場合、その制度を所管する省庁があります。

省庁から見れば税優遇は自分たちの政策を実現するための手段です。

そのため、財政全体では廃止した方がよい制度であっても、所管省庁からすると残したい政策になる場合があります。

さらに税優遇を利用している企業や業界から継続を求められることもあります。

一度作られた制度を廃止するのが難しい理由の一つです。

政策効果をどう測るかが重要になる

もちろん、利用件数が少ないという理由だけで制度を廃止すればよいわけではありません。

重要なのは、その制度によってどの程度の政策効果が生まれたのかです。

例えば100億円の税収を失う税制優遇があったとします。

その結果、企業の設備投資が大幅に増え、雇用や生産性が向上したのであれば、政策として意味があるかもしれません。

逆に、税優遇がなくても企業が同じ投資をしていたのであれば、政府が税収を失っただけという可能性があります。

したがって租特を評価するときには、

税収をどれだけ失ったか

だけではなく、

その税優遇がなければ起きなかった行動をどれだけ生み出したか

を見る必要があります。

日本版DOGEの本当の難しさは、この政策効果を客観的に検証するところにあります。

大きな財源を作るほど改革は難しくなる

今回の結果は、財政改革の難しさも示しています。

利用されていない制度や減収額の小さい制度は比較的廃止しやすいでしょう。

しかし、それでは大きな財源は生まれません。

反対に、多くの企業が利用し、税収への影響が大きい制度を廃止すれば財源は生まれます。

ただし、その分だけ利用企業や業界への影響も大きくなります。

つまり、

廃止しやすい制度ほど財源効果が小さく

財源効果が大きい制度ほど廃止が難しい

という関係があります。

日本版DOGEが本格的な財源確保策になるかどうかは、今後この難しい領域に踏み込めるかにかかっています。

結論

日本版DOGEは、政策効果の乏しい減税制度や補助金を見直し、新たな政策の財源を生み出そうとする取り組みです。

今回、約120件の税優遇などが点検対象となりましたが、2027年度税制改正要望で各省庁が廃止を求めた制度は3件にとどまりました。

しかも金額を把握できる範囲で生まれる財源は年間約10万円です。

一方、法人税関係の租税特別措置による減収額は2024年度だけで約3.2兆円あります。

重要なのは、制度を何件廃止したかではありません。

政策効果に対してどれだけの税収を失っているのかを検証し、効果の乏しい大規模な制度まで見直せるかどうかです。

日本版DOGEが単なる制度の棚卸しで終わるのか、それとも本格的な財源改革につながるのか。

今後は「廃止件数」よりも「いくらの財源を生み出したか」が問われることになりそうです。

参考

日本経済新聞 2026年9月4日朝刊「日本版DOGE、税優遇廃止は3件どまり 財源捻出、年10万円」

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