企業が納付する税金には、法人税、法人住民税、法人事業税、固定資産税、印紙税など、さまざまな種類があります。
これらの税金は、会計上は租税公課や法人税等として費用処理されますが、法人税の計算では、すべてが損金に算入されるわけではありません。
例えば、法人税や法人住民税は原則として損金不算入ですが、法人事業税や固定資産税は、一定の要件のもとで損金算入が認められます。
また、税務調査によって追徴された税金についても、本税と加算税、延滞税では取扱いが異なります。
さらに、決算時に計上する未払法人税等や納税充当金については、法人税申告書の別表四と別表五を通じた税務調整が必要になります。
今回は、租税公課の損金算入の基本から、税目ごとの違い、納税充当金の処理、申告調整の具体例まで整理します。
租税公課は税金の種類によって取扱いが異なる
法人税法では、法人が負担する税金について、損金に算入できるものとできないものを区分しています。
代表的な損金不算入の税金は、法人税、地方法人税、法人住民税です。
これらは、企業の所得などに対して課される税金であり、法人税の所得計算上、原則として損金に算入されません。
一方、法人事業税、固定資産税、都市計画税、印紙税などは、原則として損金算入の対象になります。
ただし、損金算入が認められる税金であっても、どの事業年度の損金に算入するかについては、別途確認が必要です。
例えば、固定資産税については、賦課決定が行われた事業年度に損金算入することが基本になります。
このように、租税公課の税務では、まず税金の種類を正確に区分することが重要です。
法人税と法人住民税が損金不算入となる理由
法人税は、企業の所得に対して課される税金です。
この法人税を損金に算入すると、税額そのものによって課税所得が減少することになります。
そのため、法人税法第38条では、法人税や地方法人税などについて、損金不算入の規定が設けられています。
法人住民税についても、原則として損金に算入できません。
例えば、会社が当期の法人税等として合計1,000万円を費用計上したとします。
その内訳が、法人税600万円、地方法人税60万円、法人住民税140万円、法人事業税200万円だったとします。
この場合、法人税600万円、地方法人税60万円、法人住民税140万円については、原則として損金不算入となります。
一方、法人事業税200万円については、損金算入が認められる税金ですが、損金算入時期について別途判断する必要があります。
会計上の費用計上額と法人税上の損金算入額が一致するとは限らない点が重要です。
法人事業税は損金算入できる
法人事業税は、法人税や法人住民税と異なり、原則として損金算入が認められます。
ただし、法人事業税は、原則として申告書を提出した日の属する事業年度の損金になります。
例えば、3月決算の会社が、2026年3月期に係る法人事業税200万円を2026年5月に申告納付した場合を考えます。
この200万円は、原則として2027年3月期の損金に算入されます。
2026年3月期の決算で未払法人事業税として計上していても、法人税の計算では損金算入時期に注意する必要があります。
ここで重要なのは、法人事業税が損金算入できる税金であることと、当期に損金算入できることは別の問題だという点です。
法人事業税については、申告納付する事業年度を確認し、適切な税務調整を行う必要があります。
また、法人事業税には所得割だけでなく、付加価値割や資本割などが課される場合があります。
これらについても、税目の性質と損金算入時期を確認することが重要です。
特別法人事業税の取扱い
法人事業税と併せて申告納付する税金として、特別法人事業税があります。
特別法人事業税は国税ですが、法人事業税と併せて都道府県に申告納付する仕組みです。
法人税や地方法人税とは異なり、原則として損金算入が認められます。
損金算入時期についても、法人事業税と同様に確認する必要があります。
例えば、法人事業税200万円、特別法人事業税80万円を申告納付した場合、合計280万円が損金算入の対象となります。
ただし、実際にどの事業年度で損金算入するかについては、申告納付の時期などを確認する必要があります。
税金の名称に法人という言葉が含まれていても、法人税上の取扱いが同じとは限りません。
法人税、地方法人税、法人事業税、特別法人事業税を正確に区分することが重要です。
固定資産税と都市計画税の損金算入時期
固定資産税や都市計画税は、原則として損金算入が認められる税金です。
ただし、これらは申告納税方式ではなく、地方自治体による賦課課税方式で課されます。
そのため、原則として賦課決定があった日の属する事業年度に損金算入します。
例えば、会社が所有する土地と建物について、2026年度の固定資産税が120万円と決定された場合を考えます。
会社が3月決算で、2026年4月に納税通知書を受け取ったとします。
この場合、原則として2027年3月期の損金に算入することになります。
なお、納期が分割されている場合には、納期の開始日や実際の納付日を基準とする取扱いも認められています。
したがって、固定資産税については、賦課決定日、納期、実際の納付日を確認することが重要です。
会計処理と税務上の損金算入時期を一致させるためにも、納税通知書を適切に保存しておく必要があります。
印紙税や登録免許税の取扱い
印紙税は、契約書や領収書など、一定の課税文書に課される税金です。
事業に関連して負担した印紙税については、原則として損金算入が認められます。
例えば、会社が事業用の契約書を作成し、必要な収入印紙を貼付した場合です。
この印紙税は、事業に必要な費用として取り扱われます。
また、登録免許税についても、原則として損金算入が認められます。
ただし、固定資産の取得に関連して支出する登録免許税などについては、取得価額との関係も確認する必要があります。
法人税では、一定の付随費用について、固定資産の取得価額に算入しないことができる取扱いがあります。
したがって、登録免許税を支出した場合には、対象となる取引の内容や資産の取得との関係を整理することが重要です。
加算税と延滞税は損金不算入になる
税務調査によって申告漏れが指摘された場合、追加の本税だけでなく、加算税や延滞税が課されることがあります。
この場合、本税と附帯税では取扱いが異なります。
例えば、法人税の申告漏れによって、追加の法人税500万円、過少申告加算税50万円、延滞税20万円を納付したとします。
法人税500万円は、もともと損金不算入となる税金です。
また、過少申告加算税50万円と延滞税20万円についても、原則として損金不算入となります。
したがって、合計570万円について、法人税上の損金算入は認められません。
一方、地方税の延滞金については、種類によって取扱いが異なる場合があります。
特に、納期限の延長に伴う延滞金と、納付遅延に伴う延滞金は区別して判断する必要があります。
税務調査による追徴税額については、税目ごとの内訳を確認することが重要です。
罰金や科料も損金不算入となる
税金以外の公的な負担についても、損金算入が制限される場合があります。
代表的なものが、罰金や科料です。
法人税法では、罰金や科料などについて、損金不算入の規定が設けられています。
例えば、会社の業務に関連して法令違反が生じ、会社に罰金が科された場合です。
会社がその罰金を支払ったとしても、法人税上の損金には算入できません。
また、行政上の制裁金についても、その法的性質によって損金算入が制限される場合があります。
重要なのは、支出の名称だけで判断しないことです。
罰金、過料、課徴金、損害賠償金などは、それぞれ法的性質が異なります。
税務上の取扱いを判断する際には、支出の根拠となる法令や支払義務の内容を確認する必要があります。
納税充当金とは何か
法人税の申告実務では、納税充当金という言葉が使われます。
納税充当金とは、将来納付する税金に備えて、決算上計上する負債をいいます。
会計上の未払法人税等に相当するものです。
例えば、3月決算の会社が、当期の法人税等として800万円を費用計上し、同額を未払法人税等として計上したとします。
会計上は、法人税等800万円を費用処理しています。
しかし、法人税の所得計算では、この費用計上額をそのまま損金に算入することはできません。
そのため、法人税申告書の別表四で、損金経理をした納税充当金として800万円を加算する処理が必要になります。
そのうえで、当期に損金算入できる法人事業税などがある場合には、別途減算することになります。
納税充当金の処理は、法人税申告書の別表四と別表五の関係を理解するうえで重要な論点です。
別表四による税務調整の具体例
具体的な数値を使って、税務調整の流れを確認します。
ある会社の当期の税引前利益が5,000万円だったとします。
当期の法人税等として1,500万円を費用計上したため、会計上の当期純利益は3,500万円になりました。
この1,500万円は、決算上、未払法人税等として計上されています。
また、当期中に前期分の法人事業税300万円を申告納付しており、その支払額は前期に計上した納税充当金から取り崩しています。
この場合、法人税申告書の別表四では、会計上の当期純利益3,500万円を出発点とします。
まず、損金経理をした納税充当金1,500万円を加算します。
次に、当期に損金算入が認められる前期分の法人事業税300万円を減算します。
その結果、他に税務調整がないと仮定すると、所得金額は4,700万円になります。
計算の流れは、3,500万円に1,500万円を加算し、300万円を減算するというものです。
ただし、実際の申告では、中間納付税額、納税充当金の取崩額、法人税等の税目別内訳などを確認する必要があります。
この例は、納税充当金と法人事業税の基本的な関係を理解するためのものです。
別表五との関係も理解する
法人税申告書では、別表四だけでなく、別表五の管理も重要です。
別表四は、会計上の利益を法人税上の所得金額に調整するための明細書です。
一方、別表五は、利益積立金額や租税公課の納付状況などを管理するための明細書です。
特に、別表五の二では、法人税、地方法人税、住民税、事業税などの納付状況を整理します。
例えば、前期末に未払法人税等として計上した金額を、当期に納付した場合です。
会計上は未払法人税等を取り崩すだけで、当期の費用にはならないことがあります。
しかし、税務上は、その納付した税金が損金算入できるかどうかを判断する必要があります。
法人事業税については、申告納付した事業年度の損金算入が問題になります。
そのため、別表四と別表五の二を照合し、損金算入の漏れや重複がないか確認することが重要です。
税務調査で確認されるポイント
租税公課について税務調査で重要になるのは、税目の区分と損金算入時期です。
特に、法人税や法人住民税などの損金不算入税額が、誤って損金に算入されていないかが確認されます。
また、法人事業税について、適切な事業年度に損金算入されているかも重要です。
固定資産税については、納税通知書や納付記録を確認することで、賦課決定日や納期を把握できます。
さらに、税務調査による追徴税額については、本税、加算税、延滞税などの内訳を確認する必要があります。
納税充当金については、決算書、別表四、別表五の二の金額が整合していることが重要です。
税務調整の漏れや重複を防ぐためには、税目別の管理表を作成し、会計処理と申告調整を対応させることが有効です。
結論
租税公課の損金算入では、税金の種類によって取扱いが大きく異なります。
法人税、地方法人税、法人住民税は、原則として損金不算入です。
一方、法人事業税、特別法人事業税、固定資産税、都市計画税、印紙税などは、原則として損金算入が認められます。
ただし、損金算入が認められる税金であっても、損金算入時期については別途確認が必要です。
また、加算税や延滞税、罰金などについては、損金不算入となるものがあります。
法人税申告書の作成では、納税充当金の加算と、損金算入できる税金の減算を適切に行う必要があります。
そのためには、別表四と別表五の二を関連付けて理解することが重要です。
租税公課の税務は、個々の税金の取扱いだけでなく、会計処理、納付時期、申告調整を一体として管理することが求められます。
税目別の区分と証拠資料の保存を徹底することが、正確な法人税申告と税務調査への備えにつながります。
参考
日本税理士会連合会 講義資料① 損金の計算・実務 太田達也
法人税法第22条、第38条、第55条
法人税基本通達9-5-1、9-5-2
国税庁 法人税申告書別表四の記載要領
国税庁 法人税申告書別表五の二の記載要領