会社から受けられる支援には、「住宅手当」「通勤手当」などの手当と、「健康診断」「社員食堂」「保養施設」などの福利厚生があります。どちらも従業員を支える制度ですが、その目的や支給方法、税務上の取り扱いは大きく異なります。
近年は、人材確保や従業員満足度の向上を目的として、福利厚生を充実させる企業が増えています。一方で、各種手当を基本給へ組み込む動きも広がっており、企業は自社に適した報酬制度を模索しています。
今回は、福利厚生と手当の違いや、それぞれの特徴について解説します。
福利厚生と手当の違い
手当は、給与の一部として現金を支給する制度です。
通勤手当や住宅手当、家族手当、資格手当など、一定の条件を満たした従業員へ現金で支給されることが一般的です。
一方、福利厚生は現金だけではありません。
社員食堂、健康診断、社宅、育児支援、介護支援、保養施設、レジャー施設の利用補助など、従業員が安心して働ける環境を整える制度全体を指します。
つまり、手当は福利厚生の一部とも考えられますが、福利厚生には現金以外の支援も数多く含まれています。
現金支給と現物支給の違い
手当の最大の特徴は、現金で支給されることです。
給与明細に記載され、毎月一定額が支給されるケースが多く見られます。
一方、福利厚生は会社がサービスを提供するケースが中心です。
例えば、人間ドックの受診補助や社員食堂の利用、育児サービスの提供などは、現金ではなくサービスそのものを提供しています。
企業にとっても、従業員の健康維持や働きやすい職場づくりにつながるため、生産性向上の効果が期待できます。
非課税となる制度もある
税務上の取り扱いにも違いがあります。
手当は給与として支給されるため、原則として所得税の課税対象になります。
ただし、通勤手当のように一定額まで非課税となる制度もあります。
一方、福利厚生については、一定の条件を満たせば従業員への給与とはみなされず、課税されないものも少なくありません。
例えば、法令に基づく健康診断や、一定の基準を満たす社員食堂などは、福利厚生費として取り扱われることがあります。
企業にとっては、税務上のルールを踏まえた制度設計が重要になります。
カフェテリアプランとは
近年注目されている福利厚生制度の一つが「カフェテリアプラン」です。
これは会社が一定額のポイントを付与し、従業員が自分の希望に応じて福利厚生メニューを選択する制度です。
育児支援を選ぶ人もいれば、自己啓発やスポーツ施設利用、介護支援を選ぶ人もいます。
年齢や家族構成、ライフスタイルによって必要な支援は異なるため、一律の福利厚生よりも柔軟性が高い制度として導入する企業が増えています。
報酬制度は多様化している
日本企業では、生活を支えるためにさまざまな手当が設けられてきました。
参考資料でも、日本では職務や習熟度とは直接関係しない要素を手当として支給することが特徴的な賃金体系であり、時代の変化とともにその内容も変わってきたことが紹介されています。
近年はジョブ型雇用の普及や人的資本経営への関心の高まりを受け、基本給を重視しながら、福利厚生によって働きやすさを高める企業が増えています。
企業にとっては、給与だけで人材を確保する時代ではなくなり、福利厚生を含めた総合的な報酬制度が競争力を左右するようになっています。
結論
手当と福利厚生は、どちらも従業員を支える制度ですが、手当は現金支給、福利厚生は働きやすい環境づくりを目的とした制度という違いがあります。
また、税務上の取り扱いも異なり、非課税となる制度もあるため、企業には適切な制度設計が求められます。
今後は、ジョブ型雇用や多様な働き方が広がる中で、一律の手当を充実させるだけではなく、従業員一人ひとりのニーズに応じた福利厚生を組み合わせることが、人材確保や定着につながる重要な経営戦略となっていくでしょう。
参考
企業実務 2026年8月号
「手当」を手当てするとき