分散投資では、「いくつの商品を持っているか」だけではなく、それぞれの資産がどのような値動きをするのかが重要です。
株式を10銘柄持っていても、すべてがほぼ同じように値下がりするのであれば、十分な分散効果を得られないことがあります。
そこで重要になるのが「相関」という考え方です。
2つの資産がどの程度同じ方向へ動くのかを数値で表したものが相関係数です。
オルタナティブ投資が注目される理由の1つも、株式や債券などの伝統的資産とは異なる値動きをする資産を組み入れることで、ポートフォリオ全体のリスクを抑える効果が期待されているからです。
相関係数とは何か
相関係数とは、2つの資産の値動きがどの程度似ているのかを示す数値です。
相関係数は、一般にマイナス1からプラス1までの範囲で表されます。
プラス1に近いほど、2つの資産は同じ方向へ動く傾向があります。
マイナス1に近いほど、反対方向へ動く傾向があります。
0に近ければ、2つの資産の値動きには強い連動関係がないことを意味します。
分散投資では、この相関係数が重要になります。
正の相関とは何か
2つの資産が同じ方向へ動く傾向を正の相関といいます。
例えば、Aという資産が値上がりするときにBという資産も値上がりし、Aが値下がりするとBも値下がりする傾向が強ければ、両者には正の相関があります。
相関係数がプラス1に近いほど、この関係は強くなります。
同じような値動きをする資産をいくつ保有しても、相場が悪化したときには一緒に値下がりする可能性があります。
保有商品の数を増やしただけでは、十分な分散にならない場合があるのです。
負の相関とは何か
一方、一方の資産が上昇するときに、もう一方が下落する傾向がある関係を負の相関といいます。
相関係数ではマイナスで表されます。
もし一方の資産が値下がりしたときに別の資産が値上がりすれば、資産全体の値下がりを和らげる効果が期待できます。
ただし、実際の金融市場では相関関係は固定されているわけではありません。
ある期間には負の相関だった資産が、別の期間には同じ方向へ動くこともあります。
したがって、過去の相関係数だけで将来の値動きを決めつけることはできません。
低相関の資産を組み合わせる意味
分散投資では、必ずしも反対方向へ動く資産だけを探す必要はありません。
重要なのは、同じ動きをしない資産を組み合わせることです。
例えば、株式が大きく値下がりしたとき、別の資産の下落が小さければ、ポートフォリオ全体の下落幅を抑えられる可能性があります。
これが低相関資産を組み合わせる意味です。
投資対象を増やすことそのものが分散なのではありません。
異なる値動きをする資産を組み合わせることによって初めて、分散効果が期待できます。
不動産がオルタナ投資として利用される理由
オルタナティブ資産の代表例の1つが不動産です。
不動産は、上場株式とは異なる要因によって価格や収益が動くことがあります。
例えば、賃料、物件の需給、地域の経済状況、金利などです。
そのため、伝統的資産との相関が低い資産としてポートフォリオへ組み入れられることがあります。
株式だけを保有する場合と、株式とは異なる値動きをする資産を組み合わせる場合では、資産全体のリスクが異なります。
オルタナ投資には、高いリターンを狙うだけではなく、こうした分散効果を狙う役割もあるのです。
分散投資は銘柄数だけでは決まらない
例えば、100万円ずつ10種類の資産へ投資していたとします。
一見すると十分に分散されているように見えます。
しかし、10種類すべてが同じ経済要因によって同じように動く資産であれば、相場環境が悪化したときに一斉に値下がりする可能性があります。
反対に、保有する資産の数がそれほど多くなくても、異なる値動きをする資産を組み合わせることで分散効果を得られる場合があります。
「何本持っているか」ではなく、「それぞれがどう動くか」を見る必要があります。
相関は変化する
相関係数を見るときには注意点があります。
相関は一定ではありません。
経済環境や金融市場の状況によって変化します。
通常時にはあまり連動していなかった資産が、金融危機などの局面では同時に値下がりすることもあります。
投資家が一斉に現金を必要とすれば、さまざまな資産が同時に売却される可能性があるからです。
したがって、
「過去に相関が低かったから、将来も必ず分散効果がある」
とは限りません。
相関係数は便利な指標ですが、絶対的な数字ではないことを理解しておく必要があります。
オルタナ資産では見かけ上の低相関にも注意する
さらにオルタナティブ資産では、特有の問題があります。
PEや不動産などは、上場株式のように毎日市場価格がつくとは限りません。
株式市場が急落しても、オルタナティブ資産の評価額にはすぐに反映されないことがあります。
その結果、数字だけを見ると、
「株式は大きく下落したのにオルタナ資産はほとんど動いていない」
ように見える場合があります。
これによって相関係数が実態以上に低く見積もられる可能性があります。
低相関だから安全だと単純に判断することはできません。
分散投資では資産全体を見る
相関係数を理解する最大の意味は、1つ1つの商品ではなく、資産全体を見ることにあります。
ある資産単独では価格変動が大きくても、他の資産と異なる値動きをするのであれば、ポートフォリオ全体ではリスクを抑える役割を果たす可能性があります。
反対に、単独では安定しているように見える資産でも、他の保有資産と同じ値動きをするのであれば、十分な分散効果を得られないことがあります。
投資では、
「この商品は安全か」
だけではなく、
「この商品を現在の資産に加えると、資産全体がどう変わるのか」
という視点が重要なのです。
結論
相関係数とは、2つの資産の値動きがどの程度似ているのかを示す数値です。
プラス1に近ければ同じ方向へ動く傾向が強く、マイナス1に近ければ反対方向へ動く傾向が強くなります。
分散投資では、相関の低い資産を組み合わせることで、ポートフォリオ全体のリスクを抑える効果が期待できます。
オルタナティブ投資が利用される理由の1つもここにあります。
ただし、相関は経済環境によって変化します。
さらに、価格が頻繁につかないオルタナティブ資産では、実態以上に相関が低く見える場合があります。
大切なのは、保有商品の数を増やすことではありません。
異なる値動きをする資産を組み合わせ、資産全体としてどのようなリスクを持っているのかを考えることです。
分散投資とは「たくさん持つこと」ではなく、「違う動きをするものを組み合わせること」なのです。
参考
日本経済新聞 2026年9月26日朝刊 何のためのオルタナ投資か