2025年の出生動向基本調査では、18歳から34歳の未婚者のうち、一生結婚するつもりはないと答えた割合が男性24.0パーセント、女性21.5パーセントとなりました。
男女とも初めて2割を超えたことから、一生結婚しない人が2割を超えたと受け止めた人もいるかもしれません。
しかし、ここには注意が必要です。
今回の数字は、現在の若者に将来の結婚意思を尋ねた結果です。実際に生涯結婚しなかった人の割合を示しているわけではありません。
そこで知っておきたいのが、生涯未婚率と呼ばれてきた指標です。
生涯未婚率とは何か
生涯未婚率とは、一般に50歳時点で一度も結婚したことがない人の割合を示す指標として使われてきた言葉です。
現在は50歳時未婚割合などと表現されることがあります。
なぜ50歳なのでしょうか。
本当に一生結婚しなかったかどうかは、その人の人生が終わるまで分かりません。
そこで統計上は、45歳から49歳と50歳から54歳の未婚率を使って50歳時点の未婚割合を算出し、生涯を通じた未婚傾向を見る一つの目安としてきました。
もちろん50歳を過ぎてから結婚する人もいます。
そのため、生涯未婚率という言葉を文字通り一生結婚しない人の割合と考えるのは正確ではありません。
2025年調査の2割超とは意味が違う
今回の出生動向基本調査で示された男性24.0パーセント、女性21.5パーセントという数字は、生涯未婚率ではありません。
18歳から34歳の未婚者に対して、将来結婚する意思があるかどうかを尋ねた数字です。
一方、50歳時未婚割合は実際の婚姻歴を基にしています。
つまり、一方は意識を示す数字であり、もう一方は実際の行動の結果を示す数字です。
ここを区別する必要があります。
一生結婚するつもりはないと20歳で回答した人が、30歳になって結婚する可能性もあります。
逆に、いずれ結婚するつもりだと回答していても、結果として結婚しない人もいます。
結婚意思は変わることがある
結婚についての考え方は、一生変わらないとは限りません。
就職、転職、所得、住居、交際相手との出会いなど、生活環境によって変化する可能性があります。
2025年の調査でも、この点を示す興味深い結果が出ています。
現在結婚を望んでいない人でも、その全員がどのような状況になっても結婚しないと考えているわけではありません。
相手が現れたり、収入や貯蓄が増えたりすれば、結婚を望む可能性がある人が一定数います。
結婚希望に転じる可能性のある人のうち、収入や貯蓄の増加を要因として挙げた割合は男性56.1パーセント、女性44.6パーセントでした。
現在の結婚意思は、現在置かれている生活環境の影響も受けていると考えられます。
結婚したい人が必ず結婚できるわけでもない
反対方向の問題もあります。
2025年の調査では、いずれ結婚するつもりと答えた未婚者は男性75.1パーセント、女性77.8パーセントでした。
だからといって、この人たち全員が将来結婚するとは限りません。
結婚したいと思っていても、相手との出会いがないことがあります。
収入や雇用への不安から結婚を先送りすることもあります。
住宅費や新生活の費用が負担になる場合もあります。
結婚意思と実際の結婚には差が生じるのです。
未婚化には二つの問題がある
ここから考えると、未婚化には大きく二つの側面があることが分かります。
一つは、結婚したいのに結婚できない人がいることです。
もう一つは、そもそも結婚したいと思わない人が増えていることです。
少子化対策を考える場合、この二つを区別する必要があります。
前者であれば、所得、雇用、住宅、出会いなど結婚を妨げている要因を減らす政策が考えられます。
後者の場合には、なぜ結婚を望まなくなったのかを見る必要があります。
単純な価値観の変化なのか、それとも現在の経済環境や働き方を考えた結果として結婚を選択しにくくなっているのかによって、政策の意味は大きく変わります。
結婚の利点を感じる人も減っている
2025年の出生動向基本調査では、結婚に利点があると答えた割合も過去最低となりました。
男性56.3パーセント、女性63.4パーセントです。
これは結婚に対する考え方そのものが変化している可能性を示しています。
かつては、一定の年齢になれば結婚し家庭を持つことが一般的な人生設計として考えられていました。
現在は一人で生活することも珍しくありません。
働き方や家族観も多様化しています。
結婚することが当然という社会から、結婚するかどうかを個人が選択する社会へ変化していると考えることもできます。
未婚率を見るときは年齢も重要
未婚率を見る場合には、何歳の人を対象にしているかも重要です。
20代の未婚率が高くなったとしても、単に結婚する年齢が遅くなっただけという可能性があります。
これは晩婚化です。
しかし、その人たちが30代、40代になっても結婚しなければ、未婚化が進んだことになります。
晩婚化と未婚化は似ていますが、意味は違います。
結婚時期が遅れているのか。
最終的に結婚しない人が増えているのか。
少子化との関係を考える場合には、この違いを見る必要があります。
未婚化は出生数にも影響する
日本では結婚と出生の関係が強いため、未婚化は出生数にも大きな影響を与えます。
結婚する人が減れば、結婚後の夫婦が同じ人数の子どもを持ったとしても、社会全体で生まれる子どもの数は減ります。
さらに現在は、夫婦が予定する子どもの数も平均1.95人まで低下しています。
つまり、日本の少子化では結婚する人が減る未婚化と、結婚した夫婦が持つ子どもの人数が減る少子化が同時に進んでいることになります。
この二つを分けて考えることが重要です。
結論
生涯未婚率とは、一般に50歳時点で一度も結婚したことがない人の割合を示す指標として使われてきた言葉です。
一方、2025年の出生動向基本調査で男性24.0パーセント、女性21.5パーセントが一生結婚するつもりはないと回答した数字は、若い未婚者の現在の結婚意思を示しています。
両者は同じではありません。
結婚についての意思は、その後の出会いや所得、仕事、住居などによって変わる可能性があります。
反対に、結婚したいと思っていても実際には結婚できない場合があります。
少子化を考えるときに重要なのは、一生結婚しない人が何人になるのかという数字だけではありません。
なぜ結婚を希望しない人が増えているのか。そして、結婚を希望する人がなぜその希望を実現できないのか。
未婚化という一つの数字の裏側にある二つの問題を分けて考えることが、これからの少子化対策には必要なのだと思います。
参考
日本経済新聞 2026年9月12日 朝刊 一生結婚しない2割超
日本経済新聞 2026年9月12日 朝刊 生活不安で結婚ためらう 家庭築く準備、支援薄く