特別徴収税額通知とは何か 従業員の住民税額が会社へ通知される仕組み編

税理士
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会社員の給与明細を見ると、毎月の給与から住民税が差し引かれています。

ところが、給与担当者が従業員一人一人について住民税額を計算しているわけではありません。

会社は毎年、給与支払報告書を市区町村へ提出します。市区町村はその情報や確定申告などの情報を基に住民税額を計算し、給与から特別徴収する税額を会社へ知らせます。

このとき使われるのが「特別徴収税額通知」です。

特別徴収税額通知は、会社が6月以降の給与からいくら住民税を差し引けばよいのかを確認するための重要な情報です。

近年はこの通知の電子化も進んでおり、eLTAXを利用して電子データとして受け取ることができます。

令和8年9月24日のeLTAX更改では、個人住民税の特別徴収に関する機能がPCdeskのWEB版へ集約されるため、給与支払報告書の提出から税額通知の受取り、納税までの電子化がさらに進むことになります。

特別徴収税額通知とは何か

特別徴収税額通知とは、市区町村が個人住民税の特別徴収税額を会社などへ知らせるための通知です。

会社は個人住民税について特別徴収義務者となり、従業員の給与から住民税を差し引いて市区町村へ納入します。

しかし、会社が従業員の住民税額を独自に決めるわけではありません。

市区町村が前年の所得などを基に税額を計算します。

そして、その結果を会社へ通知します。

会社は通知された税額に基づいて給与から住民税を差し引くことになります。

税額通知が届くまでの流れ

特別徴収税額通知を理解するには、前年の給与から住民税の徴収が始まるまでの流れを見ると分かりやすくなります。

まず会社は、従業員へ給与を支払います。

年末には年末調整などを行い、翌年1月末までに原則として給与支払報告書を従業員の住所地の市区町村へ提出します。

市区町村は給与支払報告書や確定申告などの情報を基に、前年の所得や所得控除などを確認します。

そのうえで翌年度の個人住民税額を計算します。

給与から特別徴収する従業員については、その結果が会社へ通知されます。

会社は通知された税額を給与システムへ反映し、原則として6月から翌年5月まで給与から住民税を徴収します。

つまり特別徴収税額通知は、自治体による税額計算と企業の給与計算をつなぐ役割を果たしています。

会社用と従業員用の通知がある

特別徴収税額通知には、会社などの特別徴収義務者向けの通知と、従業員である納税義務者向けの通知があります。

会社向けの通知では、従業員ごとに毎月いくら住民税を徴収するのかを確認します。

会社はその情報を給与計算へ反映します。

一方、従業員向けの通知では、本人が自分の住民税額やその計算内容などを確認することができます。

従業員からすると、給与明細に記載されている住民税額だけを見ても、その金額がどのように決まったのか分かりにくい場合があります。

特別徴収税額通知は、自分の前年所得などを基に計算された住民税の内容を確認する重要な資料となります。

なぜ6月に住民税額が変わるのか

会社員の給与明細を見ていると、6月から住民税額が変わることがあります。

これは、個人住民税が原則として前年の所得を基に計算されるためです。

前年の給与が増えれば、翌年度の住民税が増えることがあります。

反対に前年の所得が減れば、住民税が減ることもあります。

扶養親族や各種所得控除などが変わった場合にも税額へ影響する可能性があります。

こうして計算された新しい税額が会社へ通知され、原則として6月給与から反映されます。

したがって、給与担当者にとって毎年5月から6月にかけては、住民税の年度切替えを行う重要な時期になります。

会社は通知された税額を給与計算へ反映する

会社が特別徴収税額通知を受け取ったら、従業員ごとの税額を給与計算へ反映します。

例えば、ある従業員について6月分が1万2000円、7月以降が毎月1万円と通知されていれば、原則としてその金額を給与から差し引きます。

所得税の源泉徴収とは、この点が大きく異なります。

所得税では毎月の給与や扶養親族などを基に源泉徴収税額表を使って税額を求めるのが基本です。

一方、個人住民税の特別徴収では、市区町村から通知された税額を給与へ反映します。

給与担当者が住民税額そのものを毎月計算するのではありません。

だからこそ、市区町村から届く税額通知を正確に給与システムへ反映することが重要になります。

電子データで税額通知を受け取ることができる

特別徴収税額通知については電子化が進んでいます。

eLTAXを利用することにより、一定の方法で特別徴収税額通知を電子データとして受け取ることができます。

これは従業員数の多い企業ほど大きな意味を持ちます。

例えば数千人の従業員を抱える企業で、一人一人の住民税額を紙の通知から確認して給与システムへ手入力すれば、大きな事務負担になります。

入力ミスが発生する可能性もあります。

電子データを給与システムなどへ取り込むことができれば、手入力を減らし、給与事務の効率化につなげることができます。

税務手続きの電子化は、単に紙の通知をPDFなどへ置き換えることではありません。

行政側のデータを企業の給与システムへつなげられることに大きな意味があります。

税額が途中で変わることもある

一度通知された住民税額が、必ず翌年5月まで変わらないとは限りません。

例えば、確定申告の内容が修正された場合などには、住民税額が変更されることがあります。

その場合、市区町村から変更後の税額が通知されます。

会社は変更通知を確認し、その後の給与計算へ反映する必要があります。

したがって、毎年5月ごろに届く当初の通知だけを管理すればよいわけではありません。

年度途中の変更通知についても、確実に給与担当者へ届く仕組みを作っておくことが重要です。

電子化が進むほど、通知を誰が受信し、誰が内容を確認し、誰が給与システムへ反映するのかという社内ルールも重要になります。

退職や転勤があれば別の手続きが必要になる

特別徴収税額通知を受け取った後に、従業員が退職することもあります。

その場合、会社は通知された住民税をそのまま翌年5月まで給与から徴収することができません。

退職によって給与の支払いがなくなるからです。

そこで給与所得者異動届出書などを提出し、残っている住民税について一括徴収や普通徴収への切替えなどの処理を行います。

転職先で特別徴収を継続する場合には、そのための手続きが必要になることもあります。

このように特別徴収税額通知は、給与支払報告書、毎月の給与計算、退職時の異動届出まで、一連の住民税実務の中心に位置する情報です。

eLTAX更改でWEB上の手続きがつながる

令和8年9月24日のeLTAX更改では、個人住民税の特別徴収に関する機能がPCdeskのWEB版へ集約されます。

これにより、

利用届出

給与支払報告書の提出

特別徴収税額通知の電子データの受取り

共通納税

という一連の手続きをWEBブラウザから利用できるようになります。

ここで重要なのは、それぞれが独立した手続きではないことです。

会社が給与情報を提出し、その情報を基に自治体が税額を計算し、その結果を会社が電子データで受け取り、給与から徴収した住民税を電子的に納付する。

つまり、企業から自治体へデータを送り、自治体から企業へ税額データが戻り、最後に企業から自治体へ納税するという循環が形成されます。

今回のeLTAX更改は、この一連の流れをWEB上でつなげていく取り組みと見ることができます。

給与事務では入力作業からデータ管理へ

特別徴収税額通知の電子化が進むと、給与担当者の仕事にも変化が生じます。

これまでは紙の通知書を確認し、従業員ごとの税額を給与システムへ入力する作業が中心でした。

これからは電子データを受け取り、給与システムへ正しく取り込み、その結果を確認する業務へ変わっていく可能性があります。

作業量が減る一方で、データ管理やアクセス権限、情報セキュリティの重要性は高まります。

個人住民税の情報は、従業員の所得などに関係する重要な個人情報です。

誰でも税額通知へアクセスできる状態にするのではなく、給与担当者など必要な人だけが利用できる管理体制が求められます。

デジタル化によって事務がなくなるのではなく、人が担う仕事が「入力」から「確認と管理」へ変わっていくと考えた方がよいでしょう。

結論

特別徴収税額通知とは、市区町村が計算した従業員の個人住民税額を、特別徴収義務者である会社などへ知らせる重要な通知です。

会社はこの通知を基に、原則として6月から翌年5月まで従業員の給与から住民税を差し引き、市区町村へ納入します。

特別徴収税額通知には会社向けと従業員向けがあり、会社向けの情報は給与計算へ直接関係します。

近年は電子化が進み、eLTAXを利用して税額通知を電子データとして受け取ることができるようになっています。

令和8年9月24日のeLTAX更改では、給与支払報告書の提出から特別徴収税額通知の電子データの受取り、共通納税までの特別徴収に関する手続きがPCdeskのWEB版へ集約されます。

企業の住民税事務は、紙の通知を見ながら数字を入力する仕事から、自治体と企業のシステム間で税務データを受け渡し、それを正しく管理する仕事へ変わりつつあります。

特別徴収税額通知の電子化は、その変化を象徴する仕組みの一つといえるでしょう。

参考

税のしるべ 2026年8月10日号 eLTAXを9月24日に更改、地方税共同機構が変更点と注意事項を公表

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